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北海道で綿を栽培し10年―広がりをみせる『北限の綿への挑戦』

編集部
Written by 編集部

北海道で綿を栽培し10年―広がりをみせる『北限の綿への挑戦』 【小樽市・札幌市・余市町】 北海道で綿が栽培できるの?と驚かれる方もいるかもしれない。もともと寒い冬がある北海道は綿の栽培には適さない地とされてきた。しかし、そんな北海道で10年にわたり綿を栽培することに挑戦してきた女性がいる。小樽市在住の日和和枝さんだ。日和さんの「北限の綿への挑戦」は広がりを見せ、その想いはいま、偶然出会った札幌市の若者・中脇まりやさんへと引き継がれようとしている。二人が目指すものとは。(写真:日和さん自宅で収穫する日和さんと中脇さん)

10年間の試行錯誤で身に付けた綿栽培のノウハウ

北海道で綿を栽培し10年―広がりをみせる『北限の綿への挑戦』 小樽市の50代の主婦・日和和枝さんは、2004年5月頃から小樽で綿の栽培を始めた。生花店を経営したことのある日和さんは、幼い頃に布団の綿入れの風景を見ていて思い入れがあったこと、綿花が登場するドラマの一シーンを見たことがきっかけとなり、小規模ながら綿の栽培を始めた。

当初はアメリカ綿を中心に栽培したが、南国でしか育たないこともあり、収量が少なかった。それで2年後にはアジア綿(和綿)を導入。現在3坪の敷地に、小樽で育った「おたる綿」を含め、合わせて100~150株を栽培している。

しかしそう簡単ではなかったと日和さんは話す。北海道での綿栽培に関する情報はほぼ皆無であり、日和さんは試行錯誤しながら独学で栽培の知識を身につけていった。北海道で綿を栽培する際に気をつけなければならない二大要素は「温度」と「湿度」。アブラムシがつかぬよう注意し、湿度は乾燥気味で52~55%、温度は38~42度でなければならないことがわかった。それでも北海道で栽培すると収量は少なめになってしまうという。

小樽から広がる綿栽培の輪

道内では他にも、小樽市のほか、札幌市、余市町、仁木町、和寒町でも綿は栽培されており、現時点での栽培北限地は和寒町とされる。同町の農業試験施設では収穫量が比較的多く、ハウス1つで約2kgを収穫している。これらはいずれも、日和さんが2010年以降募集しているコットニストによる広がりだ。

一方で、北海道での栽培には課題も多い。収穫量は少なく、温度設定をきめ細かく行わなければならず、冬の暖房費がかかる。コストと手間がかかるのが現実だ。それゆえか、日和さんが築いてきた「北限の綿への挑戦」を「本気で」引き継いでくれそうな人がなかなか見つからなかった。日和さん自身も、2013年中は体調を崩すことも多く、今後の綿栽培継続に不安があった。

そんな折、日和さんのもとに偶然にも一通のメールが届いた。迷惑メールボックスに入っていて、普段は削除するメール。しかしその内容に共感を得て返信をした。送り主は札幌市の中脇まりやさんだった。

「本気で」やりたい人との偶然の出会いはまさに「縁」

北海道で綿を栽培し10年―広がりをみせる『北限の綿への挑戦』 中脇まりやさんは、2013年に仲間と二人で「cocho × cocho」を立ち上げ、「アートえんにち」を中心とする子供向けワークショップを行っている。その企画でネタ探しをしているときに偶然見つけたのが、小樽市内で綿栽培を手掛ける日和和枝さんだった。中脇さんは、北海道では極めて珍しい綿栽培がどのように行われているのか興味を持った。そこで、2013年夏に日和さんにメールを送り、北海道大学農学院生の学生・福澤萌さんと二人で日和さんのもとを訪れた。その場は専門的な話で盛り上がりをみせたという。

このとき日和さんは、やってきた二人に「本気でやる真剣さ」を感じたという。「『本気でやる気ある?』そう聞くと、『あります』という返事。引き継いでくれそうな人がやっと見つかり嬉しかった。肩の荷が下りた」と日和さんは話す。こうして中脇さんと日和さんは協力関係を結ぶことが決まった。

綿栽培を知ってもらい、生産と消費の距離を近づけたい

中脇さんは、この偶然の出会いを通じて綿への認識を深めてほしいと考え始めた。綿を知っているかどうか周りに尋ねると、ポプラの白い綿や蚕と勘違いされている現状を目の当たりにした。そこで、生産の現場を知ってもらい、生産と消費の距離を近づけたいという考えを持った。

これには、大自然が映し出されるドラマ「北の国から」に感化されたことや、東日本大震災後に札幌に避難してきた人たちが食べ物に気を付けていることを目にし、天然ものを身近に感じてほしいと思っていたことも少なからず影響しているという。「大量消費に逆行してもいいんじゃないか」。中脇さんはそう話す。

共通の目標は「北海道産の綿で製品化」

北海道で綿を栽培し10年―広がりをみせる『北限の綿への挑戦』 そこで中脇さんは、まずは綿の栽培を手掛けることから始めることにした。栽培する土地は、小樽市内の4坪、札幌市北区の2坪、余市町の15坪を確保。350株をオーガニック(無農薬)でハウス栽培する。(写真:余市町で測量を行った)

計画では、2014年3月中旬から道具を揃え、除雪作業と土おこし、ハウス建設を経て、5月の連休明けには種を植えて苗作りに励む。6月前には畑に移し、秋に収穫する予定で、日和さんも全面サポートする。収穫後は綿と種を離す作業を行い、企業とコラボして製品化・ブランド化を目指す。ちなみに、綿はそのままモノづくりに生かすか、紡いで布などを作る方法、種は油を搾って石鹸などを作る方法が考えられるといい、具体的な方法については今後模索する。

一方で、この「北限の綿栽培への挑戦」には費用がかかる。札幌から余市へ週2回程度通う交通費、種、栽培ハウス、苗を育てるためのポット、オーガニックのため土のほか鶏糞と石灰も必要となる。こうした資金を調達するため、2013年12月26日にクラウドファンディングで資金提供を呼びかけた。3月までの90日間で50万円の調達を目標にしており、それ以外の諸経費は自費で賄う。

日和さんは今後についてこう話す。『わたしの本当の目標は、収穫して製品化だったから、中脇さんたちとつながりができて嬉しい。できたら最初にタオルを作りたい』。日和さんが北限の綿を栽培し始めて10年。二人が目指す「北海道産の綿で製品化」は、この春 本格的にスタートしようとしている。

資金提供はクラウドファンディング「READYFOR?」で2014年3月26日まで受付中
北限への挑戦!収穫不可能と言われた綿を北海道で栽培したい!

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