航路撤退から10年ぶり―2018年春に室蘭港の定期フェリー復活へ

【室蘭市】
2015年3月10日、東京都に本社を置く川崎近海汽船株式会社が、2018年春頃に、
岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路を開設する方針を発表した。
この発表に歓喜の声を上げた室蘭市民や流通関係者は多い。
室蘭港のフェリー航路は2008年11月、当時東日本フェリーが撤退した室蘭―青森航路(青蘭航路)以来、約10年ぶりの復活となる。

フェリー航路とともに栄えてきた港町

室蘭港のフェリー航路は、1967年の青森~室蘭航路にはじまり、最大で6航路まで開設されていたことがある。
しかし2008年11月。東日本フェリーのフェリー事業撤退に伴い、それまで航行していたすべてのフェリー航路が廃止となった。

航路廃止前の室蘭港は、フェリーに乗降りする貨物トラックや、道内外から北海道へ訪れる旅行者の玄関口として賑わっていた。
写真は現在のフェリーターミナル(室蘭市入江地区)を撮影したもの。かつてこの駐車場には多くの貨物を積んだトラックシャーシで溢れていた。
また、街の商店街には経済効果をもたらし、港湾事業の雇用を生み出していた。

フェリーが出航する際に鳴らす汽笛が、街全体に響き渡るたびに「いってらっしゃい」と笑顔で見送っていた市民も多いはず。わたしもそのひとり。
室蘭市といえば新日鉄住金や日本製鋼所などの工場があるので、「鉄の街」としてのイメージが強いが、フェリー航路とともに栄えてきた、活気溢れる港町でもあるのだ。

▼車両搬入路や看板は当時のまま残されている

航路廃止に伴い、それまで賑わっていた街はすっかり暗い影を落としてしまう。
当時物流関係に携わっていたわたしの回想だと、それまで従事してきた港湾関係者は雇用先を失い、賑わっていた商店街からは活気が消え、
物流関係者はフェリーの乗降りを苫小牧港へとシフトしなければならなくなり、不便さを強いられることになる。

その後の利用

現在、この広い敷地を利用してさまざまなイベントが行われている。
記憶に新しいのが、わたしが取材した「室蘭イベントカーフェスティバル」。同イベントも、フェリーターミナルの敷地を利用して行われていた。

この写真は、かつて直江津―岩内・室蘭、大洗―室蘭航路に就航していた「ばるな」が、「さんふらわあ さっぽろ(2代目)」と船名を変え、久しぶりに室蘭港へ入港したときの写真。
航路休止後は、商船三井フェリーが用船。現在は船体のカラーリングをこのように変え、大洗―苫小牧航路に就航している。
また、これまで海上自衛隊の掃海艇や大型練習帆船・日本丸など、さまざまな船が接岸していたこともある。

▼自衛隊掃海艇

▼ロシア多目的船ヘイムダル

現在はロシア・サハリンの多目的船「ヘイムダル」が5月31日まで室蘭港にて越冬をしている。
この船はサハリン沖の石油ガス開発事業「サハリン2プロジェクト」で使われている船で、サハリン沖の流氷から逃れる目的でこの場所に停泊している。

フェリー航路誘致へ向けての動き

室蘭港へのフェリー誘致へ向けて、同市でも2008年11月に「室蘭港フェリー航路誘致促進期成会」が設立する。
設立の目的は室蘭港へのフェリー航路の誘致を図るためで、地元港湾関連会社及び、行政機関が中心となり活動している。
また、2012年には「室蘭港貨物等輸送研究会」が発足。北海道発着の貨物状況を把握し、室蘭港の取扱い貨物の多様化に向けて調査、研究をしている。
これらの事業効果として、地域経済の振興及び観光分野における地域活性化、輸送手段の多様化とコストの縮減が挙げられている。

宮古港─室蘭港航路に期待の声


川崎近海汽船の発表によると、宮古~室蘭(325km)の開設時期は2018年春頃を予定。計画では1日1往復で通年運航。ダイヤ、使用船舶はまだ未定のようだ。

同社が当航路を選定した理由として、三陸沿岸道路などの整備が急ピッチで進められており、宮古港から岩手県内各地や、仙台や首都圏などへのアクセスが大幅に向上すること。
宮古市や室蘭市がフェリー誘致に積極的だということ。運送業界から北海道と東北間の長時間航路を望む声があることが挙げられている。

今回、川崎近海汽船株式会社が発表した方針を、室蘭市民や物流関係者は歓迎している。
「フェリー航路が廃止されてから約10年。どれだけこの機会を待ち望んでいたことか」と、物流関係者(50)は嬉しそうに語る。
同市内の主婦(35)は「東北と北海道を結ぶ航路ができることは、とても嬉しい。フェリー航路が復活したら、ぜひ利用したい」と笑顔をみせた。

わたしも室蘭市民として今回の発表は嬉しいニュースだ。失われた10年。フェリー航路のあかりが再び灯されることを、心から歓迎したい。