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世界遺産級の希少性?! ジンギスカンの香ばしさ漂う「北大ジンパ」に密着

春から秋にかけて北海道大学構内を歩いていると、どこからともなくジンギスカンの香ばしい匂いが漂ってきます。ジンギスカンパーティー、通称「ジンパ」は、世界中を探しても北大にしかない伝統的なレクリエーションです。ジンギスカンの歴史を追うとともに、ジンパに密着しました。

ジンギスカンの歴史は謎に包まれている

▼昔はマトンが主流だった
世界遺産級の希少性?! ジンギスカンの香ばしさ漂う「北大ジンパ」に密着

ジンギスカンは、北海道のソウルフードと呼ばれ、北海道遺産にも登録されています。そのルーツは謎に満ち溢れ、さまざまな説が唱えられています。俗説では、「モンゴル帝国を率いたジンギスカンが、遠征の陣中で兵士のために作らせた」と言われていますが、モンゴルの羊料理はジンギスカンに似ていないことから、満州国(現在の中国東北部)にあった羊料理店の料理が大正末期から昭和初期に日本に入り、和風にアレンジされたのではないかと考えられています。

ジンギスカンの名付け親は、札幌農学校出身で満州国建国に関わっていた駒井徳三氏と言われていますが、記録などは残っていないため、確かなことはわかっていません。

▼綿羊を増やす目的でジンギスカンが普及したという説がある
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北海道で羊肉を食べるようになったのは、年老いた綿羊の再利用が目的だったと言われています。第一次世界大戦後、政府は軍需羊毛の自給自足を目指して、綿羊100万頭増殖計画を立てましたが、綿羊だけの利用では賛同する酪農家の数が伸びなかったため、食用利用も視野に入れたといいます。しかし年老いた羊肉(マトン)は臭みが強かったため、北海道庁種羊場長の山田喜平氏が綿羊の品質改良や指導を行ったと言います。

昭和20年代後半から30年代ごろから、一般家庭でジンギスカンが食べられるようになりました。1953(昭和28)年には、月寒成吉思汗クラブが発足。北大学長、札医大学長、道農務部長など多くの著名人が参加し、月寒の草原でジンギスカンを楽しんだと言います。

世界でも珍しい北大ジンパ

▼大学構内で飲食をする風習があるのは珍しい
世界遺産級の希少性?! ジンギスカンの香ばしさ漂う「北大ジンパ」に密着

大学構内でジンギスカンを食べる「ジンパ」は北大の伝統的レクリエーションですが、いつ頃から行われているのか、また誰が名付けたのか詳細は分かっていません。

公に大学の構内で飲食を行うケースは珍しく、道内の大学で、ジンパを行っているのは北大だけです。北海道大学150年史編集準備室では卒業生や大学関係者に情報提供を求めていますが、反応は少ないようです。

▼マナーの問題から一時ジンパが中止されたことも!
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ジンパは、学部やサークルなどによって、春から秋にかけて行われています。北大構内以外でジンギスカンを食べるときも「ジンパ」と呼ぶようです。マナーの問題から2013年に一時禁止されましたが、学生有志が大学側と交渉を重ね、「届け出る」「決められたエリアで行う」などの条件付きで、翌年に解禁されました。北大生協で食材の販売や道具の貸し出しが行われていますが、七輪やコンロなどを揃えている学部やサークルもあるそうです。

ジンパに密着

▼朝9時に準備がスタート
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今回は獣医学部のサークル日本獣医学生協会 (JAVS) 北海道支部のジンパにお邪魔しました。同サークルは、全国の獣医学部と交流を持つことを目的に設立され、この日は酪農大学と合同で、新入生歓迎ジンパが獣医学部正面で開催されました。

▼まずは飲み物を冷やす
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▼買い出しに走り回る
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▼野菜も用意
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▼なかなか火が付かず一苦労
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東海地方出身の男性1人と女性2人の3人で準備が進められます。朝から買い出しに行ったり、飲み物を冷やしたり、野菜を切ったりと、かいがいしく働いています。ジンギスカンは、道外でもメジャーな料理のようで、北海道に来る前に実食済みだそうです。「焼肉を食べに行ったら、内臓系の話で盛り上がるんですよ」と、獣医学部あるあるを教えてくれました。

▼天気が良くジンパ日和
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数時間にわたり準備が行われ、15時過ぎにジンパが開始されました。約100人の学生が参加し、出身地ごとにコンロを囲んで交流が図られます。獣医学部を有する大学は全国に17しかない上に、就職先も一定化しているため、日ごろから関係性を密にしているようです。

▼北大伝統のレクリェーション
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ジンパの由来は謎のままでしたが、北海道らしいロケーションを持つ北大構内で、全国から集まった学生が、郷土料理を囲みながら夢や希望を語る。きっとジンパは自然発生的に行われていたのでしょう。それを許す自由に校風により、今もなお北大の伝統として受け継がれているのだと感じました。

北大関係者でなくてもジンパができる

▼セイコーマート北海道大学店
世界遺産級の希少性?! ジンギスカンの香ばしさ漂う「北大ジンパ」に密着

大学関係者以外が北大の敷地内でジンパを行うことは禁止されていますが、セイコーマート北大店の2階のテラスは、一般の人でもジンパを行うことができます。北大生気分を味わってみてはいかがでしょうか。

参考文献
Monthy Hokkaido Magazine月刊 ISM 2018年8月号、北海道150年〈羊と鍋の成吉思汗物語〉
取材協力
日本獣医学生協会 (JAVS) 北海道支部
セイコーマート北海道大学店
所在地:札幌市北区北11条西7丁目 北海道大学内
電話:011-556-8609
テラスの利用が可能な時間:平日14時から17時まで
予約:2人から利用可能で、二週間から4日前までに同店に予約が必要
内容:ジンギスカン、野菜、おにぎり
料金:2人利用の場合、一人2,000円。3人以上から一人1,900円

筆者について

吉田匡和

吉田匡和

札幌在住の文筆家・写真家。日本のすべての年金制度(厚生年金・国民年金・国家公務共済・地方公務員共済・私学共済)に加入したことがあるという、自慢にもならない経歴を持っています。苦労しなくて済む程度のアウトドアが趣味で、夕日を見ながらビールを飲むのが大好きです。【Sクラス認定ライター】