全国的に珍しい”生そうめん”の元祖―岩見沢「小麦家めんめん」

そうめんといえば、夏の食卓の定番メニューです。キリッと冷えた麺を勢いよくすするも良し、にゅうめんにして優しい温かさを味わうも良し。それはもう、日本のどこの家庭にもある原風景と言って過言ではないでしょう。

そんなそうめんに、ふと疑問を抱いた人が北海道にいました。「どうして他の麺にはあるのに、そうめんだけは生麺がないのだろう?」と。その疑問は、やがて岩見沢市に人気店を生み出すきっかけとなったのです。

馬鹿にされた「生そうめん」という発想

▼元祖生そうめん めんめん

岩見沢市の人気店とは、全国的にも珍しい生そうめんのメニューを出す「小麦家めんめん」(以下めんめん)です。そうめんをうどんや蕎麦のようにいろいろアレンジして提供しているのも珍しいですが、なんといっても「生そうめん」という言葉が気になります。一体、生そうめんとは何なのでしょうか?

▼川口義行さんと知衣子さん夫婦

物語は今から約20年前に遡ります。夜、小腹の空いた川口義行さんは、奥さまの知衣子さんにそうめんを茹でてもらいます。これがなかなかのおいしさ。そこで義行さん、ふと疑問を抱きます。「うどんも蕎麦もラーメンも、スパゲッティにさえ生麺というものが存在するのに、なぜそうめんには乾麺しかないのだろう?」と。

▼めんめんは券売機制のセルフサービス

気になったことは自ら行動して解決する義行さん、全国のそうめん製造所に電話をして、聞いてみました。ところがどの製麺所にも相手にしてもらえません。「ないものはないんだよ!」と、馬鹿にしたような態度さえ取られる始末です。

そんな中、1軒だけ「なぜそんな疑問を抱いたのですか?」と、逆に質問してきた製麺所がありました。義行さんの話を興味深げに聞いた後、「実はいろんな麺がある中で、いちばんおいしいのが生そうめんなんですよ」と教えてくれたのです。

▼小上がり席もファミリーに人気

しかし、実際に生そうめんを作っているところは皆無。じゃあ自分たちで作ってしまえばいいんだ、ということで、義行さんは地元の製麺所の協力を得て、研究と試作の後に生そうめんを完成させました。全国でここでしか味わえない、北海道産小麦をブレンドした生そうめんが誕生したのです。

▼「キタノカオリ」と「はるゆたか」をブレンド

通常の乾麺より、少し太めの生そうめん。美しい純白の麺を使って、冷たいものから温かいものまで、自慢のメニューも揃いました。こうしてめんめんは、2011(平成23)年4月にオープンし、たちまち行列のできる人気店になったのでした。

そうめんに対する概念が覆される!?

▼食べたことのないそうめんがここに

めんめんの生そうめんを食べた人が口を揃えて言うのが「そうめんの概念が変わった!」ということです。その驚きは、実際に食べてみてこそ分かるはず。

券売機の前に立つと、そのボタンの多さに戸惑いそうですが、そうめんのメニューは「ぶっかけそうめん」「カレーそうめん」など、冷温併せて全7種類。そこに「とり天丼」や「豚丼」といった7種類の丼メニューを自由に組み合わせることができます。

▼券売機の横にある「人気ランキング」も参考に

さて、生そうめんの衝撃を存分に味わいたいなら、やはり特筆すべきは冷たいメニューでしょう。そのひとつがこれ。「とりつけめん」です。

▼とりつけめん(ゆず入り、税込780円)

麺をひと口すすった瞬間に「これがそうめんなの?」と驚くこと必至。つるつるとした舌触り、喉ごし、かすかに感じるコシなど、どれを取っても既存のそうめんと異なります。否、既存のどの麺類とも異なっているのです。

ただ、生そうめんは非常にデリケートです。筆者はひと口食べた後に写真撮影をし、数分後に再び食べると、もう食感が変化していました。出来立てを一心不乱に食べることをおすすめします。

▼すべての食材にこだわりが

さらに驚いたのが、つけ汁です。鶏肉の柔らかさとクセのなさは、生そうめんと同じくらい衝撃でした。聞けば、食材は日本全国いろんなところから厳選したのだとか。

▼ねぎしおそうめん(ゆず入り、税込580円)

もちろん、温かいメニューもおすすめです。「ねぎしおそうめん」はとことんシンプルなビジュアルながら、奥深い味わいが人気です。

▼従来のにゅうめんとも違うオリジナリティ

うどんよりも蕎麦よりもさっぱりとした優しい味わいは、そうめんならではのもの。加えて、めんめんでしか食べられない「ねぎしお」というアイデアが、従来のにゅうめんとはひと味違うオリジナリティを生み出しています。

こうしたメニューの数々は、ぜひ岩見沢を訪れた際にめんめんにて食べていただきたいところですが、なかなか店に行けないという人にも朗報があります。

▼生そうめん(4食入り、税込1,300円)

めんめんでは、生そうめんの配送も受け付けています。気になる人は店に直接問い合わせて、取り寄せてみてはいかがでしょう。

また、めんめんは人気店のため、お昼時は常に混み合っています。しかも閉店するのは麺やスープがなくなり次第、大抵は夕方までに閉店してしまいます。そこで狙い目の時間帯を聞いてみたところ、午後2時から2時半が比較的ゆっくりできるとのことでした。訪れる際の参考にしてみてください。

小麦家めんめん
所在地:北海道岩見沢市10条西18丁目8-1
電話:0126-25-8895
営業時間:11時~麺、スープがなくなり次第閉店
定休日:木曜日