生キャラメルでブーム!中札内村「花畑牧場」とは?

株式会社花畑牧場。それは北海道十勝・中札内村の平原の真ん中に開設されている牧場です。1992年5月7日に会社が設立され、1995年に牧場がオープンしました。代表取締役社長で経営者はタレントの田中義剛氏。社長自身は、タレント業務と農業経営を兼務するという「半農半芸」というシステムを採用。

花畑牧場開設への紆余曲折

なぜタレントがこの北海道に、しかも十勝、中札内村に牧場を構えることになったのでしょうか。そもそも田中社長は青森県出身です。しかし、大学は江別市の酪農学園大学を卒業しました。そう、牧場を持つことが夢だったのです。それも、農協などの流通システムを排除した自作・自前販売をモットーにしています。

1994年ごろに所属事務所の借金や銀行融資で23ヘクタールの農地を購入、花畑牧場を開設しました。中札内村を選んだのは、空港の近さ。とかち帯広空港が近くに立地しており、本州との行き来も良好である、というわけです。名前の由来は当初は花と牧場を結び付けたかったから。

開設当初はジャージー種の牛一頭だけだったという花畑牧場。従業員30人で、生産していたのはチーズでしたが、多くは返品されました。赤字も膨らみ、開設当初からの借金や融資合計は約四億円、社員も社長含め2人になり、一時は自己破産寸前まで追い込まれたこともあるんだとか。

大ヒット商品開発、生キャラメル誕生

しかし、その後ヒット商品を生み出していくことになりました。まずは「トムチーズ」がラーメンのトッピングに使われてヒット、ひょうたん型のチーズ「カチョカヴァロ」がヒット、そして極めつけは2007年4月に発売した「生キャラメル」でした。

この生キャラメルは大ヒットどころか、全国に生キャラメルブームを巻き起こしました。手造りながら1日4万箱を製造しており、現在(2008年ごろ)では社員150名、従業員1500人、年商120億円(2007年で約20億円でした)にまで急成長しました。

これに伴い、花畑牧場も観光地として大ブレイクしました。2008年度上半期で前年同期の15倍の訪問者があったとしています。付近は田園地帯ですが、駐車場までの道路は大渋滞、さらに花畑牧場効果として、近くの「道の駅なかさつない」は2008年度訪問者が前年比12.4%を突破し、幸福駅も訪問者が26.1%増加しています。

敷地内には、観光地として「花畑牧場ショップ」「花畑牧場カフェ」「生キャラメル工房」「チーズ工房」「ホエー豚亭」「ファームランド」の各施設があります。また、東京ドーム5個分という23ヘクタールの広大な敷地には、「田中義剛邸」「ビニールハウス養豚場」「チーズ熟成庫」があり、関係者以外立ち入り禁止です。

中札内本社だけでなく、道内各地や首都圏にショップをオープンさせ、財政再建団体夕張市応援の意味を兼ねて夕張市にも工場と直営ショップをオープンさせました。

花畑牧場の主な歴史

1992年5月7日 株式会社花畑牧場設立
1995年 花畑牧場オープン
2007年3月 生キャラメル製造開始
2007年4月 生キャラメル販売開始
2007年6月 石屋製菓白い恋人不正発覚による撤去空きスペースにて、新千歳空港BlueSkyで生キャラメル販売スタート
2008年6月 楽天市場でインターネット販売開始
2008年7月1日 札幌市の株式会社見方の工場でも生産開始
2008年8月1日 ホエー豚亭オープン
2008年9月20日 花畑牧場カフェ新千歳空港店オープン
2008年10月24日 花畑牧場生キャラメルと偽った商品「花ばたけぼくじょうの生キャラメ」からメラミン検出事件
2008年11月 Yahooショッピングでインターネット販売開始
2009年1月24日 オフィシャルサイトでインターネット販売開始、生キャラメル〜New Type〜発売
2009年1月31日 札幌・大通店オープン
2009年2月1日 札幌・アピア店オープン
2009年2月5日 東京・青山に「ホエー豚亭」オープン
2009年3月2日 バナナ味の生キャラメル発売
2009年4月8日 東京・南青山に花畑牧場カフェオープン
2009年4月18日 函館店オープン
2009年4月20日 夕張市・石炭の歴史村に工場オープン
2009年4月24日 花畑牧場カフェ大通店オープン
2009年4月25日 宮崎マンゴー味発売
2009年4月28日 小樽店、夕張市直営ショップがオープンし夕張メロン味発売
2009年6月3日 道が生キャラメル第1工房、第2工房、レストラン「ホエー豚亭」の建築基準法違反是正指導
2009年6月4日 東京・銀座・渋谷・原宿の竹下通り同時3店舗オープン

