元LS北見メンバー江田茜先生に教わる 初めてのカーリング体験

2018年の平昌冬季オリンピックで、女子日本代表「LS(ロコ・ソラーレ)北見」の活躍が注目を集めたカーリング。白熱した試合を見て、自分もカーリングをやってみたい!と思った人も多いのではないでしょうか。とはいえ、初心者は何から始めればよいのでしょうか。難しいのでしょうか。

そこで今回は、LS北見の元メンバーである江田茜さんに、カーリングの基礎から教えてもらいました。体験するのは、オホーツク情報発信番組「オホバン」の佐久間茜華さん。ほぼカーリング初心者の彼女は、果たしてどこまで上達できるのか……?(記事の最後に動画があります!)

会場は、カーリングのまち北見市常呂にある、アドヴィックス常呂カーリングホール。2013年11月にオープンした、6シートを備える国内最大のカーリング競技場で、LS北見の拠点ともなっています。

▼体験場所となった、国内最大のアドヴィックス常呂カーリングホール

1.カーリングに必要な道具を知ろう!

まず、カーリングをするには、薄く氷が張られたカーリング・シートが必要です。全長約45m、幅約5mという細長いシートが使われます。室内気温はマイナス5度程度ですので、冬の服装を持参して臨みましょう。ただ、体験を続けていくうちに身体が熱くなってくるので、そんなに厚着する必要はないかもしれません。

▼カーリングホールで貸出しているシューズとブラシ

同カーリングホールでは、カーリング競技に必要な用具を貸出してくれます。シューズ(今回は専用シューズではなく、普通のスニーカーにスライダーを装着)・ブラシセットで120円、防寒着が必要であれば400円、そして競技シートは1時間あたり1400円です。必要なら軍手も貸し出してくれます。ストーンは各シートに16、備えられています。

▼これがカーリングで使用するストーン

2.シート上を滑る動作の練習をしよう!

最初にシューズを履き、スライダーを利き足ではないほう(右利きなら左足)に装着します。これにより、左足だけがものすごく滑ることになります。

▼これがスライダー

スライダーを装着していない方の足(利き足)から、シートに踏み入れましょう。スライダーを装着した足から踏み入れると、転びやすいからです。まず、利き足ではない方の足で滑る動作から練習します。最初は慣れないので滑るのは至難の業ですが、ブラシを杖のように使いながら、シートを何度も往復します。

3.ストーンを投げるフォームを身に着けよう!

ストーンを投げる時のフォームを、シートの端で覚えます。滑る方の足(利き足とは逆の足)をシートの端につけて、利き足を後方に伸ばします。「投げる時はみんなこんなつらい体勢をしているんだ」と驚きを隠せない佐久間さん。

体がかたすぎてこのフォームができないとだめかと思いきや、意外とそんなことは関係ないそう。投げるフォームに決まりはなく、安定感に優れているのがこのフォーム。この時点ではまだその安定感がわかりませんでしたが、ストーンを手にした時にそれが一番よくわかるのです。

フォームを習ったら、今度は実際に滑ってみます(まだストーンは手にしません)。利き足をハックと呼ばれるゴム製の蹴り台にかけてその場にしゃがみ、両手でブラシを横に持ってシート上につけます。そして、利き足の位置はそのままにして、
(1)少し前に出て
(2)お尻を上げて
(3)少し後ろに引いて
(4)利き足で勢いよくキックして前に出ます。

慣れないうちは滑ったあとに体が回転しがちですが、回転するのは曲がる方向に力が入っているからだそう。一連の流れを身に着けるのに混乱しますが、何度か繰り返すとできそうな気になってきます。

▼ハックと呼ばれる踏み台に利き足をセット

▼しゃがみまして

▼少し前に出まして

▼お尻を上げて後ろに少し下げ、あとはキック!

4.ストーンを投げてみよう!

ストーンを投げるフォームや流れをマスターしたら、次はストーンを投げてみます。実際に動かしてみると、ひとつ20㎏ほどあるストーンは両手でも持ち上げられないほど。というか、持ち上げる作業はほぼないそうです。

▼1つ10万円はするというストーン(直径約30㎝)。8つずつ計16あるので、単純計算で1セット160万円はする

江田さんによると、ストーンはすべて同じではなく、一つ一つに癖があるのだそう。その癖を見ながら、これは曲がりやすいね、これは滑りやすいねというのを確認しながらプレイしています。「癖の悪い子は本当に癖が悪いんで(笑)」と江田さん。

