日本最大のまちライブラリーが千歳に!みんなで育てて市民交流の拠点に

道内各地の特産品や地場産業の話題をお伝えする連載「北洋銀行この街紹介」。今回は、千歳市からお届けします。

「まちライブラリー」という図書館をご存知でしょうか。公立図書館とは異なり自由な枠組みで運営する図書館で、全国に699カ所(2019年6月21日現在)あります。一軒家、カフェ、美容室、病院、大学など、その規模は様々です。

中でも、面積・蔵書可能数ともに国内最大とされるのが、千歳市にある「まちライブラリー@千歳タウンプラザ」。現在では、学生・生徒を含む市民が集まり交流を深めるスペースとしても注目を集めています。市民の手で作り、育てていく図書館として、また千歳中心部の活性化にも一役買っている同施設の取り組みに迫りました。

日本最大の「まちライブラリー」が誕生した経緯

千歳の「まちライブラリー」は、千歳駅から徒歩約10分、かつて「ちとせデパート」が入っていた地上3階地下1階の建物にあります。

▼元デパートの建物に入る「まちライブラリー@千歳タウンプラザ」

デパートの撤退からしばらく経って、2016年12月23日、運営するセントラルリーシングシステム株式会社が千歳市街地のコミュニティ・交流施設としてリニューアル。老若男女問わず来てほしいとの思いで、2階に子ども向け屋内遊具施設「あそびのくに ピッピちとせ」、地下に屋内パークゴルフ場、そして1階に国内最大級の私立図書館「まちライブラリー」が同時に誕生しました。公立の千歳市立図書館は街の中心部からは離れて位置していることもあり、市民の交流が生まれやすい新たな形態である「まちライブラリー」の誘致を決めたといいます。

面積は約800平方メートル。蔵書は、大阪から持ってきた本やサポーターから集めた本、約6,000冊からスタートしました。その後も市民から本の寄贈を受け続け、現在では24,000冊を収蔵。最終的には、40,000冊まで収蔵可能です。

▼市民みんなで作り上げた本棚は愛情がこもっている

高さ2メートルを超える本棚には、実用書、参考書、小説、コミック、子供向けの本まで、多種多様な本が並びます。大きな窓を配し、ゆったりとした開放感のあるスペースなので、読書や勉強にはぴったりの環境です。

▼子ども向けの本があるスペース

カード実費500円(年会費無料・無制限)で会員になると、本を借りることができるようになります。Wi-Fiや電源のほか、併設する「まちライブラリーカフェ」では全品10%オフのサービスも利用できます。

2019年6月に「まちライブラリー」の運営に変わった「まちライブラリーカフェ」では、ピザやパスタといったフードメニュー、コーヒーやスムージーなどドリンクメニューを提供。カフェ内に本を持ち込んで読むこともできますし、逆にカフェで購入したフード・ドリンクを図書スペースに持ち込んでもOK。公設図書館では禁止されていることができる自由な雰囲気づくり、それが「まちライブラリー」の特徴です。

▼まちライブラリーカフェは本の持ち込みOK

▼まちライブラリーカフェ看板メニュー、直径20センチの本格マルゲリータ

館内を見回すと、中学生や高校生など若者が勉強する姿が目立ちます。生徒や学生の利用は当初想定していなかったそうですが、今ではオリジナルキャラクターちーたんにちなんだ「ちーたん神社」を設置し、主に学業成就の神社として親しまれています。また、会員登録すればフリーWi-Fiが利用できることから、ビジネスマンや海外の観光客もよく訪れています。

▼中学生や高校生も気軽に訪れる、開放感ある明るいスペース

▼若者に愛される「ちーたん神社」

熱心なサポーターにより活性化する「まちライブラリー」

「『まちライブラリー@千歳タウンプラザ』はコミュニティの場として使っていただいています」と話すのは、運営スタッフの古谷綾さん。本をきっかけに交流が生まれるのが「まちライブラリー」の特徴ですが、それ以上に一人ひとりが読書、勉強、おしゃべりやイベントの実施や参加など思い思い過ごすコミュニティスペースとして活用されることが多いようです。

千歳の「まちライブラリー」には運営スタッフが10名、会員数は約1,800人いますが、会員の中には、「まちライブラリー」を応援し、一緒に作っていきたいと願うサポーター会員がいます。サポーターは「まちライブラリー」がオープンする前の準備段階から関わり、この場所を今後どうしていくかについて話し合いがなされました。以来、月1度のサポーター会議で「まちライブラリー」の運営について話し合われています。

▼大きな黒板にサポーター会議の記録が残る

「まちライブラリー」では、こうした熱心なサポーターを中心に、趣味や特技を活かしたイベントが頻繁に行われています。複数の本を集めて背表紙だけで川柳を作る「背表紙川柳」という試みもなされました。「千歳を知ろう!」と題するイベントは、地元在住の年配の女性が主催し、ほぼ毎月定期的に開催されています。時には、市内の公園に出向いてフィールドワークも行うほど活発で、20人以上集まることもあるそうです。

▼背表紙川柳は盛り上がったイベントの一つ

『ゴールデンカムイ』が人気を集めていることから、2018年7月には読書会がスタート。4人でスタートし月1回実施してきた「金カム女子会」は、山菜採り、再現アイヌ料理、小樽ロケ地巡りなど活動の幅を広げてきました。今では千歳アイヌ伝承保存会の方も参加してくれるまでに成長しました。

▼「まちライブラリー」入口近くには『ゴールデンカムイ』特集コーナーも

サポーターから「千歳中心部は夜営業の店が多いから、いいお店を知りたいし、聞かれたら答えられるようにしたい」との声が寄せられると、街や人の顔が見える千歳のマップ「千歳の幸せ図鑑」づくりが始まりました。取材・デザインを含めすべてワークショップスタイルで制作しており、2018年6月に第1号を発行しました。このマップは千歳科学技術大学協力のもと、紹介した店内をVR撮影してデジタル化、2019年3月にリリースしました。このマップを手に街歩きをする人も増え、周辺の活性化に一役買っています。

▼「みんなでつくりますprojectちとせのおすすめMAP」で制作した「千歳の幸せ図鑑」

▼千歳の観光情報もみんなで作る

この他にも、読書会、講演会、トークイベントが日々開催されており、学び合いの場を通して、コミュニティが広がっています。時にはフリーマーケット、古本市、ちーたん祭りといった大きなイベントを開催し、賑わうこともあります。千歳の中心部に誕生した「まちライブラリー」は、老若男女が集まる交流の拠点として、千歳になくてはならない存在になりました。

とはいえ「まだ知らない市民や来たことのない市民が多い」と古谷さんは話します。「まちライブラリー@千歳タウンプラザ」では今後も周知活動を行い、カフェスペースやイベントを活用しながら、千歳市民の交流の場としての可能性を広げていきたい考えです。

まちライブラリー@千歳タウンプラザ
所在地:千歳市幸町4-30
電話:0123-25-3544
営業時間:10時~20時(千歳タウンプラザの営業に準ずる)※カフェは閉店30分前L.O.

千歳駅付近に移転

2021年7月7日、千歳市長は千歳タウンプラザ(解体予定)に入居し2021年3月末に閉鎖した「まちライブラリー」の移転先に、千歳駅東口のJRイン千歳のビル1階で2021年度中に再開する予定であることを発表しました。

北洋銀行千歳中央支店

所在地:千歳市千代田町3丁目11番地
電話:0123-23-3111