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国産ビールと北海道開拓に深い関り!岩内町に野生ホップ発見の地のなぜ

石簾マサ
Written by 石簾マサ

「とりあえず」が枕詞になるほど、今や酒宴のはじまりには欠かせないビール。そんなビールですが、はじめて日本で作られたのは明治に入ってからでした。原料のひとつであるホップが後志(しりべし)管内の現・岩内町で発見されたのです。当時の資料があると聞きつけ、岩内町郷土館にお話を伺ってきました。

野生ホップ発見のいきさつ

▼「泡立(あわだち)」と命名されたホップアーチに巻きつき成長したホップ(岩内町郷土館前庭)(写真提供:岩内町郷土館)
国産ビールと北海道開拓に深い関り!岩内町に野生ホップ発見の地のなぜ

日本にまだビールがなかった明治初期にビールの原料のホップがなぜ見つかったのでしょうか? そもそもホップという植物を誰が知っていたのでしょうか?

明治に入り、北海道の開拓事業を進めるため、欧米の知識や技術を取り入れることになりました。そのため、1971(明治4)年にアメリカから技術者を雇い入れました。そのうちの一人が地質学者のトーマス・アンチセルです。アンチセルはただちに北海道を訪れ、道南から札幌までの調査を開始します。

茅沼炭鉱の地質調査のため現・岩内町を訪れたアンチセルは、堀株(ほりかっぷ)川流域で、野生のホップを見つけました。実はアンチセルは植物学者でもあったのです。

▼左から3番目がトーマス・アンチセル
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ここで簡単にホップについて説明しておきましょう。

ホップはアサ科の宿根性多年生植物で、雄株と雌株が別々になっています。ビールに使われるのは球花(きゅうか)と呼ばれる雌株の花で、受精すると苦味や香りが劣化するため、雄株を排除し受精させないようにします。春になり出てきた芽を、ホップ生産者が選芽します。収穫は8~9月ぐらいです。(サッポロビール公式ページより)

▼これがホップの球花
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そして、のちのサッポロビール誕生へ

さて、話を元に戻しましょう。

ホップを見つけたアンチセルは、1872(明治5)年に「北海道南部でホップを培養すればよく育つと思われる。この土地に野生するホップもビールの醸造に適していると思われる」というような内容を北海道開拓使への建言書に書いています。

▼北海道開拓使への建言書(写真提供:サッポロビール株式会社)
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これがきっかけとなり、開拓使はホップの試験栽培をはじめ、ビール事業に取り組むことになったのです。そして1876(明治9)年、日本人による最初のビール工場「開拓使麦酒醸造所」が開業。翌1877年に札幌冷製麦酒(サッポロビールの前身)が初出荷されたのです。

▼岩内町郷土館に飾られるホップやビールに関する資料
国産ビールと北海道開拓に深い関り!岩内町に野生ホップ発見の地のなぜ

1994(平成6)年、岩内町での野生ホップの発見を記念して、岩内サッポロビールの会とサッポロビール株式会社が、岩内町郷土館前庭に「野生ホップ発見の地」記念碑を建立しました。

▼岩内町郷土館前庭に建立された「野生ホップ発見の地」記念碑
国産ビールと北海道開拓に深い関り!岩内町に野生ホップ発見の地のなぜ

1995(平成7)年、「野生ホップ発見の地」記念碑の右横に、ホップアーチが作られてホップが植樹されました。多年生のホップは、毎年すくすくと成長し、8月に最盛期を迎えます。

▼最盛期のホップ
国産ビールと北海道開拓に深い関り!岩内町に野生ホップ発見の地のなぜ

なんと、日本のビール製造が北海道開拓史と深く結びついていたとは。北海道開拓がなければ、もしかするとメイドインジャパンのビールは存在しなかったかもしれません。歴史を紐解くと、意外な結びつきが見えてくるものです。

▼岩内町郷土館(写真提供:岩内町郷土館)
国産ビールと北海道開拓に深い関り!岩内町に野生ホップ発見の地のなぜ

岩内町郷土館 ぱとりあ岩内
所在地:北海道岩内郡岩内町字清住5-3
電話:0135-62-8020
開館期間:4月上旬~11月下旬
開館時間:9時~17時
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
公式サイト
Facebookページ

取材協力
サッポロビール株式会社
所在地:東京都渋谷区恵比寿四丁目20番1号
問い合わせ先:0120-207800(ビール・発泡酒・ワインなどについてのお問い合わせ)
受付時間:平日9時~17時
公式サイト

※2017年6月14日:ホップの写真のキャプションに一部誤りがありましたので訂正しました。

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筆者について

石簾マサ

石簾マサ

すべてのしがらみを捨て札幌で永住するぞ……と移住してきた50代のおっさんライター。札幌楽し~い。移住者が見た札幌の楽しさ・良さを伝えていければ……と思っております。