回転をかけずに投げてしまうと、ストーンがどこに進んでいくかわからないので、回転をかけてストーンを目的の場所に誘導しているのです。このように、パーマをかける時のカールに似ていることから、カーリングと呼びます。

ストーンを投げる際、ブラシを左の脇の下にしっかり挟んで持ち、ストーンを利き手(右手)で持ちます。先ほどマスターしたフォーム(3)後ろに引く動作では、ストーンも一緒に後ろに引くのを忘れないようにしましょう。ストーンが加わると頭の中がさらに混乱しますが、これにより投げる時にストーンが引っぱっていってくれる感覚がわかるはずです。

▼江田先生のお手本

バランスを崩しながらもストーンを投げていると、江田先生から「普通にうまいんだけど!」とお褒めの言葉をいただきました。だんだん自信が出てきた佐久間さん。「カーリング選手も夢じゃないかも!」と満面の笑みです。

さて、一本目の赤いラインまでにストーンを手から離さないと、そのストーンがアウトになってしまうルールがあります(身体は越えてもOK)。そこまでにストーンから手を離し、向こう側のハウス(サークル状の場所)を目指します。これまでの練習で、自分が投げたら最大どこまでストーンが届くかはわかったはずなので、あとはその距離を長くしていきます。

二本目の赤いラインまで届くよう投げるのは一苦労です。ここを超えないと試合に使えないストーンになってしまうので、ハウスに届くようにしないといけません。「ぜんぜん届かない! (ハウスの)真ん中に入れたい!」、そんな気持ちが強くなっていきます。江田先生曰く、どうやら、飛距離は最初の蹴る力、脚力が重要だそう。

※シートのサイドの端にストーンがぶつかるのもアウトになります。ボーリングでいうガターですね。

5.ストーンにカーブをかけてみよう!

続いて、ストーンに回転を加えてカーブさせる練習です。ボーリングでカーブをかけて投げるのとイメージは一緒。

カーリングのストーンのカーブには、ストーンを真上から見て10時から12時の方向に回転させるインターン、2時から12時の方向に回転させるアウトターンがあります。というか、この二種類しか使わないそうです。「4時くらい(の方向)から曲げることはある?」との質問に対し江田さんは、「それはない!」ときっぱり。

左に曲げたい時はアウトターン。ストーンを2時から12時の方向に回転させながら、すっと手を離してあげます。考えることが多くて、初心者には大変!

▼これが2時の方向に向けたストーン。12時の方向に回転させながら手を離す

ちなみに、ハウスに届くまでのストーンの回転数は、3回転半がベスト。これを参考に、回転が多いから曲がりにくい、回転が少ないから曲がっていきやすいということを判断しており、それに応じて、弱めのカールをかける、逆に強めのカールをかけるといった対応をしています。

実際のゲームでは、司令塔の人がストーンの横でブラシを立てているのを見ますが、投げる選手はストーンではなくブラシを目がけて投げています。要するに、ブラシ側からカーブをかけて投げてね、ということ。ストーンとその横に置くブラシとの幅の大きさで、曲がるリンクか否かがわかるそうです。難しそう!

6.ブラシで掃いてみよう!

さて、カーリング・シートをよく見ると、氷の表面にペブルと呼ばれる氷の凹凸があります。プベルがないとストーンは滑ってくれません。この氷をブラシで掃いて溶かし、水の膜を作ってストーンを滑りやすくしてあげます。

▼中央の2シートは氷が張っていない状態。両側のシートと色の濃さが違うのがわかる

▼一生懸命掃く!

▼ハウスに届きました!

ブラシで掃くとき(スウィーピング)は、左足に装着したストッパーを外すこと。今度はあまり滑らないので、シート上を容易に歩けるようになります。ブラシは、左右どちらか掃きやすい方の手で持ち、体重を乗せて全力で掃きます。

これまで届かなかったストーンは、このようにブラシで掃くことで距離が延びるので、ハウスに届きやすくなります。ちなみに、左右どちらを掃くかによって、曲がる方向を決めることができるそう。

▼佐久間茜華さん(左)と江田茜さん(右)。教えていただきありがとうございました!

約1時間かけてカーリングの基礎を学びましたが、やってみた感想は、とにかく奥が深い! そして、筋肉痛になりそうということで皆一致しました。カーリングをやってみたいという方、まずは一歩踏み出して、チャレンジしてみてください!

【動画】今回のカーリング体験を動画でご紹介します!(オホーツク情報発信番組「オホバン」)

企画・取材:オホバン/北海道ファンマガジン
取材協力:江田茜さん(元LS北見)