アートや文化を発信!歴史的建造物を改装し誕生したニセコ中央倉庫群

2016年7月16日、ニセコ町にアートや文化を発信する施設が誕生しました。 と言いましても、新築の現代風の建物ではなく、昔から使われていた倉庫を改装したものです。

「1号倉庫」、「2号倉庫」、「12号倉庫」、「13号倉庫」、「肥料新倉庫」、「旧でんぷん工場」、隣接する「広場」等をまとめて「ニセコ中央倉庫群」と呼ぶようですが、どのような施設なのでしょうか。館長の向田薫(むかいだ かおる)さんにお話を伺いました。

▼ニセコ中央倉庫群 館長の向田薫さん

ニセコ中央倉庫群とは

JRニセコ駅の目の前に並ぶ倉庫群は、大正から昭和にかけて、羊蹄山麓で獲れる農産物の集積場として建てられたもの。現在まで残るのは、1931年(昭和6年)に建てられた石造倉庫の「1号倉庫」、「2号倉庫」と、昭和40年代に建てられた「旧でんぷん工場」、「12号倉庫」、「13号倉庫」、1982年(昭和57年)に建てられた「肥料新倉庫」の6棟です。

石造倉庫は2013年(平成25年)まで、ようてい農業協同組合の倉庫として使われていましたが、新しい倉庫へ移転することに。そのため、これら倉庫群を歴史的な建造物としての保存と地域活性化の拠点として再利用することになりました。

▼昔の中央倉庫群(年代不明)(提供:ニセコ中央倉庫群)

▼倉庫前に並んだ馬たち(1930~1931年頃)(提供:ニセコ中央倉庫群)

芸術、文化活動への意識向上と交流

ニセコ中央倉庫群のうち「2号倉庫」、「12号倉庫」、「13号倉庫」、「肥料新倉庫」は、民間事業者への再利用計画公募により、それぞれ使用する民間事業者が決まり、交流スペース、事務所、倉庫などに使用されることになりました。

「旧でんぷん工場」と「1号倉庫」については、ニセコ駅前温泉「綺羅乃湯」に隣接する立地を活かし、地域住民や観光客が集い賑わう交流の場にできないかと検討。 住民アンケートや、2011年(平成23年)から2014年(平成26年)にわたる「ニセコ倉庫邑」イベントでの来場者アンケート等をもとに活用法を検討した結果、ニセコと言えばアウトドアが注目されて町との関わりも深くなってきているように、芸術や文化も同じく意識を高めていく場にする方向で決まりました。

例えば、旬の野菜販売や料理教室など食文化に関するイベント、コンサート、ライブ等の音楽イベントや練習、写真、絵画、彫刻などの展示や販売、映画や演劇の上映などなど、様々な活動できる場所としての倉庫再利用となったようです。

▼旧でんぷん工場

▼石造倉庫

屋内交流空間になった旧でんぷん工場

旧でんぷん工場が廃業する際、撤去できずに残されていた機械があり、産業遺産として後世にその歴史を伝える意味でも、その機械をオブジェとして残す形で建物を改装。木造の屋根裏に綺麗に並ぶトラスの間に、でんぷん工場で使われていた大きな「篩(ふるい)」や、それに連動して動く滑車等が当時のまま残されています。

施設内には模型があり、実際にはどのように使われていたのか知ることができ、昔の巧みな仕掛けに関心するとともに、その知恵と作りは大変勉強になります。

▼天井に設置されている篩(ふるい)、らせん、滑車

▼模型で詳しい構造や動きを知る事ことができます

施設内は大きな空間の屋内交流空間をはじめ、事務所やトイレ、給湯室、二階には創作活動室、作業室があります。普段、屋内交流空間にはテーブルが設置されており、邑(むら)カフェとして営業されていますが、打ち合わせや会議に使ってもよし、お弁当を持ってきて休憩してもよし、仕事や勉強に使ってもよし、待ち合わせに使ってもよしと、基本は誰でも気軽に利用出来る空間となっているようです。

▼作業室と創作活動室

邑カフェでは、「ニセコサイダー(380円)」や日本酒の「蔵人衆(700円)」などのセレクトメニュー、各種ソフトドリンク(300円)やお酒(500円)、季節によって変わる手作りの「おつまみ(250円~)」が楽しめます。

