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函館では火葬が先? 香典の半返しがない? 北海道の珍しい葬儀事情

鈴木麻代
Written by 鈴木麻代

函館では火葬が先? 香典の半返しがない? 北海道の珍しい葬儀事情

北海道には他都市と違う珍しい習慣があります。北海道、なかでも函館には同じ道民でさえ、驚くような習慣があるものです。例えば、葬儀事情もそのひとつ。函館では人が亡くなると、火葬が先に行われることも、珍しい習慣のひとつです。

なぜ、函館は火葬が先なの? 香典の半返しがないのはなぜ? など、珍しいとされる習慣の由来について、箱館歴史散歩の会主宰の中尾仁彦さんにお聞きしてきました。

葬儀の前に火葬が行われるのはなぜ?

鈴木麻代(聞き手):火葬が先に行われる函館の葬儀は全国的にも珍しいと聞きます。

中尾仁彦さん:葬儀は通夜、告別式、火葬の順番で実施されるのが一般的です。しかし、函館では通夜の前に火葬が行われます。そのため、本州から来た人が亡骸(なきがら)を拝むことができず、憤慨したという話しを聞くことがあります。

鈴木麻代(聞き手):なぜ、函館では葬儀の前に火葬が行われるようになったのでしょうか。

中尾仁彦さん:これには、いくつかの説があります。
(1)戦前に伝染病が流行したとき、参列者が忌み嫌うので先に火葬することになったという「伝染病説」
(2)戦火が強くなると集会や人の移動が禁じられ、葬儀も火葬を優先し簡素化した「戦争説」
(3)漁業の町・函館では海難事故が多く、海水にさらされた遺体は腐敗しやすいため、すぐに火葬したという説
(4)1934年(昭和9年)の函館大火で多くの死者が出た際、衛生上の問題から葬儀を出す前に火葬したという説
(5)戦後、各町会館を利用して通夜・告別式を行う際に遺体の搬入を拒んだためという説
(6)江戸時代から豪勢な冠婚葬祭で有名だった函館、戦後の新生活活動で、遺体を何日も置いておく手間やコストを省くため、火葬を先に実施したという説
このような諸説がありますが、決定的となる根拠は不明です。また、函館のみならず近郊にも、火葬が先である地域が若干あります。

函館では火葬が先? 香典の半返しがない? 北海道の珍しい葬儀事情

香典の半返しがないのはなぜ?

鈴木麻代:北海道では香典の半返しがない、香典には領収書がつくなども他都市との違いと聞きます。

中尾仁彦さん:函館では遺族の大きな負担となる、「香典の半返し」制度はありません。香典の金額の大小に関わらず、香典返しは一律数百円程度の品物です。香典返しと会葬礼状、領収書の三点が受け付けで香典を渡すとすぐに返されます。
また、弔問客はほとんど通夜のみ、告別式は近親者のみで実施されることも違いです。最近変化が生じていますが、葬儀は寺院や民間葬祭場の利用は少なく、低料金の町内会館を活発に利用した時期が長く続きました。
これらの異質な函館方式は、日本最初の開港場としての新しいもの好きな気質の函館市民が戦後の新生活運動において、経済負担を少なくするため、いち早く取り入れた合理性のあらわれと思います。みなさまはどのように判断されますか?

鈴木麻代:確かに北海道函館の珍しい習慣に驚かれる人は多いです。一方で、合理的な方法は経済的にも安心という声もよく聞きます。中尾さん、興味深いお話しをありがとうございました。

<インタビュー協力>
中尾仁彦さん(箱館歴史散歩の会主宰)
函館ぶら探訪Facebook

2016年8月28日:一部本文の表現、漢字表記の誤りを修正いたしました。

筆者について

鈴木麻代

鈴木麻代

1970年生まれ。フリーライター。26歳の時に函館で地域情報紙のフリーライターとしてデビュー。全国版観光旅行誌、田舎暮らしの本他、様々な機会に恵まれる。仕事に子育て、ボランティアと多忙を極め一抹の不安を感じてたある日、ガンにかかる。自分に合う生き方・働き方へチェンジを試み、42歳で離婚し札幌へ。北海道ファンマガジンの情報をもとに札幌めぐりを楽しむうち、2015年7月よりライターとして関わる。一眼レフを片手に執筆ジャンルは幅広く、単独取材~ロケハン同行取材もこなすグリーンレモンな人と言われる。プロフィールの続きは鈴木麻代WEBで検索を。