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函館市民は朝6時から温泉に浸かりに行く?函館に根付く朝温泉文化

函館市といえば様々な名所やグルメがあり、最近では北海道新幹線を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、その陰であまり知られていないのが市内に点在する温泉銭湯と地元の方の「朝温泉」の文化です。

今回は函館市内の2軒の温泉にお伺いして、朝温泉を体験してきました。

朝6時から営業、2つの浴室を持つ花園温泉

函館市民は朝6時から温泉に浸かりに行く?函館に根付く朝温泉文化

まずお伺いしたのは、産業道路沿いにあり湯の川温泉からもそれほど遠くない花園温泉です。創業者・笠井トキさんの長女で小学生の頃から番台に立ち、現在は花園温泉に併設の喫茶店「花車」を営む畑中くみさんにお話を伺いました。

函館市民は朝6時から温泉に浸かりに行く?函館に根付く朝温泉文化

花園温泉は1964年11月に開業。畑中さんの祖父が花園町の商店街の中にあった銭湯を買い取り「花園の湯」として営業を始め、その12年後に農地だった現在の場所に温泉を掘削・移転し現在に至ります。浴室は「新館」と「本館」の2箇所ありますが、新館の側が朝6時から営業を始めています。

▼写真手前が本館入口。奥に見えるのが新館入口
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以前は朝5時からの営業で、現在の新館部分は家族風呂でした。屋台村や居酒屋で明け方まで過ごした方、飲食店で働く方をはじめ早朝からお客さんが多かったそうですが、時代の流れに合わせて営業時間を1時間遅くしたり、維持管理に非常に手間と人手がかかる家族風呂を廃止するなど、営業形態を変化させてきたそうです。

▼営業開始前の新館・子供風呂、低温風呂と高温風呂
函館市民は朝6時から温泉に浸かりに行く?函館に根付く朝温泉文化 函館市民は朝6時から温泉に浸かりに行く?函館に根付く朝温泉文化

新館は浴室に入るとずらっと洗い場が並び、奥に湯船やサウナがあります。 「子供風呂」が42度・「低温風呂」が44度・「高温風呂」が46度。低温風呂と露天風呂は繋がっていて、湯船に浸かったままドアで行き来できるようになっています。

新館で使用している温泉は花園温泉で最も新しい、通称「パワーストーンの湯」。源泉温度59.4度、湧出量毎分360リットルと温度にも湯量にも恵まれ、かけ流しで温泉を使用。毎日営業終了後にお湯を抜いて清掃していて、いつでも新鮮なお湯を楽しむことができます。

▼湯量豊富で新鮮な温泉が注がれる
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▼午前11時から入れる本館の浴室
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午前11時から営業を始める本館の造りは新館とほぼ同じですが、新館よりも少し広めの印象。こちらは「花園温泉2号井」という別の源泉を使用しています。浴室ごとに別の源泉を使っていてどちらもかけ流しというのは温泉マニアも注目のポイントで、是非両方に入りたいと思うはずです。

なお、男湯は浴室ごとに入浴料がかかりますが、女湯は新館と本館が繋がっているため、午前11時以降は1回分の料金で両方に入浴することができます。

泉質は2本の源泉ともにナトリウム・カルシウム-塩化物温泉。保温効果が高い食塩泉が主な成分になりますが、分析書をよく読むと美肌効果が期待できる硫酸塩泉や炭酸水素塩泉の成分も多く含まれていて、成分豊かな温泉と言えるでしょう。

朝温泉でも安心して利用できる花園温泉のサービス

朝6時から営業となっていますが、実は毎朝5時45分には開店しています。

そのため常連さんは朝5時半頃から集まり始め、その頃までには玄関が開いていて、早く来ても玄関フードの中で待つことができます。「冬はお客さんを外で待たせるわけにはいかない」と玄関フードには椅子や暖房、大きなテレビまで用意されていました。まだ外が暗い中、開店前にそのスペースで地元のお客さん同士が談笑している光景が非常に印象的でした。

▼開店を待つ常連のお客さん
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その時間に開店できるよう、スタッフの方は朝5時前に出勤しています。湯船の温度の確認や水風呂の管理とともに、シャワーをしばらくの間 出しっ放しにしてお客さんが使う時にすぐお湯が出るようにしています。

冬季間の寒い脱衣場や浴室は入浴事故の原因になりかねませんが、開店前のこの作業のおかげで浴室内は湯気で暖かくなっていました。

▼開店準備をするスタッフ
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さらに花園温泉ならではのサービスとして浴室内に無料で氷が用意されています。水飲場もありますが、氷を頬張りつつ利用する方が多く、安全な朝風呂に欠かせない水分補給が十分にできる状況になっています。