また、限定10食ほどの邑カフェランチ(800円)も。旧でんぷん工場にちなんでジャガイモを使用した一品が常に入るランチで、彩り豊かでお勧めです。邑カフェランチは予約も可能で、人数が10人以上でも数日前から予約しておけば用意できるとのことです。

この屋内交流空間は、団体でも個人でも様々なイベントを行うことも可能。創作作品の展示、販売や、トークショー、お酒を飲みながらのライブイベント、食事をしながらの映画鑑賞など他ではなかなか出来ないような催しも、ここでは柔軟に対応していただけます。普段から何か楽しい事をしたいと考えている人はもとより、考えた事がない人もなにか出来ないものかと、つい考えてしまう魅力的なスペースです。

また、二階には創作活動室、作業室、2つの小さなスペースもあり、参加人数や内容によって使うスペースを選べるのも嬉しいですね。

映画上映や演劇上演も可能―1号倉庫

1号倉庫内は何もない大きなスペースですが、映像を楽しめるようプロジェクター、スクリーン、スピーカーが設置されるようです。椅子などを並べて映画上映などに使えるスペースですが、ここも考えようによっていろいろ使えそうです。

以前、映画上映イベントで使用されており、今後は、映画上映はもちろん、ダンスや体操の教室のような使い方もしていただきたいとのこと。大きな荷物搬入口もありますので、スケートのランプを設置したり、ステージを設置して演劇上演も可能です。 ここもいろいろと企画を考えるのが楽しくなる空間です。

広場はイベントスペースに

倉庫群の裏手にはサッカー場を少し細くしたような大きさの広場があります。 以前、夏に行われた倉庫邑イベントでは、出店のほかライブイベントが行われたようで、季節感あふれる自然を感じることができます。

倉庫群という名前から、屋内での催しばかり考えてしまいますが、野外でのイベントまでも行えるなんて他ではなかなかないのではないでしょうか。場合によっては映画なんかのロケ地にもなり得るかもしれませんね。

新たな創造が生まれるきっかけに

向田さんは、このような施設を有効に利用して、特に次世代を担う子供達に様々な芸術や文化に触れて欲しいと話します。確かに、触れることのできる文化、芸術、スポーツ等は暮らす地域によって違いがあるでしょうし、触れる機会も大きく違うでしょう。少しでも様々なものに多く触れて欲しいものです。

一通り見学し、お話を伺って、とても魅力に溢れ無限の可能性を感じる施設だと感じました。このような施設が存在するだけで、自分の表現したいことをどのようにして世に発信するかの方法を学べますし、様々なものに触れることによって、新たな創造が生まれるきっかけになると思います。

また、温泉施設に隣接した立地で、お酒も提供出来る施設ですので、遠方の人も行きやすくなりますし、イベントの幅も広がりPRもより広範囲にできるでしょう。今後どのようなイベントが開催されるか、ワクワクさせる施設です。

ニセコ中央倉庫群を使用するには?

ところで、このニセコ中央倉庫群は誰でも使うことができるのでしょうか。使うにはどうすればよいのでしょうか。 これらの施設は、どなたでも利用可能とのことですが、スケジュール調整があるので、早い段階でニセコ中央倉庫群事務局へお問い合わせくださいとのことです。また、以下のとおり「ニセコ中央倉庫群ファンクラブ」へ入会することで、施設の使用料が割安となります。どなたでも入会可能ですので、定期的なイベントなど考えている方は検討してみてはいかがでしょうか。

ニセコ中央倉庫群ファンクラブ会員区分
正会員:年会費3,000円 期間4月~翌年3月末日
子ども会員:年会費500円 期間4月~翌年3月末日
団体会員:年会費30,000円 期間4月~翌年3月末日
サポート個人会員:年会費1,000円 期間 随時
サポート団体会員:年会費5,000円 期間 随時
(その他詳しくは、ニセコ中央倉庫群事務局へお問い合わせください)

ニセコ中央倉庫群
所在地:北海道虻田郡ニセコ町字中央通60-2
TEL:0136-55-5538
営業時間:9:00~22:00
定休日:火曜日(※イベント等により変更もありますので、詳しくはお問い合わせ下さい)
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