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北斗市に保存の寝台特急「北斗星」 公開から2ヵ月経った現在の状況は

佐々木康弘
Written by 佐々木康弘

北斗市に保存の寝台特急「北斗星」 公開から2ヵ月経った現在の状況は

北海道新幹線新函館北斗駅がある北斗市にこの夏、2015年に廃止された寝台特急「北斗星」の客車2両が保存のために移設されました。8月7日以降、毎週日曜日に内部を公開してきましたが、今年は11月3日で公開を終了するとのことで、公開終了を前に内部を見学してきました。

寝台特急「北斗星」とは

「北斗星」は1988年3月、青函トンネルの開通とともに運行を開始した寝台特急。客車11両と電源車1両の12両編成を電気機関車・ディーゼル機関車で牽引し、上野~札幌間を16時間以上かけて走行しました。

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しかしながら、客車の老朽化や、北海道新幹線開業に向けた各種準備のために青函トンネルで夜間帯の作業時間を確保する必要が生じたことなど複数の要因が重なり、北海道新幹線開業約1年前の2015年3月で定期列車としての運行を終了。同年8月22日札幌発の便を最後に臨時列車としての運行も終了となり、27年間の歴史に幕を下ろしました。

70年代を中心に多くの人々にとってあこがれの存在であった「ブルートレイン」そのものが北斗星の廃止と同時に姿を消したという意味でも、これは日本の鉄道史の中で大きな出来事でした。

北斗市での「北斗星」保存のいきさつ

役目を終えた鉄道車両のほとんどは、鉄として再利用するために解体されます。北斗星の客車も同じ運命にありましたが、これを北斗星が実際に走った沿線に保存設置して地域活性化に活用したいと考えた北斗市の市民有志が、「北斗の星に願いをプロジェクト推進委員会」を結成。今年4月、客車1両の移設と設置などにかかる1,000万円を集めるクラウドファンディングを開始しました。

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その結果、全国から寄付が寄せられ、開始2週間あまりで目標の1,000万円を達成。最終的には1,588万5,000円が集まり、客車2両の保存が可能となりました。JR北海道から無償譲渡された客車2両は現在、北斗市の茂辺地中学校跡地(茂辺地体育センター)に設置・保存されています。

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▼北斗星設置場所のすぐ裏は、サケが遡上することで知られる茂辺地川
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寝台特急の構造がよくわかる2両の客車

北斗市に保存されることになった客車2両は、ロビー室とB寝台ソロ(1人用個室)からなる「スハネ25形501」と、2段ベッド2組が向かい合った形式の開放式B寝台「オハネフ25形2」。見学者はロビー室のある「スハネ25形501」から入ることになります。

▼スハネ25形501
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▼オハネフ25形2
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入るといきなり狭い通路があり、そこを抜けるとロビー室。ロビー室の手前にはシャワー室が2つあります。ロビー室からは、すぐそばを流れる茂辺地川沿いの緑を眺めることができます。

▼細い通路を通ってロビー室へ
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▼シャワー室
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▼ロビー室
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ロビー室を抜けると、1人用B寝台。隣り合った2つのドアの片方が上段、もう片方が下段となっており、上段へは階段で上っていくようになっています。

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▼下段と上段
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さらに奥へと進んでいくと、2両目の開放式B寝台「オハネフ25形2」になります。開放式とは、個室になっていないオープンなベッドであるという意味。ただし北斗星には、2段ベッド2組の4ベッドを1ブロックとして鍵付きのガラス扉を取り付け、簡易的な個室とした車両がありました。北斗市に保存されている開放式B寝台車両はこのタイプになります。

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開放式B寝台車両は一見すると広々としていて居心地も悪くないのですが、上段に行こうとするとなかなか大変。ハシゴはほぼ垂直で上りにくく、ハシゴからベッドに移るのも容易ではありません。ただ、この4人1組となる開放式B寝台こそが寝台列車の醍醐味だったと語る乗り鉄も少なくありません。見知らぬ者同士が同じ場所で寝泊まりし、互いに意気投合して大いに盛り上がる。そんな旅の光景は、飛行機や新幹線では二度と生まれないのかもしれません。

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▼踏み台、懐かしの栓抜きと灰皿
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▼車掌室と車掌室に貼られていた紙
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つい最近まで走っていた車両でありながら、古き良き時代の「鉄旅」の雰囲気をそのままに伝えてくれる北斗星。一方で、屋根や車体側面の傷みは激しく、塗装の劣化だけではなく車体自体が腐食している様子も見られます。

また、車両を展示するために造成した盛り土の一部が雨水によって早くも崩れ、その部分からバラストと呼ばれる砕石が崩れ出している様子も。塗装の補修・塗り替えや上屋の設置など、車両の劣化を食い止める手だてを早く打たなければ、それほど遠くない将来にボロボロになってしまいそうな危惧はぬぐえません。

▼腐食の激しい屋根や外装
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最近の新聞報道によれば、2017年度から2両のうちの1両でカフェ営業を開始し、周囲にコンテナを設置して魚介類や野菜などを販売するマルシェを実施する計画があるとのこと。多くの人の思いによって保存がかなった北斗星を、今度は末長く活用していくための奮闘が始まります。

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保存場所:北斗市茂辺地3丁目3-16
北斗の星に願いをプロジェクト
http://www.hokuto-star.jp/

筆者について

佐々木康弘

佐々木康弘

札幌市北区新琴似出身。30歳で函館に移住してからふとしたきっかけでライターの道へ進み、旅行情報誌やネット媒体などを中心に年間70万字以上を執筆。道南地域で毎年100本以上のイベントに足を運ぶイベントウオッチャーとしても活動。【Sクラス認定ライター】