その重さ10キロ以上!幻の巨大キャベツ「札幌大球」の謎に迫る

北海道のスーパーや八百屋さんなどで、お化けのようなキャベツが売られていることがあるのをご存知でしょうか? ひとりでは抱え上げるのも難儀しそうな巨大なキャベツ、その名も「札幌大球(さっぽろたいきゅう)」です。どうしてこれほど大きなキャベツが生産されるようになったのか、どのように消費されているのか、その謎に迫ってみました。

▼名は体を表す!? 巨大な球がゴロゴロ転がる畑

札幌大球が絶滅の危機に瀕している!?

そもそも日本でキャベツが作られるようになった歴史はまだ浅く、明治初期、北海道開拓使がアメリカより種子を導入したのがはじまりでした。大正から昭和初期にかけて、貯蔵に適し、漬け物などの加工に適したものを選抜改良した結果、大型キャベツの品種にたどり着いたのです。1900年頃の種苗カタログにはすでに、札幌大球の前身である「札幌甘藍」や「札幌大玉」といった名前が掲載されています。

札幌大球の全盛期は昭和初期から戦前にかけて。道内のかなりの面積において作られていましたが、漬け物需要の減少や農家の高齢化などにより、どんどん縮小されていきます。現在では、生産者が10数戸にまで減少し、札幌大球は今まさに絶滅の危機にあるのです。

▼生産者はわずか10数戸にまで減少

独特の食べごたえと甘みが味わえるのはここ

そんな札幌大球の火を絶やしてはいけないと、立ち上がった人たちがいます。2014年に、札幌大球を札幌伝統野菜として守っていこうと企画が生まれ、翌2015年より本格的な活動が開始されました。応援隊長は、株式会社ブレナイ社の日原康貴さんです。(※ブレナイ社HP

▼応援隊長の日原康貴さん

「幸い、札幌大球の種は保存されていました。ならば生産者を見つければ話は早いじゃないかと思われそうですが、札幌大球は収穫などが大変なことから、受け先が決まらないことには生産に踏み出せない、という問題がありました」(日原さん)

▼通常のキャベツが約2キロほどなのに対し、札幌大球は10キロ以上!

JAさっぽろから大量に購入してくれ、なおかつ札幌大球という名も明記してくれる会社を探したところ、名乗りを上げてくれたのがお好み焼きの「風月」とお漬け物の「北彩庵」でした。JAさっぽろによれば、現在、札幌市内で札幌大球を作っているのは2農家のみ。そこで生産されるすべてが、風月と北彩庵によって買い取られていきます。

▼「風月」店頭に、札幌大球が飾られていることも

▼札幌大球をたっぷり使用したお好み焼きは、ほんのり甘くて絶品

応援隊長の日原康貴さんに、札幌大球の魅力をアピールしてください、とお願いしたところ、
「やはりキャベツ独特の甘みが強いことですね! さらに葉が肉厚なので、歯ごたえ、食べごたえがあります。ぜひ風月でお好み焼きを食べ、北彩庵のにしん漬を買い、その旨みを堪能していただきたいです!」
と、熱のこもったお言葉が返ってきました。ただし、両方とも札幌大球を使った商品が販売できる期間は限られているので注意が必要です。

▼「北彩庵」のにしん漬は、北海道の冬の風物詩

▼もともと漬け物用に作られていた札幌大球だけに、にしん漬は間違いない味

オーナーになって家族みんなで貴重な体験を

さて、ここまで読んで札幌大球に興味が沸いてきたあなた。札幌大球のオーナーになってみませんか? 実は札幌大球にはオーナー制度「札幌伝統野菜『札幌大球』応援隊」というものがあり、一口4,000円でこの巨大な伝統野菜を応援することができるのです。オーナーになると、北彩庵から札幌大球を使用したにしん漬200グラムが6パック送られてきます。初年度は200人、2年目となる2016年には250人のオーナーが札幌大球を支え、その輪は着実に広がってきています。

オーナー特典は、にしん漬だけではありません。「札幌大球を使った我が家のにしん漬けコンテスト」や「札幌大球収穫体験&お好み焼きパーティー」に参加できます。特に貴重な収穫体験ができ、おいしいお好み焼きまで食べられるイベントは大人気! 家族で参加すると、よい思い出になりそうです。

▼大きく厚みのある葉をザクザク切ってお好み焼き作りに挑戦!

▼おたふくソースが協賛するイベント、上手な焼き方やソースの塗り方まで教えてくれる

最後に、応援隊長の日原康貴さんに今後の展望について教えていただきました。

「私としては、パーッと人気が出て波が引いてしまうよりも、細々とでもよいから長く継続していきたいと思っているんです。大切なのは、札幌大球を絶滅させないこと。そのためには息が長く続くような活動を模索していきたいですね」(日原さん)

振り返ってみれば食のブームというのはいつの時代も存在してきたもの。札幌大球はそうしたブームとは一線を画し、守られていくべき北海道のひとつの伝統なのかもしれません。日原さんや生産者たちの活動はこれから先もずっと続き、やがて後世に引き継がれていくのでしょう。

札幌伝統野菜「札幌大球」応援隊 Facebookページ
お好み焼・焼きそば 風月
北海道の味覚処 北彩庵