では、施設の紹介をいたしましょう。

花畑牧場生キャラメル工房

花畑牧場の看板商品で大ヒット商品「生キャラメル」。その製造過程の一部を見ることができるのがここです。1枚のガラス越しに一生懸命混ぜているスタッフを見ることができます。が、スタッフと対面する形になるだけでなく、距離も近いので、気まずい雰囲気が……。

生キャラメル工房の壁には案内板が書かれています。以下がその内容です。1回あたりにできる個数も少なく、手造りで大変ですが、手造りであるのには理由があったわけです。

生キャラメルは、小さな銅鍋でコトコトと煮詰めて作ります。大きな鍋を使ってしまうと、味も食感も変わり、別の製品になってしまいます。
この銅鍋で、火を点けて、牛乳がコトコトと煮詰まり、色が変化しとろみがついてきます。最終的にキャラメルになるまで、約45分間ひたすら煮詰めます。後半はへらの動きを止めることはできません。そして、火加減の微妙な調節が最も大切です。少しの火加減の間違いで、製品にならないことも少なくありません。ここに職人の「技」があります。
そして、やっと出来上がったキャラメルは、銅鍋1つからたったの40個程度。手造りだからこそ出せる味ですが、手造りのために生産量は限られてしまいます。

この横、花畑牧場カフェ側には、「花畑牧場駅」があります。木造の小さな小屋ですが、ここは幸福駅のように、内部にはメッセージを書き貼り付けることができるようになっています。鈴も設置されています。

花畑牧場チーズ工房

カチョカヴァロなど花畑牧場製造のチーズはここで作られています。ガラス越しにチーズの製造過程を順番に見て行けます。3つのゾーンがあり、1つ目はカードと呼ばれる元を練り上げて、引きちぎって重さではかり、ひもでくくります。2つ目はカード製造、そして3つ目がひもでくくり吊り下げられたチーズの熟成室です。

案内版No1
花畑牧場のチーズはすべて手造りです。
牛乳から作られる「カード」と呼ばれるチーズの元に、熱湯をかけ、モチ状に練り上げます。
モッツァレラチーズは、その状態から手で引きちぎって出来るチーズです。
モッツァレラとはイタリア語で「引きちぎる」という意味です。
カチョカヴァロはイタリア語で「馬の鞍」という意味です。
モチ状になったカードを丸めて、ひもでくくります。
それを2個ずつ縛り、棒に吊して熟成させます。
その姿が馬の鞍に似ていることからこの名が付きました。
奥の方で型に詰められているのは、トムチーズです。
トムとは、フランス語で「山の小さなチーズ」という意味です。
ここで作られる花畑牧場の手造りチーズをぜひ味わってくださいませ。
ここで造られるチーズ:カチョカヴァロ、トムチーズ、モッツァレラ、マスカルボーネ

チーズ製造 生乳~カード
チーズ製造は、生乳を固めるカード製造というところからはじまります。
チーズの種類により、カードの作り方も異なり、花畑牧場ではカチョカヴァロとトムチーズを作っており、これらのカードも製造方法が異なります。
生乳に乳酸菌とレンネットを入れて、カード(凝固物)とホエー(水分)に分けられます。
このカードが全てのチーズの元になり、ホエーは養豚で消費され、ホエー豚となります。カードは生乳の約1割しか出来ません。残りはすべてホエーになります。
そのため、チーズは生乳の栄養が凝縮して、ぎっしり詰まった栄養価の高い食べ物なのです。

