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釧路の古築を訪ねてみる(2) 米町ふるさと館(旧田村邸)

五位野健一
Written by 五位野健一

釧路の古築を訪ねてみる(2) 米町ふるさと館(旧田村邸)

【釧路市】 歴史的建造物があまり残っていない釧路において、築113年を数える市内最古の木造建築があるのをご存知だろうか。市内の観光スポットである米町公園に隣接する「米町ふるさと館」、かつての田村邸である。

この米町地区は釧路発祥の地として、漁業、林業、馬産、そして近隣で産出する石炭や硫黄など豊富な資源を背景に、明治から昭和初期にかけて道東経済の中心地として大いに賑わった場所だ。かつてこの界隈には数多くの料亭や遊郭が立ち並び、かの歌人 石川啄木も釧路滞在の折、ここの芸姑 小奴と恋仲になったというエピソードがある。

そしてその最盛期であった明治33年(1900)、海産物商の渡辺虎蔵氏がこの地に1軒の店舗兼住宅を建築した。建物は戦後の昭和24年(1949)に田村桂次氏に引き継がれ、田村邸として使用されてきたが、昭和61年(1986)から米町地区で始まった土地区画整理事業による道路拡幅のため、田村邸は危うく解体の憂き目に遭う。しかしその時、この釧路最古の木造民家の保存を望む声が上がった。釧路市はふるさと創世事業として田村家から建物の寄贈を受け、現在の米町公園隣りに移築。平成元年(1989)、明治・大正期の写真や石川啄木の資料なども展示する「米町ふるさと館」として、広く一般に公開されることとなった。

釧路の古築を訪ねてみる(2) 米町ふるさと館(旧田村邸) 旧田村邸は木造瓦葺き二階建ての町家造りで、昔ながらの格子窓やうだつと呼ばれる漆喰の防火壁が維持保全され、伝統的な和風建築を今に残している。

中に入ると、太く立派な梁が巡らされ、書をしつらえたふすまや趣向を凝らした仏壇や欄間(らんま)など、当時の栄華が感じられる。また、縁側の格子窓からは小さな庭が見え、5月になると桜などの花が美しく咲くそうだ。畳に正座しながら優美な和の雰囲気に浸れる、釧路ではかなり貴重な場所ではないだろうか。

釧路の古築を訪ねてみる(2) 米町ふるさと館(旧田村邸) 釧路の古築を訪ねてみる(2) 米町ふるさと館(旧田村邸)

現在は、市の委託を受けて近隣のボランティアの方々が建物に駐在しており、取材当日も伸びた庭木の枝を剪定するなど、積極的に維持管理をされている。 ただ一つ残念な事は、奥の眺めのいい部屋に喫茶スペースがあり、以前は庭を眺めながら畳の上でコーヒーなどを飲むことが出来たようだが、現在は営業していないとのこと。折角カウンターまであるのに、これは本当に勿体ない。 市は建物の維持管理を条件に、カフェオーナーを広く募集してみてはいかがだろうか。釧路市街を一望できる米町公園を散策したあと、築100年を超える古民家カフェでまったり一服なんて、町おこしには最適だと思うのだが。

▼米町ふるさと館(旧田村邸)
釧路市米町1丁目1-21
0154-41-2032
開館時間:10:00~15:00
休館日:月曜日・10月1日~4月30日
入館料:無料
アクセス:JR釧路駅前バスターミナルから①たくぼく線で「米町公園」下車

筆者について

五位野健一

五位野健一

1969年釧路生まれの自称不動産投資家で大家さん。通称ゴイケン。 長年の東京生活を離れ、現在は郷里で中古不動産の再生&賃貸業を営む。 「クシロマニア」では日本の他にない、道東ならではの情報を探している。 将来は自分のアトリエを持ち、アーティスト活動を目論んでいる様子。【Sクラス認定ライター】