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12月限定! 意外に難しい? 新釧路川で「黒いシシャモ」捕獲作戦

五位野健一
Written by 五位野健一

12月限定! 意外に難しい? 新釧路川で「黒いシシャモ」捕獲作戦 【釧路市】「解禁になったけどサッパリいないのさ。だから人もいないっしょ」。新釧路川の河川敷に着くなり、たも網を持ったおじさんはそうボヤいた。確かに、この時期賑わうはずの川岸にあまり人影がない。地元以外ではまず見ることの出来ない「黒いシシャモ」を記事にしようと張り切ったものの、ピーカンの釧路晴れとは裏腹に、どうやら雲行きがアヤしそうだ。

12月限定! 意外に難しい? 新釧路川で「黒いシシャモ」捕獲作戦 このシシャモという魚、道外の居酒屋やスーパーの売場でよく目にするのは「カラフトシシャモ」の名で売られている、アイスランドやノルウェー産のカペリンという別種の魚であることが多い。本家のシシャモは、世界でも北海道太平洋沿岸の限られた川だけに遡上する貴重な魚で、大きさや見た目、そして味わいもかなり違うのだ。特に道東の冷たい乾風で干したシシャモは絶品の旨さで、カラフトシシャモしか知らない道外の人が初めて食べると、誰もが「これがホントのシシャモなんだ!」と驚くこと請け合いなのだが、近年は漁獲量の減少で値段が高騰し、今や地元でも「小さな高級魚」になってしまった。

12月限定! 意外に難しい? 新釧路川で「黒いシシャモ」捕獲作戦 シシャモは春に川で生まれ、サケと同じように川を下って海で成長し、1年半ほどで産卵のため生まれた川に再び帰ってくる。地元の釧路市漁業協同組合では減少するシシャモの資源維持のため、シシャモの親魚を捕獲して孵化事業を行っており、例年11月の遡上時期になると新釧路川の下流域に網をかけ、夜を徹して親魚の捕獲を行っている。そして、その捕獲作業が終わると12月限定で、たも網によるシシャモすくいを有料で一般にも開放しているのだ。地元では「下りシシャモ」と呼ばれる、産卵が終わってやせた黒いシシャモではあるが、うまく下りの群れに当たると、1日で数百匹もすくえるとあって、この時期を楽しみにしている市民も多い。

12月限定! 意外に難しい? 新釧路川で「黒いシシャモ」捕獲作戦 ハナシを冒頭の河川敷に戻そう。シシャモすくいの解禁は、遡上の関係で例年12月1日からとなっていたが、遡上期が年々遅くなっていることもあり、今年(2013年)は12月6日から。しかし、解禁当初のここ数日は、産卵後のまとまったシシャモの群れがまだこの辺りに降りてきていないのか、水際に目をこらしても魚の影はほとんど見当たらないそうだ。「いつもなら川底にいっぱいいて、ひと網で2~3匹入ったりするんだけどなぁ」と、ベテランのおじさんは水面を見つめながら言う。これは記事にならないかも……と、なかば諦めの気持ちでいると、しばらくして突然バシャッ!と水音が響いた。近寄って見ると、おじさんのたも網には念願のシシャモが!!真っ黒な婚姻色に覆われたオスのシシャモは、追い星と呼ばれるザラザラした背中とブヨブヨしたお腹の見てくれで、お世辞にもあまり美味しそうな姿とは言えないが、貴重な1匹が見られて何よりだ。

12月限定! 意外に難しい? 新釧路川で「黒いシシャモ」捕獲作戦 よーし今度は自分の番だと意気込むが、この黒いシシャモ、やっとこ川底に姿を見つけても弱々しい見た目とは裏腹に意外と動きが素早く、目の細かい自分のたも網では水の抵抗で思うように追い回せない。ベテランが帰った後も長々と粘ってみたが1匹もすくえず、結局、水面を見つめながら川岸をウロウロするばかり。ふと顔を上げると、橋の上から自転車に乗った老人がいつの間にかこっちを見ていた。「獲れっかい?」「いやぁ、全然いないですね」「向こう岸だったら結構泳いでるのが上から見えたよ」「え!? 行きます!」道具をクルマに放り込んでさっそく向こう岸に行くと、確かにさっきの対岸よりずっとシシャモの魚影が多い。幸いにも、たも網さばきのコツを掴んできたおかげもあって、その後は連続でシシャモをGET!3時間で何とか20匹をすくうことが出来た。決して多くはないが、ここ数日の不漁の中では満足すべき数だろう。

12月限定! 意外に難しい? 新釧路川で「黒いシシャモ」捕獲作戦 自宅に戻ったら、さっそくシシャモの下ごしらえだ。今回は燻製を作ろうと考え、真水でキレイに洗ったシシャモを、塩と砂糖を溶かした調味液にしばらく漬けたあと、2階のベランダでひと晩乾燥。次の日にスモーカーに入れたサクラのチップで1時間ほど熱燻させると、旨そうなアメ色の燻製シシャモが出来上がった。さすがに海で穫れたシシャモにはかなわないが、これはこれでさっぱりした独特の風味があり、酒の肴にもなかなかだと思う。

釧路の隠れた風物詩、黒いシシャモすくいの期間は12月末まで。さえぎるものがない新釧路川の河川敷はさすがに寒いが、澄み切った青空の中で魚すくいなんて少年時代に返ったようで、なかなか楽しい。興味のある方は、釧路市漁協まで問い合わせてみてはいかがだろう。

注意事項

新釧路川の遡上シシャモは、下記の期間を除き採捕が禁じられている。期間内の遊漁にあたっては、必ず事前に釧路市漁業協同組合で申し込みの上、当日有効の遊漁承認証を必ず携帯すること。

シシャモすくい概要(新釧路川)
期間:2013年12月6日~同12月31日
区域:JR根室本線鉄橋より上流、日本製紙取水口までの両岸(川の中に入るのは禁止)
漁具:たも網のみ(網の口径・深さは各40センチまで)
料金:1人1日630円
※いずれも2013年度の内容であり、年度で異なる場合がある。

釧路市漁業協同組合(受付担当窓口)
http://www.gyokyou.or.jp
住所:釧路市浜町3番12号
電話:0154-22-5154
営業時間:9:00~17:30(日祝休み)

釧路市漁協では、意外に知られていないシシャモの生態などを総合的に学べる「ししゃも大辞典」をWebサイトに掲載している。とても判りやすい内容なのでオススメだ。

筆者について

五位野健一

五位野健一

1969年釧路生まれの自称不動産投資家で大家さん。通称ゴイケン。 長年の東京生活を離れ、現在は郷里で中古不動産の再生&賃貸業を営む。 「クシロマニア」では日本の他にない、道東ならではの情報を探している。 将来は自分のアトリエを持ち、アーティスト活動を目論んでいる様子。【Sクラス認定ライター】