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松前で伝統文化再発見!屋号調査から発展した屋号入りもっこが好評

松前で伝統文化再発見!屋号調査から発展した屋号入りもっこが好評

【松前町】苗字以外に各家庭の名札の役割を持つ「屋号」。松前町地域おこし協力隊のメンバーが、松前町内の屋号の種類や由来を冊子にまとめました。そこから発展し、屋号を入れて作成した「もっこ」(同町などに古くから伝わる、魚や道具を背負って運ぶ箱)が、町内外から好評を得ています。

各家庭の名札代わり「屋号」とは

「マルイチの~さん」「カネサの~さん」……。名前ではない呼び方で呼び合う松前の文化に注目したのは、2013年春に千葉県からやってきて、松前町地域おこし協力隊として同町役場に勤務する長谷川隆政さん。

▼長谷川さん。漁師の道具として広く使われていたもっことともに(松前藩屋敷)
松前で伝統文化再発見!屋号調査から発展した屋号入りもっこが好評

長谷川さんは、屋号を詳しく調べることで松前を深く知るきっかけになるのではないかと考え、学芸員経験での調査スキルを生かし、調査を始めました。墓石はほとんど屋号が記されていることから、墓地を丹念に歩いて調べたり、町民への聞き取り調査も重ね、約半年間かけて実施。1,600近くに上る松前町の屋号と由来を、70ページ強の冊子にまとめました。

▼長谷川さんによる屋号調査記録。地区ごとに屋号をまとめたページも
松前で伝統文化再発見!屋号調査から発展した屋号入りもっこが好評
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長谷川さんによると、屋号は、道内では江差、小樽、函館など、漁業の町に根差してきた文化だそうです。長谷川さんが住んでいた千葉県でも、銚子など海のある地域に見られたといいます。一家の安全や繁栄などの願いを表す記号や、苗字の一字、意味が込められた漢字などを組み合わせて自由に作られ、漁師や農家の道具の名札などの役割をしてきました。「まる」や「やま」、「かね」の記号は、松前町の屋号でも多く見られ、家族の健康や、商売繁盛などの願いが込められており、魚のうろこを表す△も、漁師の家で好んで使われました。

また、調査の結果、松前町の多くの屋号は、江戸時代後半から明治時代にかけて作られていったものであることが分かりました。約1,600件の屋号と接した長谷川さんは、地域の人たちの命名やデザインのセンスに驚かされたそうです。

「屋号」と「もっこ」で伝統文化再発見

屋号の調査を進めていた長谷川さんは、地元の子どもたちのキャンプの手伝いに携わった時、小学5年生の女の子が紙コップに自分の名前を書く代わりに屋号を書いたのを見て、祖父母や両親などから自然に屋号の文化が引き継がれていることに感動を覚えたそうです。しかし、代々伝わる屋号はほとんどの家にあるのにもかかわらず、その必要性が薄れ、屋号文化が衰退しているのも事実。漁の道具の名札代わりや、山で切られた木材の所有者を明示するために焼印や鎌による切込みなどで入れられるなど、色々な場面で生活になじんできた屋号に、再び光を当てたいと考えた長谷川さんでした。

時を同じくして、漁師の家に伝わる、魚などを入れて背負う道具「もっこ」の魅力を再発見しようと立ち上がった、同町原口地区の「もっこの会」がコラボ。松前杉を使い屋号入りのもっこを作成したところ、町民のもっこへの懐かしさなども加わり、町内外から関心を集め始めました。

現代でも活用できる!もっこの使い方あれこれ

▼親父もっこと孫もっこ(松前町役場)
松前で伝統文化再発見!屋号調査から発展した屋号入りもっこが好評

屋号入りの大きなもっこ(45×35×20cm)を作成して売り出したところ、もう少し小さなもっこも作ってほしいとの要望が届くようになりました。そこで、大きなもっこを親父に見立て、息子もっこ(23×18×10cm)、さらに小型の孫もっこ(16×12×7cm)も作成。親父もっこはマガジンラックや郵便受けにもなる大きさ。息子もっこは葉書入れ、孫もっこはペンたて、フラワーアレンジメントの器などとして、活躍の場を少しずつ広げています。地域の子どもたちにもっこの文化を知ってほしいと考えて用意した、孫もっこの作成キットは、早速夏休みの自由研究などに活用し始めるケースが出ています。(サイズは、高さ×幅×奥行)

▼もっこ作成キット。もっこに使う紐は、着物の余り切れを使う
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松前町中心部から江差方面に車で30分ほどの、もっこの会の製作拠点・斉藤工務店を訪ねると、上保(うわぼ)武夫さんが、孫もっこ作成キットの組み立て方を教えてくれました。自分の家に代々伝わる屋号の由来を調べて記したり、屋号を持たない場合でも、屋号について調べ、オリジナルの屋号を考え、完成したもっこに記してみれば、杉の木の香りのする手作りの品に家族への思いを表現した、素敵な作品になることでしょう。

屋号、もっこの文化を感じられる松前藩屋敷

松前で伝統文化再発見!屋号調査から発展した屋号入りもっこが好評

江戸時代の松前町の街並みを再現した「松前藩屋敷」では、漁師の家先に、ニシンを運ぶのに使った大きなもっこが置かれています。そのかたわらに置かれた大きな鍋は、ニシンを煮るための道具。ニシンは食用としてだけでなく、煮て天日干しにし、綿の肥料として道外に売られることで、松前に大きな財をもたらしたそうです。

▼商店の屋号例(松前藩屋敷)
松前で伝統文化再発見!屋号調査から発展した屋号入りもっこが好評
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▼道具に書き込まれた屋号(松前藩屋敷)
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松前に古くから伝わる文化と道具を組み合わせたユニークな取り組みは始まったばかり。長谷川さんは、屋号に関する調査をさらに進め、郷土学習や松前の魅力PRにも役立てていきたいと考えているそうです。

もっこの会
事務局:松前町原口413「松前町交流の里づくり館」
TEL:080-6686-1574(担当:上保さん)

もっこの完成品の値段(税込)
親父もっこ:屋号・家紋・文字入れで8,000円、文字なしで6,000円
息子もっこ:屋号・家紋・文字なしのみ、3,000円
孫もっこ:屋号・家紋・文字なしのみ、1,500円
孫もっこ作成キット:1,000円

松前藩屋敷
松前郡松前町西館
TEL:0139-43-2439

筆者について

千葉美奈子

千葉美奈子

東京都出身。2012年夏から函館市在住。乳幼児と保護者向けイベントの講師業のほか、総合情報サイト『All About』の乳児育児・絵本ガイド。自身も子育て現役中。初めての北海道生活、函館の空の表情の豊かさは、長年かかって築かれてきた価値観・人生観に大きな影響を与えたようです。道南地方の個性的な魅力に触れるたびに幸せな気持ちに。趣味は料理、パン作り、野球観戦。