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今回のインタビューは、釧路市阿寒町にある">太田幸さんにインタビュー – 北海道ファンマガジン [ファンマガ]
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太田幸さんにインタビュー

編集部
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今回のインタビューは、釧路市阿寒町にある阿寒国際ツルセンターで主任解説員を務める太田幸さん。タンチョウの素晴らしさを広めるべく幅広く活動しておられます。そんな太田さんにタンチョウの魅力を思う存分語っていただきました。(収録日:2010年7月24日付)

― 出身地はどちらですか?
 阿寒町出身です。若い頃はこの自然溢れる阿寒に物足りなさを感じていましたが、今となっては野生生物が集まる豊かな自然で気候も良く、家に篭って遊ぶのが勿体無いくらいに自然を満喫できる町だと誇りを持てるようになりました。これも歳のせいでしょうかね(笑)
 実は進学で一度地元を離れ、養護教諭の免許を取得しましたが狭き門の養護教諭は難しく、地元(釧路)に戻り畑違いのハウスメーカーやゼネコンに勤めました。その後、不景気による失業を機に、ワーキングホリデーを夢見て、父の経営する会社を手伝いながら準備を進めましたが、様々な事情により断念することに。しかし断念したことから私の人生が大きく変わったのでしょうね。自然を開発する仕事から一転、自然を愛する仕事への転換は想像できないでしょうが、逆にそれまでの経験を活かしながら上手に仕事を進められるようになったのです。

― 阿寒国際ツルセンター主任解説員ということですが、こちらではどのようなお仕事をなさっておられますか?このお仕事を始めるまでのいきさつなどお聞かせください。また、ツルセンターが阿寒地域で果たす役割について教えてください。
 私の仕事は主に、ご来館されたお客様へタンチョウについてレクチャー(ガイド)することですが、今では講演やメディアでの情報発信など、館外での活動も増えてきました。
 この仕事を始めるまでの経緯……実は「タンチョウに関わる仕事をしたい」と志願したものではありませんでした。阿寒国際ツルセンターが指定管理者制度の導入により、私の所属する阿寒商工協同組合が指定管理者として選ばれ、配属されたことから始まったのです。ですが元々動物好きということもあり、ましてや国の特別天然記念物を扱う仕事ですから、たくさんの勉強も苦にならず、逆に楽しく日々勉強をしていました。そこで私が感じる阿寒国際ツルセンターの役割とは、第一に地元の皆さんにタンチョウの素晴らしさ、そして、その素晴らしいタンチョウが私たちの住む阿寒に毎冬やってきてくれているのだということを理解して頂くことでしょうか。更にタンチョウが阿寒に飛来するようになった経緯、その当時の地元住民の苦労、それに対する感謝の心を忘れてはならないということを広めたいと思っております。

太田幸さんにインタビュー

― ご自身にとってタンチョウとはどのような存在ですか?小さい頃からタンチョウがお好きだったのでしょうか?
 幼少期から身近だったタンチョウは、身近すぎてその存在の価値を全く理解しておりませんでした。むしろ真冬のタンチョウ生息一斉調査など学校行事として寒い中、カウンターを持ってタンチョウの数をカウントするなど、大事な作業だとは知らずに嫌だなぁと思いながらやっていたほどです。小さい頃から動物全般が好きな子どもでした。特別タンチョウに思い入れは無かったにしろ、生き物が好きだというのは今の仕事にピッタリかもしれません。自分がそうだったように、多分このような感覚はこの地域の住民は同じなのだと思います。だからこそ今、自分の体験談を生かしながらその価値を知って頂き、もっとタンチョウを好きになって頂きたいという活動に繋がっているのでしょうね。

― タンチョウを含め、自然のハイクオリティな写真を毎日欠かさずブログに掲載し、多くのファンを集めています。どんな思い入れで更新していらっしゃいますか?
 インターネットに国境はありません。全世界の多くの人々との交流、そして情報交換できることが本当に楽しくて続けています。元々は阿寒国際ツルセンターとしてのブログでしたが、私があまりにも本音を書きすぎて批評の声もチラホラ出てきたので、私個人のブログとして今では自由な記事を作れるようになりました(笑)本来、タンチョウの飛来状況や阿寒へのご旅行を計画されている方々への情報提供というブログだったのが、今では日常の私の生活のブログ。逆にそうなったことによりファンの方が増えたのは事実ですけどね。でも全く無理はしていないんですよ。素の私を書いているだけです。文章を作るのに10分もかからないくらいに思いつくまま書いています。基本的に自分を無理に飾って表だけ良い格好をするのが好きではないので、時には辛口だったり、泣き言だったり、そんな記事もありますが、その度にファンの方々になぐさめてもらったり助言を頂いたりしています。もちろん批判されることも無くはありませんね。でも私は万人に好かれることはとても難しいことだと思っています。なので万人に好かれようとは思ってもいませんね(笑)アタシはアタシ。素のアタシでいられる場所がブログなのかもしれません。思ったことや体験したこと……旅行記なんかも載せていますが、やっぱり写真は多くを語らなくとも全てを伝えてくれるような大事な存在ですね。(ブログはこちら)

