学ぶ

戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

編集部
Written by 編集部

戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

北海道の宗谷岬の北43㎞にあるサハリン(旧樺太)。戦前は日本領だった樺太南部には、今も日本領時代の廃墟が幾つも残されているという。中でも巨大な製紙工場跡は7箇所確認されており、これらの廃墟を撮影し収録した写真集が、戦後70年に合わせて2015年8月に出版された。撮影した女性カメラマン・那部亜弓さんに、現地の様子などを聞いた。

最大の恵須取工場をはじめ7箇所の王子製紙工場跡を確認

那部さんは1983年千葉県生まれ。2005年頃に廃墟に興味を持ち、国内の廃墟巡りを始めた。2007年に八画株式会社社長からサハリンの工場廃墟は素晴らしいと聞き、2009年9月にサハリンに向かった。とりわけ情報がまったくなくほとんど出向いた人がいない恵須取地区は、アクセスが悪く悪路で、4WDの車を借り州都から8時間かけて訪れた。中には野犬に追われながらの撮影もあったという。

戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所 戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

王子製紙工場はかつて樺太に9箇所存在していたが、廃墟が確認されたのは7箇所。中でも恵須取工場は最も規模が大きい(生産量を誇る)工場だった。そのほかに銀行、博物館、炭鉱跡、鉄橋、重油発電所、セメント工場、記念碑やトーチカなどの戦争遺構、4箇所の神社を確認している。鉄道線路は完全に転用されていた。

▼最大規模を誇った恵須取工場跡(冒頭写真も同工場)
戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

確認された7箇所の王子製紙工場跡
王子製紙恵須取工場(現・ウグレゴルスク)
樺太最大の生産力を誇った工場は荒れ果てた水平に浮かぶ巨大遺跡。
王子製紙知取工場(現・マカロフ)
敷地は他地区の王子製紙工場より広大でローマ遺跡と錯覚するような巨大空間。
王子製紙敷香工場(現・ポロナイスク)
古きコンクリートに建物が高密度に林立し軍艦島を連想させる。
王子製紙真岡工場(現・ホルムスク)
巨大な抄紙機の跡が存在するなど設備投資のしっかりした印象の工場。
王子製紙落合工場(現・ドリンスク)
ロシア語の紙束や共産圏らしい鮮やかな模様のタイルが残され転用された事実を感じた工場。
王子製紙豊原工場(現・ユジノサハリンスク)
大部分が現地の機械修理工場として今も操業。高さ65mの製薬塔は街のシンボル。
王子製紙大泊工場(現・コルサコフ)
小さいながら樺太では最も古い工場で、市街地と海を一望できる風光明媚な場所に立地。

▼真岡工場跡
戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

▼知取工場跡
戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

▼街のシンボル、豊原工場製薬塔
戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

▼落合工場跡
戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

当時の木造建造物は旧ソ連に焼き払われたり経年劣化で壊されたりしたため、今も残るのは巨大工場跡くらいだという。大日本帝国の産業技術のシンボルとされながら、敗戦後 旧ソ連に接収され、技術投資されることもないまま廃れ放棄されてしまった工場跡を自分の目で見て、見応えを感じたという。

貴重な歴史遺産を記録した写真集に絶賛の声

那部さんは2015年8月、サハリン旅行で撮影した写真のうち約100枚を収めた写真集『知られざる日本遺産~日本統治時代のサハリン廃墟巡礼~八画文化会館叢書vol.3』を八画出版部から出版した。

出版後には日本サハリン協会をはじめ多方面から「貴重な写真集」「大日本帝国がリアルに存在したことを実感できる記憶遺産として大きな価値がある」といった絶賛の声が相次いだ。稼働していたころの工場を知る樺太引き揚げ者は「恵須取工場の変わり果てた見るも無残な姿を見せてもらい、なんともいえない気持ちになりました」と感想を寄せた。

また、「戦後70年経ってもこれだけ日本統治時代の遺物が残っているとは知らなかった」「70年という時の非情を思い知った」という声のほか、サハリンを訪れた経験のある人からは「ここを旅するのが大変なことも知っているので、こんな本を出していただいてありがたい」との感謝の声が寄せられた。

戦後70年たった今もサハリンに残る 日本領時代の製紙工場跡7箇所

那部さんは、「北海道にはサハリンに住まわれていた方とそのご家族が多くいらっしゃるので、そういった方に手に取っていただきたい。貴重な当時のお話をこれからも掘り下げていきたいので、ご存命の方がいらっしゃれば情報提供をお願いしたい」と呼びかけている。同写真集の購入はこちらから。

筆者について

編集部

編集部

北海道ファンマガジン編集部。編集部スタッフが取材執筆した記事や、名前を出さないライターの記事、寄稿記事の掲載の際にもこのアカウントが使われます。