旅する

消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ

編集部
Written by 編集部

消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ

【札幌市】 札幌市豊平区西岡にある国登録有形文化財で札幌景観資産でもある「沼田家住宅旧りんご倉庫」が2014年5月中にも取り壊されることがわかった。築60年余り。その独特で美しいデザインの煉瓦倉庫は姿を消す。

「沼田家住宅旧りんご倉庫」は、かつて豊平地域で盛んだったリンゴ生産農家の名残の一つ。リンゴ生産が盛んだったころは豊平一帯にこのようなリンゴを保管するためのりんご倉庫が多くあったが、果樹園から宅地化に移行するに伴って取り壊され、今は福住・西岡・月寒・平岸に煉瓦造りの倉庫が10棟ほど残るのみになっている。

所在地は、水源池通り(道道82号線)沿い、西岡4条10丁目の沼田家の敷地内。近くには旧沼田家りんご倉庫があり「ろいず珈琲館」として今も使われているが、これとは別の建物である。

同倉庫は、1953年8月に建築された。建物は煉瓦造り2階建て、54m2。豊平地区にある他の煉瓦造りりんご倉庫と同様、煉瓦職人の長浦数雄氏(当時32歳)が建築した。

蔵前入口上部に半円アーチ飾りがあるのが珍しいデザインで、その中央に沼田家の紋章が白地で付けられている。緑色の鉄板葺屋根は切妻造、壁面にはアーチ型の飾り窓・二重窓や蛇腹、側面には○沼の文字も見られ、細部まで凝ったデザインが特徴的な倉庫である。

▼これだけ芸術的な煉瓦の積み方をする倉庫を見たことがあっただろうか
消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ
消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ
消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ
消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ

消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ 消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ 消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ 消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ

使用した煉瓦は米澤煉瓦(江別市)を使用しており、煉瓦には「2」の刻印が多数見られる。リンゴを保管するという機能を果たすため煉瓦の積み方にもこだわっており、断熱効果のある小端フランス積み(小端空間積み)を採用し、中空層を設けた。

倉庫には屋根が土で覆われ煙突の突き出た増築部分がある。1957年~1958年に増築された室で、月寒軍司令部(連隊)の取り壊しで生じた煉瓦を再利用したとされる。そのため色合いが本体より薄く、○Sや☆Sの刻印が見られる。

▼増築部分の室。お花も咲く。
消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ
消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ

同倉庫は歴史的に貴重な建築物だとして、2006年9月15日、文化審議会が建築物の有形文化財に登録するよう文科相に答申、同年11月29日に登録有形文化財になった。また、2007年3月30日には第15号札幌景観資産(旧都市景観重要建造物等)になっている。

▼登録有形文化財の表記も
消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ 消えるリンゴ農園の名残―「沼田家住宅旧りんご倉庫」取り壊しへ

取り壊しは5月20日以降を予定。沼田家住宅旧りんご倉庫の取り壊しで、また一つ、豊平リンゴ農園の名残が消えることとなる。

※一部参考文献:とよひら煉瓦散歩、協力:沼田家

筆者について

編集部

編集部

北海道ファンマガジン編集部。編集部スタッフが取材執筆した記事や、名前を出さないライターの記事、寄稿記事の掲載の際にもこのアカウントが使われます。