知床大自然の秘密に迫る

知床の魅力、それはなんといっても大自然。最後の秘境といわれるのが納得できるほど、感動的な風景が広がります。

豊富な自然が満載の知床!

 豊かな自然形態・生態系が魅力です。人を寄せ付けない地形・環境によって、大自然の秘境と呼ばれてきましたし、自然が守られてきました。かつて、半島一周の道路建設計画が持ち上がったことがありましたが、立ち消えました。自然を守ろうという動きがあったことは確かです。道路ができれば、海と陸の生態系を結ぶところが遮断されてしまうため、世界遺産登録はあり得なかったでしょう。

 生物たちといえば、ヒグマ(世界で最も高密度の生息)、エゾシカキタキツネ、天然記念物であるオオワシ・オジロワシ・エゾシマフクロウ・クマゲラ・ヒシクイ・マガンといった鳥類とカラフトルリシジミ(昆虫)、エゾオコジョやラッコといった希少種、トドやシャチやゴマフアザラシ・ゼニガタアザラシなどの海洋生物、サケやマスの遡上、流氷や、スケソウダラなど魚たちなどなど、北海道を象徴する動物たちの「まとめ」であり、本当にここでは動植物が生き生きしています。

 知床には、陸上哺乳類35種類(ヒグマ、エゾシカ、エゾモモンガ、エゾクロテンなど)、海洋性哺乳類28種類(クジラ、イルカ、アザラシ、トド、シャチなど)、鳥類264種類(オオワシ・オジロワシ・シマフクロウなど)、淡水魚42種類(オショロコマ、ヤチウグイ、エゾハナカジカなど)、海水魚223種類(オニカジカ、アツモリウオ、オホーツクホンヤドカリ、エゾクサウオなど)、爬虫類7種類、両生類3種類、昆虫等2500種類(ラウスオサムシ、エトロフハナカミキリ、キョクトウトラカミキリ、カラフトルリシジミなど)が生息しています。

なぜ知床は生物の宝庫なのか?

 なぜ知床は生物の宝庫なのでしょうか。その答えは流氷が動物たちを養っているからです。流氷の底では春に太陽光が差し込んで植物プランクトンが発生しますが、これが知床や北方四島周辺の食物連鎖の始まりとなります。

 動物性プランクトンが植物性プランクトンを食べ、そのように海が豊かだから、海鳥が餌を求めて渡りをしてきたり、スケソウダラなどが回遊してきたり、それを狙うクジラ・アザラシ・トド等がやってきて、さらにそれを狙って食物連鎖の頂点に当たるシャチも生活します。

 では海から陸はどうつながるのでしょう。河川が両者の生態系をつなぐ役割を担っています。その代表者はサケ。春にサクラマス、続いて6月にアメマス、8~10月にカラフトマス、それ以降翌年1月まではシロザケが河川を遡上します。これらサケは海から河川に遡上し、死体となってヒグマに食べられます。糞便となり土に戻り、海のミネラルは植物等の育成に寄与します。

 さらに、冬が近くなるとクジラの死体が漂着します。これらもヒグマ、キタキツネが食べて陸に還元します。一方、陸から海へも、河川が窒素、リンなどの栄養を海に運んで、植物プランクトンの栄養となっているため、植物プランクトンの大量発生を促進させます。

 北半球で最も南まで流氷が押し寄せるという特異性、その流氷により海と陸とが一体になる生態系、地球上には類を見ない自然が、世界自然遺産登録の一要因です。こうしたことが人が入り込まないところで行われているからこそ、最後の秘境といわれるわけです。

知床半島は山脈そのものだ!

知床峠から見た知床連山最高峰羅臼岳

知床半島は中央部を高い知床山系の山々が連なっており、最高峰は、道東でもっとも高い山である羅臼岳の標高1661メートルになります。この山は知床横断道路の知床峠から見ることが出来ます。他にも知床岳、硫黄山、サシルイ岳、知西別岳(ちにしべつだけ)、遠音別岳(おんねべつだけ)、海別岳(うなべつだけ)など15ほどの山々があります。これらを知床連山/知床連峰といいます。知床連山は新生代第四紀にできた火山であり、地層の上に溶岩が層になって重なっています。特に羅臼岳の山頂には、溶岩が固まってできたドームがあり、ウトロ側の山腹には溶岩の跡で盛り上がっているところがあります。

ウトロ側は断崖絶壁!

