チョウザメ、石狩川・天塩川に遡上した川の主

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 北海道にはチョウザメの町があります。しかもかつては川に遡上していたという魚ですが、道内の地名として残っているところもあります。

 サメという名がついていますが、サメの仲間ではありません。サメの肉とは異なり、アンモニア臭がなく、肉も含めどの部位もおいしく食べることができます。体長は平均して1~2m前後です。

かつて北海道に遡上していたチョウザメ

 北海道の河川では、2種類のチョウザメが生息していたことが分かっていますが、ダウリア・チョウザメという種類と、ミカド・チョウザメという種類です。国内でもほぼ北海道でのみ記録があります。

 石狩川、天塩川、十勝川、釧路川がチョウザメの遡上していた河川です。しかし、扱いは異なっており、石狩川のチョウザメには神とあがめられてきていたことが多いのに対し、天塩川のチョウザメは食用になっていたことが多いようです。とはいえ、石狩川のチョウザメも漁獲されて札幌の
市場で売られていたようです。

 道内のチョウザメの記録は江戸時代の1717年。松前藩が江戸幕府に「菊とじ鮫」を献上していたという記録です。明治時代になると、松浦武四郎が、天塩日誌にチョウザメの群れを見たと記録しています。石狩川河口の石狩市では「鮫様」(北海道有形民俗文化財)がおかれています。

 チョウザメの遡上は明治時代末期頃まで容易に見られたようですが、昭和10年頃を境に激減したという報告があります。原因は乱獲、そして治水に関連した度重なる河川改修工事。

 現在はめっきり見かけず、国内では2007年以来環境省レッドリストで絶滅種という扱いになっています。河川に遡上することはなくなっても、近年まれに海洋・沿岸部で漁獲されることがあります(正体はロシア方面からのもの)。

アイヌとチョウザメ

 アイヌ語ではチョウザメは「ユベ」。道内に関連した地名が残されています。江別は「ユベオツ」(チョウザメがいる川)。網走地方の湧別は「ユベオツ」。滝川市江部乙は「ユベオツ」。十勝地方のナイタイは「ナイタユペ」。いずれも由来説の一つです。

 チョウザメに関する伝説も残されており、川の神とされている地域があります。石狩川でいうなら、旭川市カムイコタン、空知川の芦別付近まで遡上していたことが伝説から分かります。

美深町チョウザメ館のチョウザメの動画

チョウザメの現在

 絶滅したとされていますが、北大の研究グループが国内初の人工ふ化に成功しています。2007年5月24日にダウリア・チョウザメの人工ふ化に成功。1年後の2008年5月にはミカド・チョウザメの人工ふ化に成功。

 上川管内美深町はチョウザメで町おこしをしているところ。キャビアの収穫のため1983年以来人工交配種のチョウザメ「ベステル」を人工飼育、1992年から本格養殖をしていて、チョウザメ料理も提供しています。1997年オープンの無料のチョウザメ館もあり、チョウザメを見ることもできます。