カチョカヴァロ熟成室
カチョカヴァロは、短期熟成タイプのイタリア生まれのチーズです。
この熟成方法に特徴があり、2個を紐で縛り、吊り下げて熟成します。
このかたちが馬の鞍に似ていることから、イタリア語でカチョ(チーズ)、カヴァロ(馬)=馬のチーズと呼ばれる由来になりました。
多数のカチョカヴァロが熟成庫の中で吊り下げられている景観はまさに圧巻です。
カチョカヴァロは、熱湯で練られて、形をつくると、熟成室で約10日から2週間程度熟成されます。ここでカチョカヴァロの持つ、うま味やコクが増していきます。熟成室は温度と湿度の管理をしっかりすることで、よりよいカチョカヴァロに熟成していきます。
カチョカヴァロは焼いて食べるチーズです。表面はカリカリとして、中はもっちりの食感をお楽しみ下さい。

チーズ工房手前には牛の飼育場があります。また、ホエー豚の飼育スペースとして、ホエー豚の案内板があります。ホエー豚って何?次のように書かれていました。日本初の仕組みを導入したものだそうです。

花畑牧場のホエー豚
ブランド名:花畑牧場のホエー豚
品種:ケンボロー種(ケンボローとはイギリスのケンブリッジ大学。エジンバラ大学が、最高の肉質を作るために開発した品種です。

ホエー豚とは花畑牧場のチーズ工房から毎日出るチーズの絞り汁(ホエー)を飲んで育つ豚のことです。チーズは牛乳のわずか10%しかできません。花畑牧場では、毎日ホエーを豚1頭平均3L飲ませます。ホエーを飲んだ豚は健康に元気に育ちます。ホエーを飲むことによって、脂肪は甘く最高の肉質の豚になります。

イタリアパルマでは、パルマハムになる豚はホエーを飲んで育つというのが伝統的です。「ホエーを飲ませて最高の豚肉を作る」このパルマ式の飼育方法を花畑牧場は取り入れました。

「チーズ工房の隣で豚を飼う」。イタリアではあたりまえですが、日本では花畑牧場が初の試みです。花畑牧場では、奥の敷地内で1000頭以上の豚を飼育しています。ビニールハウスで豚を飼うという、エコな飼育方法。エコフィード(未利用資源」のエサを与え、最高の豚とつくり出します。

花畑牧場カフェ・ホエー豚亭

元ファーマーズハウスだった建物をリニューアルオープン。牧場の建物のような外観にレンガを敷き詰めた壁、そしてかわいらしいピンク色を基調とした店内は女の子に人気。店舗入り口にはカフェテーブルとチェアが置かれています。

そして、店内はバスのような雰囲気になっています。入口横にバス停を模した標識があり、店内に吊革があります。ショップ店員の女の子たちのユニフォームもピンクで、アルプスの少女ハイチをイメージしたもののようです。

このカフェで購入できるのは、アイスクリーム。おすすめは、「ホットキャラメル・アイスクリーム」。温かいホットソース(約20g)は生キャラメルクリームで、冷たい濃厚バニラアイスクリームにかけています。これを「アフォガート」(イタリアのアイスクリームに飲み物をかけて食べるデザート)といいます。持ち帰りできないのは言うまでもありません。480円です。

ほかに、「生キャラメル・アイスクリーム」という生キャラメルをアイスクリームにねり込んだアイスクリームがあります。1杯のアイスクリームに約20g(生キャラメル4~5粒)の生キャラメルを使っています。480円です。


「生キャラメル・ミルクカフェ」」は石釜まで丁寧に焙煎したコーヒーを使ったものです。ホットとアイスがあります。480円です。その他「花畑牧場ソフトクリーム」というコーンを使ったアイスクリームがあり、生キャラメルソフト(380円)、ミックスソフト(350円)、北海道ミルクソフト(300円)の3種類があります。