 ウトロ側つまりオホーツク海側の海岸線は断崖、つまり切り立った崖そのものです。高さは100mくらいになるところもあります。ウトロ側はとにかく断崖絶壁で、滝も多いですし、奇岩も多いわけです。これは、昔に噴火した羅臼岳からオホーツク海に流れ出した溶岩が、流氷によって長年にわたって削られたためです。それゆえに、半島の奥地まで続く道路は充実していませんし、沿線に人が居住するのが難しくなっています。人を寄せ付けない地形ということです。

羅臼側は浜辺!

 一方の羅臼町側は浜辺もあります。ウトロ側と違って、流氷は沖合いにとどまっていることも多く、流氷の押す力が弱いためです。羅臼側の海岸線には、羅臼昆布の番屋を中心に知床半島の比較的奥まで人々が居住しています。でも、道路は途中で切れている状態です。その先からはやはりウトロ側と同じく流氷の影響が大きく、断崖のところも見られます。知床の奥深くはまさに「地の果て」です。そんな厳しい自然地形、まるで隔離されたような大自然の秘境「知床」なわけです。

半島の両側では気候が違う!

 山地をはさんで両側はまったく気候が違ってきます。斜里町ウトロ側は、夏の間は快晴が多いのですが、冬になると、流氷が海を遮断する関係で、気温が羅臼町側よりも下がります。一方の羅臼町側は、夏場は雨や霧が多くなります。冬は雪が多く気温が斜里町より高めです。対照的ですね。両側は快晴というのは珍しいです。

羅臼側も漁業の町!自称「魚の城下町」!

 羅臼町は「魚の城下町」と呼んでいます。羅臼町は海産物が良質であることでも知られていますね。「羅臼昆布」も高品質で有名です。良質である理由のひとつが「海洋深層水」。羅臼町の道の駅に行けば「らうす海洋深層水」「知床深海の水」といった商品が売られているし、「海洋深層水アイス」もあって、羅臼=海洋深層水というイメージも強くなってきました。

 深層水というのは、海の底深く、太陽光が届かないところで、上層の海水と混ざり合うことなくミネラル豊富&無菌というメリットがある水です。羅臼沖の根室海峡は、その深層水が浮上する海域(湧昇域)なんだそうです。これは漁場としても最適な環境ということができるようです。そんな、羅臼の海洋深層水を使った商品はたくさんあるんです、実は。

垂直的分布と言われる知床の植生!


 垂直的分布って?半島でありながら海岸線から山頂まで1600メートルという標高差なのでありますが、それゆえに、数多くの、多様な植物を観察することができるという意味です。日本でも北に位置することで、本州では2500メートルの標高に行かないと見れないような植物を、知床なら知床峠をひと越えすれば見ることができます。峠の頂上付近はハイマツ林です。また、気候が羅臼側とウトロ側では違うということは前述のとおりですが、そのために山脈の両側では植生も若干違いが見られます(上図)。

知床自然観察ガイド
知床自然観察ガイド


知床財団が発行する、自然の魅力満載のガイドブック。山・森・草原・川・海の5章及び人と自然のかかわりの部分からなっていて、知床の自然の仕組みを解説します。巻末には知床データブックもあり、これ一冊で、知床大自然を完全マスターできますよっ!
山の章 地の果ての山々
森の章 ヒグマの棲む森
草原の章 エゾシカの戯れる草原
川の章 サケの遡る川
海の章 流氷の訪れる海
人と自然の章 いにしえのころ
フィールドガイド
知床データバンク

 

知床
知床


コア・アソシエイツの「知床」といういたってシンプルな題名の本。早い話が2005ガイドブック。自然の尊さを知るたびに出ようと副題がつけられています。スポットマップつきで知床観光にはお役立ちの一冊になるはず。斜里町の知床八景と、羅臼町の知床羅臼八景という合計16の景勝地も網羅。北の国から2002遺言のロケ地となった羅臼町の探索しようというユニークな章もあって楽しめます。ほかにも飲食や宿泊・土産などを収録。必携ですね。