朝日に輝く釧路湿原の岬「北斗サテライト展望台」


【釧路市】釧路湿原をぐるりと囲む丘陵には、いくつかの「湿原の岬」がある。釧路湿原は今から数千年前までは実際に海だったこともあり、海水が引いて湿原となった現在においてもキラコタン岬や宮島岬など海の岬と変わらない地形が多く、また同時に、雄大な湿原を一望出来るビューポイントにもなっているのだ。湿原の西エリアに位置する北斗地区も、その丘陵と湿原が作り出した岬の1つ。ここには道道53号線の駐車場から手軽に見ることが可能な北斗展望地や、湿原を総合的に学ぶことの出来る釧路市湿原展望台、丘陵の東端に位置するサテライト展望台などがある。今回ご紹介するサテライト展望台は、釧路湿原屈指の眺望であると共に、湿原に昇る朝日を見るにも最高の場所だ。

先っちょ度 ★☆☆☆☆ 森に囲まれた丘の先端でスリルはないが、高低差があって眺めは格別
知 名 度 ★★★☆☆ 他の展望台に比べると比較的穴場で、夏の観光シーズンもそれほど混雑しない

難 易 度 ★★☆☆☆ 木道が整備されて歩きやすいが、駐車場から1km以上の道のり

▼GoogleMapで見てみると、ちょうど丘が途切れる場所にある。

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取材当日の日の出時刻は5時35分。夏に比べると随分と遅くなったが、日本の極東エリアだけにやはり早起きしなければならない。マイカーで道道53号線に隣接する釧路市湿原展望台の駐車場にクルマを駐め、そこからサテライト展望台へは片道1km以上の徒歩。整備された木道は歩きやすいが、白々と明けてきた空を眺めていると、撮影が間に合わないのではと焦る心が、どうしても足取りを速めてしまう。薄暗い木道を15分ほど歩いて展望台に到着すると、すでに地元カメラマンの皆さんが、大きな三脚をずらりと構えて湿原に昇る太陽を待ち構えていた。これからの時期は、冷えた外気によって水辺から立ち昇る「けあらし(気嵐)」と呼ばれる水蒸気や、地面が冷やされることによって起こる放射霧が幻想的な風景を作り出す絶好の季節なのだ。私も遅ればせながらその一角をお借りし、動画を撮影させてもらう事にした。


機材の準備を整えて待つこと10分ほど。湿原の向こうに見える東の地平線が黄金色に変わり始めると、湿原の川や沼から盛んにけあらしが湧き出してくるのが遠くに見える。やがて、東の稜線からゆっくりと太陽が顔を見せると、それまで眠っていた湿原が活き活きと輝きはじめ、その姿を待ち構えていたカメラマン達のシャッター音が、静かな展望台に響き渡った。予想していたほどの冷え込みではなかったせいか、けあらしはともかく放射霧の量はずいぶんと少なめだが、望遠レンズを覗くと遠くに新釧路川や雪裡川、左手には温根内の赤沼などからもくもくと立ち昇ったけあらしが、微風にゆっくりとたなびく姿がハッキリと見える。手前には広々とした湿原が朝日に赤々と照らされ、アフリカのサバンナを思わせる、原始的で静寂な光景が視界いっぱいに広がった。


日の出時刻から40分ほどが経ち、太陽が快晴の秋空に高く昇ると気温が上がり始めたのか、それまでのけあらしは徐々に消え始め、赤々と燃えていた湿原はいつもの姿に戻っていった。写真を撮り終えたカメラマン達は三脚をたたみ始め、徐々に駐車場へ戻っていく。やがて誰もいなくなると辺りは野鳥の声だけが響き、目の前の大草原を独り占め出来るという、とても贅沢な気分を味わえた。このサテライト展望台は木道が整備されているが、遠いこともあってか観光客は意外に少ない。もし余裕があればゆっくりと小一時間ベンチに腰掛けながら、雄大な湿原をぼんやり眺めてみるのがオススメだ。もちろん早起きして、朝霧に包まれる幻想的な風景を眺めるのもいい。そしてここは、正月の初日の出にも絶好の場所だ。冷え込みが厳しいので防寒装備は必須だが、ぜひチャレンジしてみてはいかがだろう。


サテライト展望台
所在地:釧路市北斗6-11
アクセス:クルマでは、釧路市街から国道38号線を経由し道道53号「釧路鶴居弟子屈線」方面へ約15kmほど。登り車線の頂上手前で右手に見える釧路市湿原展望台にて駐車する。バスでは、JR釧路駅前経由の阿寒バス「鶴居線・幌呂線」で約40分、バス停「釧路湿原展望台」にて下車するが、日の出の時間帯には運行していないので、レンタカーかタクシー利用になるだろう。いずれも、釧路市湿原展望台駐車場から環状に延びる、一周約2.5kmの木道を徒歩で15~20分ほど歩くと、サテライト展望台に到着する。