味わう

え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ

千葉美奈子
Written by 千葉美奈子

え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ

【江差町】江差町の家庭に古くから伝わる郷土料理「けいらん」。鶏の卵のような姿が名前の由来で、餅生地であんこを包み、お吸い物に入れていただきます。北東北の郷土食として知られていますが、津軽海峡に面した江差にも、冠婚葬祭の時に食べる風習が伝わっています。江差では、あんこではなく羊羹を包んで作られることもあるそうです。

そんな説明を読んだり聞いたりしても、「おまんじゅうをお吸い物に!?」と、まったくイメージがわかなかった筆者が江差町に味わいにいったところ、お吸い物と控えめな甘さのあんの絶妙なハーモニーを体験するとともに、町づくりに取り組む方々のけいらんに込める思いも伺うことができました。

江差で唯一、けいらんを出す喫茶店がオープン『皐月蔵(さつきぐら) チャミセ』

最近では一般家庭で作られることも減り、地域のお祭りなどで振る舞われるぐらいになってしまったというけいらん。そんなけいらんをメニューに掲げる、江差で唯一のお店が2014年7月にオープンしました。江差町中心部、いにしえ街道沿い(江差町歴まち商店街街区)の『皐月蔵 チャミセ』。道路から少し奥まったところに建つ、隠れ家的なムードが漂う喫茶店です。

▼江差いにしえ街道と、江差で唯一けいらんが食べられる店『皐月蔵 チャミセ』
え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ
え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ

かつてあったガソリンスタンドの資材などの倉庫として使われていた土蔵を、「江差町内外の人や文化が交流するスペースにしよう!」と、町の委託を受けた「江差いにしえ資源研究会」が改装。けいらんのお吸い物に漬物、黒豆茶が添えられた「お吸い物ケイラン膳」が看板メニュー。他にも、江差名産の岩のりを使った「岩のりソーメン膳」、江差産のハチミツを使った「はちみつ抹茶トースト」、商店街にあるパン屋さんが生地を仕込んだ「おまかせピザ」、地元菓子店のスイーツ盛り合わせなどがメニューに並びます。

▼『皐月蔵 チャミセ』の「お吸い物ケイラン膳」
え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ

こだわりの素材、甘みと塩味の奏でるハーモニ

けいらんの素材にもこだわり、商店街のお店で扱っているものや、それぞれのお店が持つ人脈を生かしたものなどが使われています。お吸い物の出汁は、酒店で仕入れている松前の真昆布と、沖縄の物産を扱うお店の沖縄産かつおぶしを使用。餅生地で包むあんは、創業90年の老舗和菓子屋から、けいらん用にこしあんを仕入れています。

早速味わった初めてのけいらん。お吸い物の中に美しく収まっている白い小さな「卵」は、箸をつけるのがもったいない気がするほど。噛むととろけるように出てくる控えめな甘さのこしあんと、さっぱりした塩味の出汁との相性が見事な、上品な味わいです。江差産の黒豆を使った黒豆茶は、桜の花びらの香りがアクセントになっています。

けいらんは、アンテナショップ『皐月蔵(さつきぐら) チャミセ』の中心的存在

『皐月蔵 チャミセ』は、地域の力で集めた食材によるメニューを提供するだけではありません。建物そのものには、古くからあるものを生かそうという思いが随所に込められています。お店の壁にかけられている古時計は、商店街にある時計店が、戦前のものを修理したもの。土蔵に長くしまい込まれていた道具も、オブジェとして壁などに飾られ、目を楽しませてくれます。テーブルは、商店街の古い建物を解体した時に出た木材を、漆樹脂で塗装した「江差塗り」によるものです。店舗先には、地元藍染会による藍染ののれんがかけられる予定です。

▼心和む空間にぴったりのレトロな時計。
え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ

▼手作りの敷物もさりげない演出。
え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ

また、随時イベントを企画し、地元水産業者の方々や農家の女性、江差出身で他地域で活躍している調理関係者などに厨房に立ってもらい、メニューに変化を出したり、料理講習会を通した交流会なども開いていくそうです。

企画の中心メンバー、中島晶子さんは、「江差の町の持つ魅力や技術を生かすとともに、町を飛び越えてたくさんの人に存在を知ってもらい、集う場になってほしい」。その思いの中心に、かつて北海道と本州の交易に活躍していた「北前船」を象徴する郷土食「けいらん」があるのです。

企画の中心メンバー中島晶子さん
え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ

羊羹で自宅でもけいらんを作ってみました!

『皐月蔵 チャミセ』のけいらんメニューはこしあんを使っていますが、中島さんに、江差の老舗和菓子店「五勝手屋本舗」で、看板商品の「五勝手屋羊羹」を使ったレシピを紹介していると伺い、帰り際に同店で羊羹を購入。添えられていたレシピを参考に、羊羹と、別に購入したこしあんの両方でけいらんを作ってみました。羊羹は生地で包みやすく、初心者でもきれいな卵が作れるという利点があります。市販の白玉粉を使えば、とても手軽に作ることができますよ!

▼五勝手屋羊羹と、五勝手屋羊羹で作ったけいらん
え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ
え!おまんじゅう入りお吸い物?江差の郷土食「けいらん」のすゝめ
https://pucchi.net/img/image_newstopics/201007hokkaidoyasai.jpg

筆者について

千葉美奈子

千葉美奈子

東京都出身。2012年夏から函館市在住。乳幼児と保護者向けイベントの講師業のほか、総合情報サイト『All About』の乳児育児・絵本ガイド。自身も子育て現役中。初めての北海道生活、函館の空の表情の豊かさは、長年かかって築かれてきた価値観・人生観に大きな影響を与えたようです。道南地方の個性的な魅力に触れるたびに幸せな気持ちに。趣味は料理、パン作り、野球観戦。