朱色のボディが目印!「鉄道員(ぽっぽや)」ロケセットに囲まれた幾寅駅

【南富良野町】一見すると普通の田舎の駅であるが、ご存知、映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地となったことで有名な幾寅駅である。映画中では「幌舞駅」の駅名で登場し、現在でも駅前にはロケに使用されたロケセットが保存され続けている。

幾寅駅は幌舞駅

幾寅駅は、上川管内南富良野町の市街地中心部に位置する、町の中心駅でもある。2003年4月以来無人駅で、ホームは1面1線である。駅は1902年12月6日に開業した歴史ある駅であるが、現在の本数は非常に少ない状況である。駅前も閑散としていて静かである。日中は観光客が見られることもあるが、いまやブームは去り基本的に訪れる人は少なめである。


同駅は自由にホームに出ることもできる。駅舎正面から入り、待合室を通過してまた外に出ると、階段を上ってホームに出られる。ホームから見下げる駅舎には、「ようこそ幌舞駅へ」という歓迎メッセージも掲げられているし、青い駅名の縦看板には「ほろまい」と。駅前通には「ぽっぽや通り」と書かれたのぼりも立てられている。

映画「鉄道員(ぽっぽや)」ロケ地に

この駅を、作家浅田次郎氏の短編小説「鉄道員(ぽっぽや)」の映画化のロケ地として使われることになった。同駅舎は撮影のため1998年11月から改修工事が行われ、周辺にロケセット(だるま屋、床屋、雑貨店)が建設された。ロケは1999年1月17日にスタートし、寒さの厳しい1月を中心に、同月30日まで撮影が行われた。

1999年6月公開の本映画中では、北海道の廃線寸前のローカル石炭輸送線「幌舞線」の終着駅・幌舞駅という設定であったが、実際の幾寅駅は途中駅であるため、映画撮影のために、腕木信号機が設置されたりした。これはもともと運行本数の少ない同線だったからできたこと。

映画撮影にあたり、町内のログホテルラーチがスタッフ・キャストの宿泊地になった。また、地元・南富良野では、情報プラザで婦人会等が毎日日替わりメニューを作り食事でもてなしていた。特に南富良野産農産物のいもで作った芋団子は大変好評だったという。駅前のロケセットのほか、同プラザのロビーには、撮影で使われた衣装や小道具を展示する展示コーナーを開設していたが、2003年に駅が無人化したため、駅舎内に移転、現在に至っている。また、各セットの建物も当時の場所から一部移動されている。

映画公開当時は、全国から出演者のファンが訪れて混雑していた。1999年度は179,000人が訪れたと、町が集計した資料は示している。そのため同町商工会は駅前にプレハブ売店を設置し、芋団子を販売するなど、観光客に対応していた(駅横には「ポッポ屋ソフトクリーム屋」のプレハブが置かれていた)。JR北海道も、撮影に使用したキハ40「ぽっぽや号」を映画公開に合わせて6月から11月まで、富良野~落合間を運行、延べ10,220人が利用した。


ちなみにこの映画は、ぽっぽやとして長年生きてきた駅長佐藤乙松がある少女と出会う、という不思議な感動物語。高倉健さん、(妻役)大竹しのぶさん、(娘役)広末涼子さんという豪華メンバーで撮影された。さらに、第23回日本アカデミー賞9部門で最優秀賞を受賞した(作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・助演男優賞・脚本賞・撮影賞・照明賞・録音賞)ほか、主演の高倉健さんはモントリオール世界映画祭で主演男優賞受賞。1999年はまさに映画鉄道員(ぽっぽや)一色の年であった。

なお、その後テレビドラマ「鉄道員(ぽっぽや)」のロケも2001年3月20日~26日の一週間で行われてる。

ロケセットに囲まれた幾寅駅

駅舎の一部は「鉄道員(ぽっぽや)ロケーション記念展示コーナー」となっている。駅舎前にはほかに、レトロな赤い円柱ポストがあり、田舎の雰囲気が漂っている。日中は映画サントラも流されているし、駅舎内に映像も流されていて、ぽっぽや雰囲気満点である。

駅舎内にはロケーション記念展示コーナーの部屋があり、撮影で使用された小道具などが展示されている。映画ポスター、出演者のサイン色紙、駅名関連、だるま食堂ののれん、実際に高倉健さんが身に着けていた衣装(帽子・ブーツともに映画のために作られた特注)、表彰状、ロケ写真、時刻表と運賃表(主要駅は実在の地名だが美寄・布舞・砂田・赤岸・湖月など架空の駅もあるのに注目)まで、「鉄道員(ぽっぽや)」のすべてが詰まっている。





駅舎の前には「ひらた理容店」がたっている。奥には「だるま食堂」「井口商店」が。駅舎の横でホームの手前には、ぽっぽやマークの付いた「便所」(使用不可)もある。駅名板は幌舞駅のものが設置されている。終着駅という設定だったから、幌舞駅の隣の駅は「きたほろまい」だけである(2005年にキハ40形が駅前に置かれた際にこの駅名板は車両前に移設された)。



映画中にも登場した朱色ボディのキハ40形764(原作はキハ12形23だが、実車はすでに全滅しているためキハ40をキハ12に似せて改造した幻の23番目の12形)気動車が、2005年2月のラストランを最後に廃車(同年6月)となり、JR北海道から譲り受けたその車体の一部、2~3分の1を切断されて、2005年10月以降、駅前に置かれるようになった。主な改造点は、窓をバス窓に、前面を平窓に、前照灯を中央上部1灯式に。映画公開時期には鉄道員(ぽっぽや)号としても、同線を運行したこともある車両であり、ヘッドマークも「鉄道員」である。

かつて人々を魅了した幾寅駅は、作品中の面影が今も残る観光スポットである。映画中では冬の雪景色のシーンが多いため、雰囲気を楽しむなら冬季に訪れると良いだろう。