食材は馬の腸!?歌志内の炭鉱文化を支えた「なんこ鍋」とは

かつて北海道にはいくつかの炭鉱がありました。炭鉱があった場所にはたくさんの鉱夫とその家族が集まり、その場所特有の文化が生まれました。なかでも体が資本の鉱夫にとって重要な意味を持つ食に関しては、鉱山の数だけそれぞれ違う食文化があったと言っても過言ではありません。今回取材したのも、そうした食文化のひとつ。歌志内市の「なんこ鍋」です。

ルーツは秋田県の探鉱現場

「なんこ鍋」の歴史をたどるべく、まずは歌志内市の歴史を展示している歌志内市郷土館「ゆめつむぎ」を訪ねました。

▼歌志内市郷土館「ゆめつむぎ」

お話を伺ったのは、歌志内市教育委員会の佐久間淳史主査です。

「北海道炭礦鉄道株式会社ができたのが1889年、明治22年のことです。そして、翌年には空知採炭所ができました。当時、北海道には炭鉱の技術を持つ人がいなかったため、秋田の阿仁(あに)という炭鉱から、炭鉱技術を持った炭坑夫が渡ってきました。『なんこ鍋』はもともと阿仁の郷土料理だったのです」

▼「なんこ鍋」について教えてくださった佐久間淳史(さくまあつし)さん

「物語は江戸時代にまで遡ります。阿仁の探鉱現場は、それはそれは過酷なものでした。塵肺に冒され、働けなくなった人は容赦なく職場を追われていきます。ところがしばらくして、そうした人々が元気になって現場に帰ってきたのです。聞けば、彼らは馬を食べたと言う。馬肉が塵肺に効くという噂がまことしやかに広がりましたが、江戸時代に馬を食べるのは御法度でした。そこで、午の刻に太陽が南を向いていることから、隠語として馬のことをナンコ(南コ)と呼ぶようになったのです」(佐久間さん)

▼「ゆめつむぎ」で展示されている空知採炭所の様子

「なんこ鍋」が阿仁から歌志内に伝わり、馬肉は馬の腸に変わりました。現在でも歌志内の家庭では、盆や正月など人が集まるときに食べる郷土料理として伝えられています。実際に「なんこ鍋」とは、どういった食べものなのでしょうか?

▼現在では牛よりも高価になった馬の腸

もともとは味噌煮込みで「ナンコ」と呼ばれていましたが、20年ほど前の鍋ブームの際に呼び方を「なんこ鍋」と改め、徐々に広がっていきました。ただ、それぞれの家庭で食べられていたものなので、明確な定義はありません。肉だけを煮込んだもの、野菜と一緒に煮込んだもの、鍋にしたものなど、その形態はさまざまです。

実際に「なんこ鍋」が食べられるお店をご紹介!

ここで「なんこ鍋」が食べられるお店を紹介しておきましょう。

うたしないチロルの湯レストラン

温泉施設の中にあるレストランですが、温泉に入らない人も利用することができます。臭みを取るために4回ぐらい水で炊いてから味噌でじっくりと煮込んだなんこ鍋が食べられます。

▼なんこ鍋定食 950円

なんこ鍋にサラダと小鉢とご飯が付いた定食です。じっくりと煮込まれた肉はやわらかく「なんこ鍋」をしっかり堪能したい人におすすめです。

▼なんこ小鉢 450円

「なんこ鍋」を少し味わってみたいならこちらがおすすめ。手軽に食べられると人気です。

うたしないチロルの湯レストラン
所在地:北海道歌志内市字中村78番地3
電話:0125-42-5588
営業時間: 11時30分~14時、17時30分~20時(L.O.19時30分)
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肉の木村

左側が焼肉屋で右側が精肉店。取材時は焼肉屋が定休日だったため、特別に精肉店で「なんこ味噌煮」を提供していただきました。精肉店の方は10時~18時までで、日曜日が定休日です。

▼なんこ味噌煮 500円

もともと家庭で食べられていたなんこを、そのまま食べてもらおうと臭みをとり味噌でじっくりと煮込んだ小鉢です。七味や一味をかけて食べるとよりおいしくいただけます。

▼馬生なんこ、国内産で1kg、2,260円

なんこを冷凍にしたもの。精肉店で売っています。ブラジル産やボイルしたものもありました。

肉の木村
所在地:北海道歌志内市字歌神36番地
電話:0125-42-2235
定休日:火曜日
営業時間:17時~22時(L.O.21時30分)
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道の駅「うたしないチロル」食べ処チロル

漬け物処と食べ処があります。漬け物処では、地元のおばあちゃんが漬けた「はつみちゃんの漬物」をはじめ常時30種類以上の漬物を販売しています。

▼チロル定食 860円

なんこの小鉢とはつみちゃんのお漬物(3種類)、ご飯、お味噌汁が付いています。漬物は季節によって変わり、また日によってもかわるそうです。この日は「大根のかぼちゃ漬け」「赤カブ酢漬け」「鱒のハサミ漬け」でした。さっぱりとしたお漬物が、こってりとしたなんこと相性抜群です。

▼なんこラーメン1080円

名物のなんことはつみちゃんの白菜キムチをトッピングした味噌ラーメンです。なんこ鍋の汁が入っており濃厚で、食べ応えがあります。「なんこ鍋」から派生したメニューで、ほかに「なんこカレー」や「なんこ丼」などもあります。

道の駅「うたしないチロル」
所在地:北海道歌志内市字中村72番地2
電話:0125-42-5566
休館日: 年末年始(12/30~1/5)、毎週月曜日(11月~3月)※月曜日が祝日の時は翌日
開館時間: 9時~18時(4月~10月)、9時~16時(11月~3月)
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歌志内のソウルフードとして受け継がれている「なんこ鍋」。今では貴重となった馬の腸を使った珍しいメニューをぜひ一度お試しあれ。

歌志内市郷土館「ゆめつむぎ」

明治時代から炭都として栄えた歌志内の歴史や文化を映像などの資料で紹介しています。炭鉱で実際に使われた採炭機材や、白黒テレビや電気洗濯機、ちゃぶ台などの生活用具なども展示されていて、当時の炭鉱での仕事や生活についても知ることができます。

所在地:歌志内市字本町1027番地1
電話:0125-43-2131
開館時間:4月~10月 10時00分~16時00分
11月~3月 10時00分~15時00分
開館日:4月1日~5月31日:毎週 金・土・日曜日、祝日
6月1日~10月31日:毎週 水・木・金・土・日曜日、祝日
11月1日~3月31日:毎週 金・土・日曜日、祝日
(12月30日~1月4日は休館です)
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