全体的にお客さんに優しい管理運営がなされていて、早朝から地元の方が集まるのも納得の花園温泉でした。

▼すべての浴室に飲料水と氷が用意される
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道外の温泉マニアの間でも有名! 谷地頭温泉

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続いて訪ねたのは、数ある函館市内の温泉の中でも特に知名度が高い谷地頭温泉です。明治時代から温泉地として知られていたこの地区に谷地頭温泉が開業したのは1953年(昭和28年)2月のこと。市営の温泉として約60年の間営業していましたが、2013年4月に売却譲渡され現在に至っています。

現在運営している株式会社ケーケーエムは、函館市内に姉妹施設として「湯元 昭和温泉」「湯元 山の手温泉」の2軒の日帰り温泉と「ホテル河畔亭」という温泉ホテルを運営しています。その施設を束ねる金沢俊司社長にお話を伺いました。

函館市民は朝6時から温泉に浸かりに行く?函館に根付く朝温泉文化

谷地頭温泉で印象的なのは日帰り温泉としては道内でも最大級と言える湯殿の広さと、周囲をぐるっと取り囲むように並ぶ100近い洗い場でしょう。内湯には43-44度の高温風呂・41度の中温風呂・40度の低温気泡浴槽。五稜郭の形をしている露天風呂は42-43度ほどです。

市営時代に何度も入浴している筆者は以前の温度設定が入り慣れていない人には挑戦的な熱さだと感じていましたが、その頃よりも少し低めの温度管理がされていて、熱いお湯が苦手な方や子どもでも快適に入れるように変わっていました。

▼道内有数の広さの内湯
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使用している温泉は源泉温度65.1度・湧出量毎分330リットルと、こちらも温度・湯量ともに恵まれています。源泉は自噴(ポンプなどの動力を使わなくても自然に湧いてくる)していて、この事が市から運営を引き継いだ理由の1つでもあったとのことです。泉質はナトリウム-塩化物温泉。鉄分が含まれているため湯船の中では茶褐色に色付き、目でも楽しむことができます。

▼浸かっても見ても楽しめるお湯
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営業時間は市営時代と変わらず午前6時から。時間を変更する方向も模索していたそうですが、お客さんの約9割が地元の方で、その多くが早朝から入りたいと希望しているため午前6時からのままになりました。

朝6時から9時までの間に最初のお客さんのピークが訪れるというお話でしたが、実際に朝6時前から観察していると、一番風呂を目指して6時ちょうどに間に合うように次々と駐車場に車が入ってきます。

朝温泉に浸かってから1日を始めるという習慣が地元の方の間に根付いていることがよく分かりました。

「お湯を新鮮に保つのが、シンプルだけど一番長続きする」

そう金沢社長が仰る通り、施設の管理は以前にも増してしっかりとなされている印象です。毎日お湯を抜いて清掃し、朝に新しいお湯を入れて営業を始めています。営業開始の30分前にはお客さんを迎える準備がほぼ整っており、早朝から働くスタッフに感謝しながらお湯をいただきました。

地元の方と一緒に朝温泉を楽しみませんか?

「いい写真が撮れたかい?」

湯あがりに牛乳を飲みながらそう話しかけてくれた常連さんにお話をお聞きすると、自宅から10分ほど歩いて温泉に来て「ここで(常連さんに)会って話をするのが毎日の楽しみなんだ」と仰っていました。

今回伺った2軒の他にも、函館市内には早朝から営業を始める日帰り温泉・温泉銭湯が点在しています。少し早起きして、地元の方と朝温泉を楽しんでみるのはいかがでしょうか? そこで新しい発見があるかもしれません。

花園温泉
所在地:函館市花園町40-34
電話:0138-51-1310
営業時間:新館 6:00-21:00・本館11:00-23:00
料金:大人400円、中人140円、小人70円 (新館・本館で別料金)
定休日:毎週月曜日
谷地頭温泉
所在地:函館市谷地頭町20-7
電話:0138-22-8371
営業時間:6:00-22:00(最終受付21:00)
料金:大人420円、中人140円、小人70円
定休日:第2・第4火曜日

筆者について

髙野紀康

髙野紀康

1974年生まれ、江差町出身。日帰り温泉の湯守をしながら、年間100軒以上の温泉を巡る。温泉ソムリエマスター・温泉入浴指導員ほか6つの温泉資格を持つ。「北海道は1つの大きな温泉郷」をモットーに、全道を走り回っている。