小学校運動会は5~6月開催がジョーシキ! 北海道の運動会事情

「運動会といえば秋でしょ!」という人が多いかもしれないが、北海道では違う。「運動会といえば春でしょ!」となる。もっとも、最近は全国的に春開催に変える小学校が増えてきているようだが、北海道ではもともと春開催が常識なのだ。

北海道では春に運動会を開催し、学芸会を秋に開催する。そして、地域を挙げて盛り上がっていたりお祭り状態になっている運動会も北海道では見られる。これには北海道の気候ばかりではなく、北海道の運動会の歴史も関係しているという。北海道の小学校の運動会事情に迫る。

5~6月に開催する運動会

北海道内の小学校では、だいたい5月下旬~6月中旬にかけての土曜日または日曜日に開催する例が圧倒的である。一部例外がある小学校もある。例えば、根室市落石小学校や広尾町広尾小学校で7月上旬に開催されていたりする例もある。札幌市や旭川市の一部の学校でも、2014年には9月や10月に開催する例が見られるが、これは体育館の改修工事等の関係で、秋の学芸会と入れ替えた一時的措置に過ぎない。つまり北海道内の小学校の運動会は春開催と断言して問題ないくらい、春開催が定着しているのだ。

6月といえば本州では梅雨入りにかかる時期。でも北海道では梅雨は関係なく、気候が良いほうであるため、この時期に屋外で開催することは差し支えない。

なお、服装は指定の運動着ではなく、普段からジャージ登校で体育もジャージのため、北海道ではジャージで運動会の種目を行うことがほとんどだ。帽子だけは赤白帽で色分けして赤白対抗としている。

地域で盛り上がる運動会

全国的に見れば、運動会当日の昼食は親子別々だったり、親は自分の子供の競技の時だけ見に来るなど、そこまで一大イベントという感がない地域もあるようだ。それが北海道の運動会は力の入れようが違って、地域を挙げてのイベントになる。5月に入るとスーパーで運動会セールが始まったり、7月頃に町の広報誌の表紙を飾ることもしばしば。

小学校独自で行うことが多いが、地方によっては、小中学校合同運動会や、町内会を加えた合同運動会を実施するところもある。いずれにせよ、運動会は子供たちだけでなく大人たちも楽しみにしている。開拓が進んだ明治時代以降、地域には大きな建物や公共施設はなかったため、小学校での行事、特に運動会は大人たちが集まる貴重な機会となった。

そのようなわけで、朝早くから陣取り合戦をし、飲み食いしながら我が子を応援するスタイルが定着した。家族はもちろん、近所や同僚なども含め、皆で応援する。食事は家族と一緒で、弁当以外ではジンギスカンや酒、屋台まで登場することもあるし、岩内町ではそうめんが登場する。小学校の運動会なのに、PTAや大人参加の種目があるのも北海道ならでは。まさに地域で楽しむ一大イベントなのだ。

春の運動会は札幌から広まった?

北海道の運動会のルーツのひとつとされているのが、札幌農学校で1878年5月25日に初開催された力芸会(翌年以降遊戯会)。マサチューセッツ農科大学のスタイルを真似たもので、石投げ・玉投げ・ジャンプ・ハードル走・目隠し走・兎跳び・ポテトレース・徒競走が行われたとされる。その後、射的やベースボールも実施され、1911年までほぼ毎年行われた。

これは札幌市民からも春の行事として注目され、北海道師範学校でも1881年に運動会を導入した。その後、道内の小学校で同様の運動会が導入されるのだが、北海道大学大学教授鈴木敏夫氏は北海道における小学校運動会の起源についての調査(2003年)の中で、北海道の春の小学校運動会においては松前町から始まったとしている。

松前郡松城小学校の大運動会が実施されたのは1886年6月7日。町内郊外の原野で、260名の生徒が紅白にわかれて、体操・綱引き・旗取りが行われたという。これが始まりとなって、翌年以降、函館近隣の小学校に同様の運動会が広まっていくこととなった。

1887年に松前の福山市街三小学校連合運動会として開催されたものでは、「参加生徒をはるかに上回る住民が会場に繰り出し、宴を張りながら賑やかに見物した」といい、函館新聞の記録では1500人もやってきたと報じられた。場所は学校グラウンドではなく郊外の原野や公園、浜辺、神社などだった。

このように歴史を概観すると、北海道初の運動会である札幌農学校力芸会が5月、北海道初の小学校運動会である松前松城小学校運動会が6月で、原点の運動会が既に春開催だった。また、地域の人たちが集まってお祭り気分で楽しむ一大イベントになったのも初期の頃からで、そのスタイルが今に踏襲されているということなのだ。