味わう

まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」

一般的に「こうあるべきだ」と認められている考え方を「既成概念」と呼びます。空は青く、トマトは赤く、バナナは黄色い。誰もがそう答えることでしょう。しかし既成概念を超えることで、新たな価値が生まれることがあります。奇想天外な「カラフルなたい焼き」で人気を集めている「たい吉」を訪ね、代表の工藤正男さんに話を伺いました。

奥様の一言からカラフルたい焼き誕生!

▼江別市あけぼの町の静かな住宅街で土日祝のみ営業
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」
(写真提供:たい吉)

カラフルなたい焼きが評判の「たい吉」は、グラフィックデザイナーの工藤正男さんが、オーナーを務めています。いずれは自分の店を持ちたいと考え、少ないスペースでも開業できる「たい焼き屋」を開くことを計画していました。これまでも試作を兼ねて友人や知人などにたい焼きを振舞っていたと言います。その頃作っていたたい焼きは、餡を茶色の生地に閉じ込めたオーソドックスなものでした。カラフルなたい焼きのアイディアは、奥様の一言がきっかけでした。

▼一般的なたい焼きの姿
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」
(写真提供:たい吉)

甥の入学祝いにたい焼きをプレゼントすることを考えていたところ、奥さんから「どうせなら紅白のたい焼きを作ってみたら」と提案されました。工夫を凝らして作ってみると、「めでたい」「珍しい」と思わぬ反応が!「できると思ったらやっちゃう」という、工藤さんのチャレンジ精神に火が付くとともに、グラフィックデザイナーとしてのクリエイティブな感覚が覚醒し、カラフルなたい焼きづくりがスタートしました。

▼バリエーションは20種類以上
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」
(写真提供:たい吉)

カラフルなたい焼きに相応しい材料を探していたところ、大阪の業者が色とりどりの餡を販売しているのを発見。早速入手して試作に取り掛かります。これまでデザイナーとして数々のコンペに参加していた経験から「商品は3種類あるほうが選ばれやすい」と考え、自立する30mmの極厚生地を使ったフワフワの「極厚たい焼き(味6種類)」と、サクサクした食感の「クロワッサンたい焼き(味7種類)」の3つを柱としました。

カラフルたい焼きづくりは早朝から始まる

▼カラフルたい焼きを考案した工藤正男さん
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」

たい焼きづくりは、早朝から始まります。カラフルたい焼きは約12種類販売するため、赤・青・黄・緑の4つの色を調合して、12色の生地を作らなくてはなりません。青はラムネ、黄色はレモン、ピンクは桜、ライトグリーンはメロンなど、生地の色に相応しい餡を包んで焼き上げていきます。「通常のたい焼きよりも、ずっと手間がかかる」といい、朝3時に起きて仕込みを行い、5時半くらいに焼きはじめ、一日約200尾ほど製造されます。

▼桜&ラムネ
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」

ピンクの色が美しい「桜」は、桜餅のような味で、モチモチとした生地と相性がぴったり。「たい焼きで四季を感じる」という、これまでにない発想が盛り込まれています。

ブルーの「ラムネ」は清涼感がある不思議な味。青は食欲を衰退させる色と言われているので、このたい焼きは、かなり攻めています。

▼マンゴー(オレンジ)、紫(ぶどう)、ライトグリーン(めろん)、青(ラムネ)
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」

まさにフルーツ・オールスターズ。これまでにない食べ物の味を説明するのは難しいですが、あえて何かを例にするなら、弾力のある生地とフルーティーな餡は、「グミ」に近いと思います。同じグリーンでもオリーブグリーンは「抹茶」など、さまざまな色と味のバリエーションを楽しむことができます。

▼カラフルなたい焼きマスコットは、近隣の駄菓子屋「でぃらいと」からのプレゼント
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」

「開店1年くらいは、お客さんがあまり来ないだろう」と思っていたものの、「おもしろい」「珍しい」「インスタ映えする」など、たちまちSNSなどで話題になり、一日平均100人が来店しています。早いときは30分で完売することもあったそうです。

地域に喜ばれるお店でありたい

▼工藤さんの趣味が詰まったインテリア
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」
(写真提供:たい吉)

市外からのお客さんだけでなく、近隣の方がコーヒーを飲みにきたり、学校の父兄会のおしゃべりタイムに利用されることも多いそうです。またインテリアとして置いたサッカーゲームに興味を示し、小学生が遊びに来るのだとか。胆振東部震災の復興や、地域のイベントに参加するなど、地域の方々に喜んでもらえるお店作りを心がけています。

▼みんなに喜ばれるたい焼きを作り続けたい
まるでパレット!? グラフィックデザイナーが作る「カラフルたい焼き」
(写真提供:たい吉)

「美味しいひと時は、しあわせなひと時。」をたい吉のテーマに掲げ、食べる方が笑顔になることを大切にしています。大手通販会社から「お土産通販として販売しないか」という誘いもあるそうですが、「たい焼きづくりを一人で行っているので、無理な拡張は考えていない」と言います。

「誰かにたい焼きの作り方を学んでもらい、人通りの多い場所で2号店でも開くことができれば生産量を増やせるのでしょうが、このたい焼きを作るのは難しいでしょうね」と工藤さんは言います。「私の代で終わって〝幻のたい焼き〝と呼ばれることになるかも知れませんね」と笑っていました。

江別鯛焼き たい吉
所在地:江別市あけぼの町37番地の8
電話:011-375-6353
営業日: 土日祝
営業時間:10時から17時 完売早期終了 ※平日は予約販売
公式サイト
Facebookページ

筆者について

吉田匡和

吉田匡和

札幌在住の文筆家・写真家。日本のすべての年金制度(厚生年金・国民年金・国家公務共済・地方公務員共済・私学共済)に加入したことがあるという、自慢にもならない経歴を持っています。苦労しなくて済む程度のアウトドアが趣味で、夕日を見ながらビールを飲むのが大好きです。【Sクラス認定ライター】