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苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

鉄道の旅の楽しみに「駅弁」を挙げる人は少なくありません。苫小牧の「まるい弁当」は1914(大正3)年から駅弁を販売する老舗です。北海道の鉄道と共に歴史を歩み、ホッキやスモークサーモンなど、地元の特産品をふんだんに使った駅弁で鉄道の旅に花を添えています。人里靖料理長においしさの秘密を伺いました。

北海道鉄道創世期から駅弁を販売 

▼交通の要となる苫小牧駅は1892(明治25)年8月1日に開業
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

北海道の鉄道は、1880(明治13)年の手宮(小樽市)~幌内(三笠市)の開通が始まりと言われています。室蘭本線の歴史も古く1892(明治25)年には岩見沢~室蘭が開通しました。当時の鉄道は本州への石炭の輸送などが目的であり、苫小牧駅も北海道炭礦鉄道の駅として開業しています。

▼苫小牧を代表する駅弁はここで作られる
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

1913(大正2)年10月1日に、現在の日高本線の一部となる苫小牧軽便鉄道が部分開業し、苫小牧駅は交通の拠点になります。翌年には白老町で雑貨業を営んでいた○+イ向井商店(まるい弁当の前身)が苫小牧市に移転。駅構内で立売・物販を開始しました。現在では苫小牧駅のほか南千歳駅でも駅弁を取り扱っています。

特産品を使った「ほっきめし」

▼肉厚なホッキがたっぷり
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▼毎日新鮮なホッキを仕入れている
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

苫小牧は「ホッキ」の街として知られ、全国一となる約700トンもの水揚げ量を誇ります。「ほっきめし」は、もっとも苫小牧らしい駅弁と呼べるでしょう。1995(平成7)年に発売を開始。前浜で水揚げされたホッキを秘伝のタレに漬け込んで炊き込んでいます。ホッキの旨味と料理人の技術が融合。その美味しさに思わず笑顔がこぼれました。なお、ホッキの名称はアイヌ語の流用で、正式にはバカガイ科の二枚貝の姥貝(うばがい)です。「うばがいめし」では、食欲がわきませんね。

▼プリプリのホッキに絶品の炊き込みご飯。うまいなぁ、たまんないなぁ
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」
写真提供:まるい弁当

 以前は禁漁となる5・6月は販売を中止していましたが、その期間だけ冷凍したホッキを使うことで通年販売が可能になりました。一日20食ほどの生産なので、確実に入手するなら午前中が狙い目です。

王子スモークサーモン×まるい弁当=「スモークサーモン寿司」

▼「機械ではなく、私がカットしています」と人里料理長
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

「スモークサーモン寿司」は1972(昭和47)年から発売される歴史ある駅弁です。1966(昭和41)年より天皇家の献上品として取り上げられている王子のスモークサーモンを使用し、人里料理長が一つ一つカットしています。特別な味付けはせず、スモークサーモンの旨さがダイレクトに活かされています。

▼今もなお愛され続ける理由が納得できる駅弁
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」
写真提供:まるい弁当

 レトロな包み紙は札幌出身の漫画家・おおば比呂司さんの書下ろしで、イラストが郵送されたときの封筒が今も残されています。当時では珍しいスモークサーモンを使用したり、凝った包み紙を採用するなど、斬新なアイデアが詰め込まれている画期的な駅弁であったことが伺えます。

海の味覚を器に詰め込んだ「北海道汐彩弁当」

▼まるい弁当の集大成ここにあり
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」
写真提供:まるい弁当

 今や貴重な道内産の鮭を使用。食材へのこだわりが伺える
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

 鮭照焼、いくら醤油漬け、ツブ貝唐揚げ等5種類を盛り込んだ「北海道汐彩弁当」は、人里料理長の自信作です。旅行専門雑誌の企画を受けて2011(平成23)年に販売を開始。「気軽に引き受けたものの、段々忙しくなって急ピッチで完成にこぎつけた」と笑います。道内で水揚げされた鮭やウニの魚醤を使用するなど、素材のみならず調味料にもこだわりを見せています。

駅弁は後世に残すべき「食の無形文化遺産」

▼販売方法は異なっても駅弁づくりは変わらず
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」
写真提供:まるい弁当

 朝3時から60~70食分の駅弁づくりが始まり、8時ごろに苫小牧駅や南千歳駅に並びます。かつては立ち売りスタイルが基本でしたが、現在は駅舎内のカフェのみの販売のため、購入には一度改札を抜けなければなりません。人里料理長に駅弁購入の裏ワザを教えてもらいました。

▼苫小牧駅で売り切れていても南千歳駅で購入できることも
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

「南千歳駅はホームでの販売を行っているので、事前に電話で連絡いただければ指定された号車の前にお届けします。石勝線の分岐駅なので函館方面だけでなく、帯広・釧路方面の特急にも対応しています」とのこと。短い停車時間のため、おつりの必要がないよう代金を用意してください。必ずしも対応できるわけではありませんので、あらかじめご了承ください。

▼駅弁づくり一筋の人里料理長
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

全国から駅弁は年々姿を消しています。日本鉄道構内営業中央会に加盟している道内の会社は僅か8社。中には駅売りよりも北海道フェアなどに活路を求める駅弁もあります。2030年に北海道新幹線が札幌まで開通すると室蘭本線は幹線から外れるため「そうなると苫小牧の駅弁がどうなるか分からないですね」と、人里料理長は言います。

▼駅弁は「駅売弁当」の略称。鉄道とは切っても切れない関係
苫小牧駅で100年以上駅弁を販売!北海道の鉄道と共に歴史を歩む「まるい弁当」

郷土色豊かな具材を詰め込んだ駅弁は、車窓の風景やレールの鼓動が美味しさを引き立ててくれます。交通と郷土料理が一体化した「駅弁」という食文化は世界でも日本だけ。時代が変わっても残すべき「食の無形文化遺産」として、いつまでも味を引き継いでほしいですね。

まるい弁当
所在地:苫小牧市清水町2丁目3番4号
電話:0144-32-3131
南千歳駅販売所:090-6261-0501

筆者について

吉田匡和

吉田匡和

札幌在住の文筆家・写真家。日本のすべての年金制度(厚生年金・国民年金・国家公務共済・地方公務員共済・私学共済)に加入したことがあるという、自慢にもならない経歴を持っています。苦労しなくて済む程度のアウトドアが趣味で、夕日を見ながらビールを飲むのが大好きです。【Sクラス認定ライター】