温泉地としても知られる支笏洞爺国立公園の洞爺湖。">
 温泉地としても知られる支笏洞爺国立公園の洞爺湖。">知られざる洞爺湖の無人島・中島の実態とは – 北海道ファンマガジン
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知られざる洞爺湖の無人島・中島の実態とは


 温泉地としても知られる支笏洞爺国立公園の洞爺湖。2008年に日本百景に登録されており、その雄大な自然の風景はよく知られている。洞爺湖全景を眺めることはよくあるが、洞爺湖の「中」から洞爺湖を見つめる機会はそう多くないだろう。今回はあえて、洞爺湖に浮かぶ中島にスポットを当て、その知られざる中島の実態に迫る。

 国内9番目の湖であるカルデラ湖・洞爺湖。周囲50kmで、面積は70.7km2に及ぶ。洞爺湖の特徴の一つは、ほぼ円形の湖の真ん中にある「中島」の存在であろう。

 実際には4つの島が洞爺湖の中央部に浮かび、そのうち最大の島を「中島」(または大島、ポロシリ)と呼ぶ。面積は4.85km2である。洞爺湖温泉街とを結ぶ遊覧船の発着場もあり、気軽に行ける島はこの島のみである。

 南東には最も小さい面積の「饅頭島」(ポンモシリ)があるが、マムシが多いので入ってはいけないとの言い伝えがあることから「ヘビ島」とも呼ばれ、唯一上陸不可である。中島の南西には「観音島」(カムイチセモシリ)があり、さらに南西にある「弁天島」(トプモシリ)とが砂州でつながっている。観音島には江戸時代、仏師円空の観音像が安置されていた。弁天島のほうは江戸時代末期から弁財天が祭られている。


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中島を知る

 さて、ここからは最大の島「中島」を掘り下げていこう。いずれも5~6万年前の洞爺カルデラ中央で起きた噴火活動で溶岩ドームとして形成された島である。中島は周囲約11kmもある。8つの峰を持ち、最高峰はトーノシケヌプリ(西山・454.8m)で、この頂上を洞爺湖町・壮瞥町の町境界線が通る(虻田町・洞爺村・壮瞥町の3町時代もここが3町共通の境界線であった)。北部には北山、南東にはノシケタヌプリ(東山)がある。

 遊覧船があることから冬季以外は誰でも上陸できるのがこの島である。博物館前桟橋周辺には「洞爺森林博物館」や売店が営業しており、博物館ではエゾシカなどの標本、ジオラマ、森林の資料などを展示する。(実際には北東部にボート用の桟橋もあることはあまり知られていない)

 通常この船着き場周辺だけ楽しむというのが観光客の通例となっており、その外側に行くにはフェンスを越えるゲートを通る必要がある。ゲートを超えると、中島巡りを楽しめるウッドチップ散策路が巡らされている。約2kmで一周できる短絡コースと島の奥地に行ける長距離コースがあるが、最大標高140mほどなので手軽に散策可能。2008年には島を縦断後半周するフットパスルートが整備された。「中島ちょこっと探検」など島を楽しむための体験ツアーも実施されている。


なぜかエゾシカが生息する中島

 中島の遊覧船桟橋エリアのフェンスの外側にはエゾシカを何頭も見る。中島といえばエゾシカというように、エゾシカがたくさん生息しているのである。島であるから他の地域からは隔絶されているのだが、昔からここにエゾシカはいたのであろうか。

 答えはNOだ。もともとこの島にはエゾシカは生息していなかったとされる。意図的にエゾシカが運び込まれたのである。1957年にオスのエゾシカ1頭が日高地方から運び込まれたのが最初であり、翌年1958年にメスも1頭導入された。その後1965年に妊娠したメスが入り、これら合計3頭からエゾシカが殖えていった。

 個体数が爆発的に増加したことから中島におけるエゾシカは高密度状態が続いている。最大で400頭を越したとも言われる。そのため餌がなくなり個体数が激減する時期が生じ、1980年代半ばには間引きも行われた。歴史を通じて島全体の個体数は150~400頭の間で増減を繰り返してきている。

 エゾシカの大量繁殖で、冬季にはササしかないためササがほぼ消滅してしまったほか、樹皮を食べるため樹木も傷つけられた。一方で、エゾシカが食べない植物だけが増加するという多様性の変化もみられた。エゾシカの導入で、洞爺湖中島本来の自然は破壊されたというわけだ。

 今でもエゾシカが約250頭生息している。遊覧船桟橋近くに姿を見せるエゾシカの中には、人懐こい"なっちゃん""じゅんこ"など名前がつけられているものもいる。エゾシカ用の餌も販売されており、中島における観光客の楽しみ方の一つとなっている。


 手つかずの大自然が残されているとはお世辞にも言い難いが、なかなか訪れる機会の少ない洞爺湖中島。フットパスも整備されているので、機会があれば島めぐりをしてみるのも良いだろう。

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