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戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

「ぱんじゅう」というお菓子をご存じでしょうか。パンとまんじゅうの中間のようなお菓子で、蒸かして作るのではなく、パンのように焼いて作るまんじゅうだから、ぱんじゅうと呼ばれるようになったのだとか。ちなみにぱんじゅうは、広辞苑にも掲載されている言葉です。

そんなぱんじゅうの老舗店が、夕張にありました。思わずほっこりする店内の雰囲気と共に、ご紹介しましょう。

優しい味でいくつでも食べられそう

▼小倉屋ぱんぢゅう店
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

夕張でぱんじゅうを販売しているのは「小倉屋ぱんぢゅう店」。なんと戦前から続いているという老舗店です。創業者は満州で覚えてきた味を日本人好みにアレンジし、販売していました。しかし戦時中の砂糖不足で一時は廃業を余儀なくされます。店を再開したのは、1950(昭和25)年頃のことでした。

▼お店のメニューはぱんじゅうのみ
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

ところが1981(昭和56)年、創業者である前店主が体調を崩します。店を畳もうかという時、ひとりの男性が「夕張の味をなくしたくない」と名乗りを上げます。現店主・沼直子さんの父親でした。父親に促されるままに、沼さんは4ヶ月間だけ弟子入りし、店を受け継ぐことになったのです。

▼36年間、店を守り続ける沼直子さん(71歳)
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

ぱんじゅうの材料は小麦粉と卵と砂糖と水。かつては中に入るあんこも手作りしていたそうですが、人手がなくなった今、あんこ屋さんに独自のレシピのものを作ってもらっているのだとか。

▼素朴な味わいのぱんじゅう
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

また、かつては炭鉱で働く人々が好んで食べたため、しっかりとした甘さで塩分も強めに作っていたそうですが、時代に合わせて少しずつ味も変え、今では塩分も甘さもずいぶん控えめに作っているようです。

▼十勝産の小豆を使用
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

逆に以前より分量を増やしているのが、卵。そのため、一口食べるとほんのり卵の風味を感じられ、優しくて素朴な味が広がります。

ちなみに取材時、ご近所さんらしいご婦人が「朝ごはん、食べてないのよ」と店を訪れ、5個購入してその場でポンポンポンッと3個食べ、「残りは持って帰るわ」と出ていきました。地元に根付いた老舗店の良さが、ふと垣間見られた瞬間でした。

ガス台も道具もずっと同じもの

▼店内にはテーブル席も
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

30年以上にわたってぱんじゅうを作り続けてきた沼さんですが、目下の悩みは商売道具の劣化だといいます。なんと、前店主から受け継いだものをずっとそのまま使い続けているというのです。

▼型の中に生地を流し込む
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

ぱんじゅうの特徴といえば、ぽっこりとしたドーム型。たこ焼きのように、専用の型の中に生地を流し込んで焼き上げるのですが、銅板でできたその型が、よく見るとひび割れてきている箇所があります。

▼沼さんと共に長年働いてきた銅板の型
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

銅板は、その下のガス台も含めてすべて特注のため、新しく作るには100万円以上もかかってしまうそう。そこで、なんとか修復しながら使ってきたということですが「私が先か、道具が先か、どちらが先にダメになるんだろうと思ってね」と、沼さんは苦笑いします。

跡継ぎもいないことから、沼さんの代で小倉屋ぱんぢゅう店は終わりなのだとか。「それでも、75歳までは頑張りたいと思っているんです」と、力強く語ってくれました。

▼美しいぱんじゅうたち
戦前から続く老舗の味―夕張名物「小倉屋ぱんじゅう」とは

この味が夕張から失われるのは残念ですが、道具の問題や跡継ぎの問題などを考えると「もっと続けてくださいよ!」と簡単に言うこともできないのが現状です。それでも、ぱんじゅうを手際よく作り上げていく沼さんの所作を眺めていると、問題のあれこれなんて忘れて見入ってしまいます。そうして完成するぱんじゅうの、美しくおいしそうなこと。

ぱんじゅう作りの様子は動画でも撮影させてもらったので、ぜひご覧ください。ただし、見たら食べたくなること必至ですよ。

【動画】小倉屋ぱんぢゅう店

小倉屋ぱんぢゅう店
所在地:北海道夕張市若菜10
電話:0123-56-5752
営業時間:10時~17時
定休日:不定休

筆者について

石簾マサ

石簾マサ

すべてのしがらみを捨て札幌で永住するぞ……と移住してきた50代のおっさんライター。札幌楽し~い。移住者が見た札幌の楽しさ・良さを伝えていければ……と思っております。【編集部専属ライター】