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五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

佐々木康弘
Written by 佐々木康弘

五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

函館を代表する景色のひとつ、五稜郭。そのすぐ近くに、五稜郭を模した鍋でジンギスカンを食べられる店があります。しかも、オーナー自らその鍋を作ったとか。さっそく、どんな店なのかご紹介しましょう。

ほとんど煙が出ない五稜郭型ジンギスカン鍋の秘密

店の名前は「ジンギスカン 陣 Zin」。店内の飾り棚には、五稜郭型の鉄鍋が函館圏の優良な土産品を選ぶ品評会で最高賞を獲得したことを証する賞状があります。実はこの店、鋳造用木型職人の上野山隆一さんが自らデザイン・造形を手がけた鉄鍋でジンギスカンを食べさせるという、全国的にも珍しい店なのです。

▼五稜郭型のジンギスカン鍋と賞状
五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

「木型職人」という耳慣れない言葉が出てきましたが、まずはさっそくジンギスカンを焼きましょう。お肉は、肩ロース(700円)・スライス(600円)・丸ラム(500円)の3種類。3種類盛り合わせもあります(1,000円)。重厚感のある五稜郭型鉄鍋に肉と野菜を載せて焼き始めると、意外にもほとんど煙が出ないことに気付きます。

五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

「鋳鉄の遠赤外線効果でお肉の内側から火が通るので、焦げが少なく煙が出にくいんですよ」と上野山さん。お肉がふっくら焼けるという効果もあるそうです。

焼けたお肉は表面の水分が保たれ、柔らかくておいしそう。同店を預かる柴田夕子店長が祖母の味の記憶をもとに考案したというオリジナルのタレにつけて食べると、肉のうまさとともにさっぱりした味わいが広がります。味の秘密は、すりおろしたリンゴと玉ネギを加えていること。リンゴの酸味がさりげなく利いていて、飽きずに食べられると好評です。

五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」
五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

地元の精肉店が厳選したというお肉は、肉を食べていると実感できるほど良い歯ごたえと柔らかさがあり、ラム肉のおいしさが存分に味わえます。クセやくどさがなく、いくらでも食べられそう。野菜はなるべく北海道産を使用し、時期によっては函館市内の農場で採れたものが入ることも。新鮮な野菜ならではの甘みとシャキシャキした食感が肉のうまさを引き立てます。秋にはタレに加えるリンゴも函館産になるとか。鍋を自作したというのを別にしても、ジンギスカン店としてなかなかのレベルの高さです。

五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

出店の理由は「鍋を使って欲しいから」

さてここで、オーナーの上野山さんについてあらためてご紹介しましょう。上野山さんは、鋳物の型を作る職人さん。工業品や機械のメーカーなどから注文を受け、完成品と同じ大きさのモデル(木型)を作るのがおもな仕事。発注者は上野山さんが作った木型をもとに鋳物の型を作り、鋳鉄製品を量産します。普段は機械の部品の注文などが多く、図面をもとに木を切ったり削ったりして正確な形を仕上げていきます。

▼函館唯一の木型職人・上野山隆一さん
五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

そんな上野山さんの悩みは、「木型職人」という職業の知名度が低く、業界全体でも後継者が不足していること。そこで、「こんなものを作っている」と人に説明する際の見本として、ジンギスカン鍋の木型を作ってみることにしました。ジンギスカン鍋なら道民にとって身近な鋳物なので、仕事をイメージしやすいだろうとの理由です。それがこの五稜郭型のジンギスカン鍋。当初は見本として制作しただけでしたが、「土産品として販売してはどうか」との人の勧めに従って商品化。その後、冒頭で触れた賞を受賞しました。

▼上野山さんが作ったジンギスカン鍋の木型。これをもとに函館市内の鉄工所で鋳造している
五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」
五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

おかげで全国から注文が舞い込むようになり、喜んでいた上野山さんですが、ある時衝撃の事実を知ります。それは、ジンギスカン鍋を買ってくれた人の9割以上が「一度も使っていない」あるいは「飾っている」という現実です。実用品なのだから、ぜひ実際に使って良さを体感して欲しい。でも確かに、住宅事情などで自宅で使うのは難しいのかもしれない。そう考えを巡らせ、どうせなら自分で店を開くのが一番ではと一念発起し、2016年4月に店を開いたというわけです。

五稜郭型の鍋はなんと店主の自作!函館市「ジンギスカン 陣 Zin」

五稜郭型の鍋の重さは約4kg。これは通常市販されているジンギスカン鍋の1.6倍ほどあり、見た目以上にずっしりと重く感じます。この重さの違いは、鉄の厚みと品質の違いから生まれます。上野山さんによれば、鉄の純度が高く、鍋に厚みがあることによって蓄熱効果が高まり、小さい火力でも肉をじんわりと中から焼く効果が生まれるのだとか。いかに肉をおいしく焼くかにこだわって作られたジンギスカン鍋なのです。「遠方の方も、函館に来たらぜひ五稜郭で五稜郭型の鍋でジンギスカンを食べていただきたいですね」と上野山さん。なかなかの人気店なので、来店の際は電話での予約や問い合わせをするのが確実です。

ジンギスカン 陣 Zin
所在地:函館市五稜郭町30-3
営業時間:11:00~14:30、17:00~22:00 ラストオーダー各30分前
定休日:水曜
TEL:0138-31-0688
駐車場 2台

筆者について

佐々木康弘

佐々木康弘

札幌市北区新琴似出身。30歳で函館に移住してからふとしたきっかけでライターの道へ進み、旅行情報誌やネット媒体などを中心に年間70万字以上を執筆。道南地域で毎年100本以上のイベントに足を運ぶイベントウオッチャーとしても活動。【Sクラス認定ライター】