旅行の様子:ダイビング(写真上)、プーケットでゾウにエサ(写真下)
太田幸さんにインタビュー
太田幸さんにインタビュー

― 今年に入ってタンチョウの写真集「丹頂」を発刊されました。この本について教えて頂けますか?
 出版社の株式会社テックス様より「希少生物の写真集を作りたい」とオファを頂きました。その時「素晴らしい写真を撮られる写真家はたくさん知り合いにいるのでご紹介しますよ」という私の提案に対し「素晴らしい写真の写真集はたくさんあります。タンチョウの何気ない行動や記録などの写真集を作りたいのです」という主旨を聞き、未熟ながら私の撮り溜めた写真家の撮らないようなシーンを交えた写真集を作ることとなりました。タンチョウは本当に美しくて素晴らしい鳥です。ですが、いつもその美しい姿ばかりではありません。意外な一面もあるのだということを知って頂きたいと、驚きのシーンを捉えた写真もあります。(写真集「丹頂」はこちら)

― 個体数は以前より増えてきているようですが、まだ一般の人にとってはわからないことが多いと思います。タンチョウを観察されたり撮影されたりしていて、意外な一面を見られたりとか、新たな発見とか、教えてください。
 タンチョウは渡り鳥だと思っている人がとっても多いのが現状ですが、渡りをしない、一年中北海道に棲む留鳥です。もちろん子育ても北海道で、中でも釧路湿原が主な夏の生活域です。ですが人間は、野生生物が棲む自然を開発し、その自然が不足しています。その影響でタンチョウは人里に近い場所で生活しなければならない状況となり、その結果「人馴れ」を招きます。人馴れしたタンチョウは、道路を横断して交通事故に遭ったり、また農家などでは畑を荒したり牛舎に入り込んでエサを漁ったりすることもあり、これから先もしかするとタンチョウは「害鳥」扱いされてしまうのかもしれないと危機感を持っています。
 あの優雅なタンチョウでも、実は攻撃性の強い鳥だというのは意外な一面でしょう。跳び蹴り、クチバシでの攻撃は、給餌場では日常茶飯事ですね。それはタンチョウ同士でも、また、他の野生生物が給餌場に入り込んできた時にも見られます。キツネなんかが入り込んできたものなら、数十羽のタンチョウが円陣を組んでキツネを囲み、それに驚いたキツネは尻尾を丸めて脱げるんですよ。そのキツネの滑稽な姿も笑えますが、そんな強さを持ったタンチョウにも驚きですよね。

― これまでの活動で面白かったこと、苦労話、感慨深い出来事とかありましたらお聞かせください。
 昨冬、片脚を失ったタンチョウが給餌場に飛来しました。推測ですが電線か何かに脚をぶつけて、その傷が悪化して脚を失ったものと思われます。野生界で生き残るには非常に難しい状況でした。傷を負った者は除外しようという本能を持つのが野生生物です。他のタンチョウからひどい攻撃にあっていました。エサも満足に食べられないタンチョウ。何とか助けたい。でもこれが自然界の掟なのか。かといっても怪我の原因は人間による建造物だということ、賛否両論ありましたが、放っておけなかった私は、他のタンチョウに邪魔されないような場所にエサを置いて、少しでもお腹を満たすことができるように毎日続けました。それでなくとも警戒心の強いタンチョウが、怪我をするともっと警戒心が強くなります。しかし私の気持ちを理解してくれたのでしょうか。彼は少しずつ私との距離を近付けてくれたのです。時間はかかりましたがようやく捕獲され治療が始まりました。しかし手遅れだったのでしょうか。長く生きることはできませんでした。こういう悲しい現状にも目を背けずに向かっていかなければいけませんね。

― タンチョウについてお伺いされることが多いと思いますが、他に注目している動物はありますか?
 野生生物全般に興味がありますが、今ハマっているのはバードウォッチングですね。阿寒国際ツルセンター敷地内にあるビオトープでは50種類以上の野鳥が見られます。毎朝始業前の日課でビオトープを散策し、見つけた鳥はほとんど写真に収めています。私のライフリストは写真に収めて初めてチェックが付きます。野鳥で得られる情報は貴重です。彼らは気候に敏感ですから、渡り鳥の飛来時期と気温や天気を照らし合わせることで、様々な情報が得られます。

― 最後に、これからの活動の予定や、ご自信の今後の展開や目標などを教えていただけますでしょうか。
 8月に、世界最大級のバードウォッチャーを対象としたバードウォッチングフェアが開催され、日本のタンチョウをご紹介するために渡英することとなりました。地域の行政からの期待もあり、釧路を代表して恥じないような仕事をしてこようと意気込んでいるところです。また、高い目標ではありますが、自分の写真集の利益から、釧路市阿寒タンチョウ鶴愛護会へ一部寄付することとなっており、その寄付金が大きくなった暁には、病気や怪我をしてしまったタンチョウを保護収容できるケージを造りたいと思っております。

太田幸さんのプロフィール

太田幸さんにインタビュー 太田幸(おおたみゆき)。阿寒町(現在釧路市阿寒町)出身。ハウスメーカーやゼネコンでの勤務等を経て、現在、国内唯一のタンチョウ保護研究施設である阿寒国際ツルセンター主任解説員を務める。館内外でタンチョウの魅力を伝える活動に励む傍ら、自然の写真を中心とするブログ「タンチョウ&ミキィ」を毎日更新し人気を呼んでいる。また、2010年2月に発刊されたタンチョウ写真集「丹頂」が好評発売中。

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