陸の孤島「雄冬」


雄冬岬展望台

 北海道に陸の孤島が?もちろん今では解消されていますが、80年代前半まで陸の孤島として、他地域から孤立していた地域があります。島々ではありません。住民がいない知床岬ではありません。それは雄冬岬です。

雄冬岬はなぜ陸の孤島だったか

 雄冬岬というのは増毛町(石狩市浜益区~増毛町間)の日本海岸にあります。ここは暑寒別の山々が海に沈みこむ断崖絶壁という地理的環境ゆえに、海岸にある増毛町雄冬地区は孤立していました。そのため、雄冬岬は北海道三大秘岬のひとつとされてきました。

 では、どうやって外部の地域と連絡していたのかというと、船という交通手段でした。増毛方面と結ぶ道はあったのですが、細い上に夏季限定で、冬季はもっぱら船でした。雄冬海運株式会社が雄冬丸を1日1往復、雄冬航路(増毛~雄冬間)を2時間少しかけて運航していました。

 ※ちなみに浜益もそれ以前に陸の孤島で、浜益海運株式会社が船便を運航していましたが、道路の通年開通で廃止しました。

雄冬地区に悲願の道路開通

 こうした要因から、インフラ整備は道内でも最も遅い時期となりました。まず1978年に電話回線敷設を行い、北海道開発局は20年以上かけて道路を開通させました。国道231号線の浜益~雄冬間の道路が開通したのは、1981年11月10日のことでした。

 しかし、開通後間もなく同年12月19日にトンネル崩落事故が発生してしまいました。地元住民の歓喜もつかの間、国道は不通になりました。復旧作業は1984年5月15日に完了しました。

 その後、今度は1992年10月22日に増毛~雄冬間も通年開通し、国道231号線は全面開通しました。こうした難工事による莫大な工事費ゆえに、この区間は「ダイヤモンド道路」といわれるようになりました。一方、増毛~雄冬間の雄冬航路は1992年4月30日をもって廃止されました。


雄冬の道路開通記念モニュメント

 ※ちなみに、莫大な費用がかかった難工事と言えば、国道336号線のえりも町~広尾町間の太平洋岸を結ぶ「黄金道路」があります。ここも日高山脈が海に落ち込むところであり、断崖絶壁です。こちらはトンネルではなく、覆道がほとんどです。

陸の孤島ニニウって?

 占冠村西部にあるニニウ。ここは内陸にありながら陸の孤島と呼ばれてきました。「日本のチベット」とも呼ばれてきました。この盆地には村がありましたが、村人がすべてこの地を去った後も、村で「ニニウ自然の国」計画を進め保全してきたので、陸の孤島です。

 ニニウへは道道610号線が通っていますが、一部舗装区間を除いて砂利道です。近年は技術も向上しており、1981年のJR石勝線開通、道東自動車道もここを通り開通します。