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エゾシカと列車の接触事故どう防ぐ? JR北海道釧路支社に聞いた

五位野健一
Written by 五位野健一

エゾシカと列車の接触事故どう防ぐ? JR北海道釧路支社に聞いた

JR釧網本線の細岡駅近く。ピーッ!という甲高い警笛と共に列車が迫って来た。線路上には十数頭ものエゾシカが! あぶない!!

冬から春にかけて道内のあちこちで見かけるエゾシカ。新聞やTVニュースなどでご存知のとおり、近年は特に個体数の増加が大きな問題になっており、畑の作物や樹木の皮を食い荒らす農林業の被害はもちろん、クルマや列車との衝突など交通機関への影響も大きい。特に列車は急ブレーキを掛けてもすぐに停車出来ないこともあって、線路際に集まるエゾシカは列車の安全運行にとって常に悩みのタネだ。今回は釧路駅構内にあるJR北海道の釧路支社へ、エゾシカ対策についていろいろと伺ってみた。

エゾシカとの遭遇はかなり多い

エゾシカと列車の接触事故どう防ぐ? JR北海道釧路支社に聞いた

JR北海道釧路支社によるとここ数年、管轄路線となる釧網本線や花咲線、根室本線、石勝線の各区間において、エゾシカとの衝突事故、またはエゾシカによって列車が緊急停車した数は年間1000件を超えているという。道東地域だけで毎日3件近いペースで発生しているのだ。しかもこの件数には「急ブレーキを掛けたが、停車しないで回避できた」ケースはカウントされていないため、実際にはそれ以上に多くのニアミスがあったと言える。線路際の斜面は日当たりや風の影響で積雪が少なく、エサとなる草を求めてエゾシカが集まる区間も多い。当然ながら、列車とエゾシカの「不幸な出会い」もこの時期に多発するのだ。

事故を未然に防げ!

エゾシカと列車の接触事故どう防ぐ? JR北海道釧路支社に聞いた

これまでJR北海道釧路支社では、エゾシカとの衝突事故防止に向けてさまざまな対策を試みてきたそうだ。以下はその一例。

<鹿笛> 列車に装着
エゾシカが嫌がる超音波を発生する特殊な笛を車体に取り付け、走行中の風で笛を鳴らし、列車の接近を気づかせる。

<芳香剤> 線路敷地内に散布
エゾシカが嫌がる匂いの入った芳香剤を木に取り付け、線路に寄せつけない。

<野生動物保護用反射板(スワリフレックス)> 線路敷地内に設置
列車のライトが反射板に当たって光り、エゾシカに列車の接近を気づかせる。

<侵入防止柵> 線路沿いに設置
多発区間の線路沿いに金網のフェンスを設置し、エゾシカを線路内に立ち入らせない。


さまざま試行錯誤の中で、エゾシカに一番効果があったのは「侵入防止柵」だったとのこと。ただし、沿線すべての区間にフェンスを張り巡らせるのは、費用や保守面において難しい。やはり最終的には、他の運転士からの業務引き継ぎや勉強会の際にエゾシカの出没情報を共有するなどして、事故を未然に防いでいるそうだ。

エゾシカと列車の接触事故どう防ぐ? JR北海道釧路支社に聞いた

不幸にも轢いちゃったら

「もしエゾシカを轢いてしまった場合、どうなるんでしょう?」個人的に気になっていたので、率直に聞いてみた。

衝突事故が発生した場合は、運転士が線路に降りて車両の状態を確認の上、轢いたエゾシカを線路際の安全な場所まで移動し、後で保線担当が現地に向かい処置を行う。列車が脱線したり破損するなどのケースはないそうだが、列車の遅れなど多方面の影響を考えると、やはり事故を未然に防ぐのがベストだろう。

エゾシカも観光資源?

エゾシカと列車の接触事故どう防ぐ? JR北海道釧路支社に聞いた

このように、JRなど交通機関や農家にとっては厄介でしかないエゾシカだが、その反面、道外や海外から訪れる観光客にとって、列車から間近に見える野生動物の姿はやはり感動モノだと思う。今シーズンの運行を開始した釧網本線をのんびり走る「くしろ湿原ノロッコ号」であれば、安全な速度でエゾシカとの「幸せな出会い」があるかも知れない。大然を駆けるエゾシカを車窓から眺めながら、ヒトと野生生物の調和を親子で考えてみる、なんて自然の教室はいかがだろう。動物園とはまた違った視点で、より深い話が出来そうだと思うのだが。


JR北海道 釧路支社
ウェブサイト
住所:釧路市北大通14丁目
TEL:0154-22-4314(JR釧路駅)

くしろ湿原ノロッコ号
平成26年度営業案内:PDFファイル
運転区間:JR釧網本線 釧路~塘路間
運転期間:
2014年4月26日~5月6日・10日~31日(1日1往復運転)
2014年6月1日~3日・7日~30日(1日2往復運転)
※7月以降も運転予定。 運賃や時刻、見どころなどは、リンク先を参照のこと

筆者について

五位野健一

五位野健一

1969年釧路生まれの自称不動産投資家で大家さん。通称ゴイケン。 長年の東京生活を離れ、現在は郷里で中古不動産の再生&賃貸業を営む。 「クシロマニア」では日本の他にない、道東ならではの情報を探している。 将来は自分のアトリエを持ち、アーティスト活動を目論んでいる様子。【Sクラス認定ライター】