アイス関連商品のほかにはピザも販売しており、また人気の生キャラメルはここでも販売されています。

この花畑牧場カフェの隣、花畑牧場ショップとの間には、「ホエー豚亭」があります。ここでは、ホエー豚を使った「ホエー豚丼」「しゃぶしゃぶ」というメニューがあります。

花畑牧場ショップ

花畑牧場の商品を購入することができる販売所。赤い屋根のログハウス調の建物は、それ以前の建物の倍の面積を持つショップとして、2009年4月18日にオープンしました。内部は吹き抜けで開放的、牧場的な建物になっています。

販売されているのは名物の「生キャラメル」、そしてチーズ工房で製造されるカチョカヴァロなどのチーズ製品、乳製品、馬油、オーガニックマヌカハニーつまり蜂蜜です。

ファームランド

ファームランドは、花畑牧場入口近くにある動物たちの飼育スペースです。屋外に羊、馬、リャマ、ポニー、イヌなど、小さな動物たちがいっぱいです。いうなれば、ミニ動物園の感じです。木造ブランコなど遊具もあります。それでは、花畑牧場の中でも子供たちに人気の「ファームランド」の動物たちの写真をご覧ください。

リャマ
興奮するとツバを吐きますので注意してくださいね。

馬(ペルシュロン)
ポニーと一緒のおりです。大きい馬はペルシュロンといって、世界で最も大きい馬です。道内のばんえい競馬のばん馬としても使われます。名前は「チャンプ」。

ポニー
小さい馬。2頭いるんですが、大きなペルシュロンに寄り添うようにぴったりしていて、ほとんど動かない……。(まばたきだけ)

ひつじ
草をひたすら食べています。

その他


また、ここの広場ではファームショーなど動物のショーが行われます。午前は11:00~、午後は13:00~です。その時間になると人だかりができて、楽しいアニマルショーが繰り広げられます。内容としては、牛乳搾乳、シープドッグショー(牧羊犬のショー)、羊の毛刈りといったものがあります。

生キャラメル

花畑牧場を大ブレイクへ導いたのは、何といっても生キャラメルのおかげでしょう。この生キャラメルは2007年4月に当初北海道限定として発売しました。すべてが手造りで、中札内工場とは別に札幌工場でも製造協力していただいています。大ヒットのおかげで花畑牧場や直営ショップは長蛇の列や混雑が見られました。インターネット販売も注文が殺到。

花畑牧場の生キャラメルは、発売当初「プレーン味」が通常版でしたが、のちに「チョコ味」、「ホワイト味」、「抹茶味」、「いちご味」、「バナナ味」、「夕張メロン味」、「宮崎マンゴー味」が誕生しました。いずれもこの生キャラメルは口に含むととろけるような感触を楽しむことができます(噛む必要はありません)。12粒入りで850円。サイズの割に割高ですが、人気です。10度以下で保存します。

花畑牧場の生キャラメルは家庭でも比較的簡単に作ることができます。レシピはテレビに出演した牧場長田中義剛氏が公開しています。原材料は、生キャラメルのパッケージに書かれているものだけを使います。生クリーム、牛乳、水あめ、グラニュー糖、はちみつ、無糖バター、バニラビーンズです。

材料と分量

生クリーム 200cc
無塩バター 20g
牛乳 150cc
バニラビーンズ 1/5本
グラニュー糖 120g
蜂蜜 10g
水あめ 10g

作り方

※以下の方法によって失敗しても損害をこうむっても当方は一切責任を負いません^^
1.牛乳、バニラビーンズ、グラニュー糖、蜂蜜、水あめを入れた鍋を弱火にかける
2.グラニュー糖がとけたところで、生クリームと無塩バターも加える
3.焦げやすいので弱火で約25分間煮詰める(温度は110度が目安、ゆっくり混ぜる)
4.キャラメル色になった所でバターを内側に塗った型に流し入れる
5.冷凍庫で10~15分冷やす