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珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

「冷燻」というものをご存じでしょうか。昔から受け継がれる燻製の手法ですが、時間も手間もかかるため、それほどポピュラーではありません。

そんな冷燻を約70年間、3代にわたって守り続けてきた店が余市にあります。「燻製屋 南保留太郎商店」(以下南保留太郎商店)です。果たして冷燻とはどういうものなのか、どんな燻製に仕上がるのか、実際に作っているところを見せてもらいました。

樺太の先住民から学んだ燻製方法

▼燻製屋 南保留太郎商店
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

訪れたのは、たくさんの雪が降り積もった日。看板の「燻製屋」の文字と木製の店舗外観が、雪景色に不思議と映えていました。

▼近づくと、かすかに燻製の香りが
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

南保留太郎商店は、1948(昭和23)年創業。もともとは行商で、たらこなど海産物の加工食品を扱っていたそう。

そんな中、初代の南保留太郎さんが燻製をしようと思い立ったのは、寒い冬の時期のことでした。留太郎さんは樺太で先住民から燻製の方法を学んだ経験があり、漁が少なくなる時期の蓄えと、保存も兼ねて、やってみようと考えたのです。その手法こそが「冷燻」で、2代目、3代目と受け継がれてきました。

▼3代目の南保憲亨さん
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

冷燻というものをまずは見せてもらおうと、店舗奥の作業場へ案内してもらいました。

▼作業場の中へ
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

作業場へ一歩入るだけで、全身がスモーキーな香りに包まれます。余市という場所柄もあり、この香りだけでウィスキーがぐいぐい飲めてしまいそうです。

▼鮭の下におがくずの山が
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

「一般的な温燻が60~80℃の高温で燻すのに対し、冷燻は20℃前後の低温で時間をかけてじっくりと燻していきます。そうすることで脂が出るのを防ぎ、かつ水分だけを抜き、旨みを閉じ込めることができるのです」(憲亨さん)

南保留太郎商店では、燻材に黒松内産のブナのおがくずを使用しています。ブナのおがくずは香りがマイルドで、どんな食材とも合うのだとか。

▼燻した鮭を乾燥し、さらに熟成させる
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

冷燻の期間は、短くて1週間、長ければ3ヵ月もかけるというから驚きです。燻した後は作業場の天井から吊し、乾燥させます。こうすることで生ハムのように熟成が進み、さらに旨みが凝縮されていくのです。

▼食材によっては温燻も
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

また、南保留太郎商店は温燻も行っています。珍しい野菜の燻製や甘えびの燻製など、こちらもおいしいと評判です。

▼豆腐の燻製
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

ちなみに豆腐の燻製には、ブナのおがくずの他に桜のチップを混ぜて香り付けするのだそう。温燻ですが味付けに2晩、燻製に4日ほど、しっかりと手間暇がかけられています。

おすすめの燻製、人気の燻製、珍しい燻製

▼南保留太郎商店の店内
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

店舗に戻り、気になる商品をいろいろと見せてもらいました。

▼サーモンなど魚介類が並ぶ一画
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

冷燻の商品が食べてみたいという人は、ぺったら、ほっけ、にしん、鮭といった魚がおすすめです。冷燻ならではの濃く凝縮された旨みを味わってみてください。

▼インディアンスモーク(400g税込3,456円~)
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

ただし、たとえばインディアンスモークは10月から4月末までの販売であるなど、期間限定のものもあるのでご注意を。

▼甘えび燻製(20g税込540円~)
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

店のいちばん人気を聞いたところ、甘えびの燻製だと教えてもらいました。4月から11月末頃に獲れる甘えびを生きているうちに味付けし、その日のうちに燻製にしてしまうというから、新鮮そのもの。色艶も美しく、頭から尻尾までパリパリと食べることができます。

▼ヘラ蟹燻製(店頭限定は税込432円~)
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

また、ヘラ蟹の燻製は鮮度が命。買ったその日が賞味期限です。漁の状況によって品切れになることもあるので、これを目当てに訪れる人は事前に問い合わせた方が良さそう。

▼かぼちゃ燻製、にんじん燻製、じゃがいも燻製(各々税込389円)
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

珍しいものといえば、野菜の燻製なんていかがでしょう。おやつ感覚でそのまま食べてもおいしいし、肉料理の付け合わせにしても気が利いています。燻製ならではの野菜の味わいを楽しんでみてください。

▼他にも魅力的な商品が満載
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

燻製をもっと味わってみたいという人は、隣接するレストラン「燻香廊(けむかろう)」で燻製料理を食べることができます。腕を振るっているのは、実は南保留太郎商店の2代目。燻製を知り尽くしたシェフだからこそ、確かな味わいがそこにはあります。

▼たくさん食べて、燻製の魅力に触れて
珍しい”冷燻”を守り続けて70年―余市町「燻製屋 南保留太郎商店」

最近では燻製を趣味にする人や、コンビニなどでも燻製商品がたくさん並ぶほど、燻製人気も高まりを見せています。そんな今だからこそ、餅は餅屋、燻製は燻製屋。長きにわたって製法と技術を受け継いできた燻製専門の南保留太郎商店で、本物の魅力に触れてみてください。一口食べただけで、そのおいしさに開眼すること請け合いです。

【動画】映像で見る南保留太郎商店(中村千紗・野口若奈)

バスタビ北海道積丹編で訪れました。

有限会社 南保留太郎商店
所在:北海道余市郡余市町港町88番地
電話:0135-22-2744
営業時間:8時~17時
定休日:年末年始以外不定休
公式サイト
Facebookページ

筆者について

石簾マサ

石簾マサ

すべてのしがらみを捨て札幌で永住するぞ……と移住してきた50代のおっさんライター。札幌楽し~い。移住者が見た札幌の楽しさ・良さを伝えていければ……と思っております。