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廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

千葉美奈子
Written by 千葉美奈子

廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

【福島町】廃校となった小学校の校舎を利用した、ジャンルも様々なレトロな物を集めた展示スペースが福島町にあるのをご存知でしょうか?「チロップ館」と名付けられたこのギャラリーは、訪れる大人や子どもを楽しませたいという思いがいっぱいの男性が管理しているとのこと。「どんな空間なのだろう?」とワクワクしながら、夏休みに入った小学生たちを連れて訪れてみました。

玄関先から意表を突く展示物

迎え出てくれたのは熊谷正春さん(75)。骨とう品や廃品などを自宅に集めていましたが、数が増え、地域の人に楽しんで見てもらえるように展示できる施設を探していました。福島町立白符(しらふ)小学校が2008年に廃校になった直後の同年7月から、福島町から校舎を無償で借り、「チロップ館」として、膨大なレトロ品の展示を始めました。チロップとはアイヌ語で「鳥の多い所」の意味で、「白符」の地名の由来だそうです。

▼チロップ館入口で熊谷さん
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

ご挨拶をしながらも、玄関先からあふれ返るたくさんの展示品に目移りしてしまうほど。特に目を引いたのは、カニを使って作られた帆船。熊谷さんの知人の漁師さんが、カニ漁の合間に作ったそうですが、甲羅やはさみ、目玉まで使われた精巧な作りの帆船に、目が釘付けになってしまいました。

▼カニで作った帆船
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

校舎を不思議な館に作り替えた熊谷さん

玄関からすぐの職員室の入り口は、木や障子などを使い、これから入る空間に期待が膨らむ作りになっています。部屋の中心部には6畳分の畳敷きの小上りがありますが、教壇を並べた上に畳を敷き、真ん中に囲炉裏が。「ちょっと上がって座ってみよう」という気分にさせられます。人形を飾る棚は、木の皮で作って絵の具で色を塗って森の中のような雰囲気を出しています。「作れるものは、何でも作る」という熊谷さんの手で、校舎は色々な可能性を秘めた不思議な館に生まれ変わり、現在も発展中なのです。

▼旧職員室入口
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

▼教壇と畳で作った小上り
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

▼手作りの棚に置かれた人形たち
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

時代とジャンルを超えた「レトロ」がぎっしり

真空管のオーディオに、レコードの数々、ぜんまい柱時計、生活雑貨……。札幌から訪れた男性は真空管のオーディオを前に、「これを見られただけで大満足だ」と大喜びだったそうです。館内のたんすや空き部屋にしまわれているひな人形の中には、明治時代のものと思われるものも。館内あちこちにしまわれている総勢800体のひな人形は、毎年2月末から5月中ごろまで、体育館いっぱいに飾られるそうです。

▼真空管のオーディオ
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

▼古時計
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

レトロ好きはもちろん、そうでなくても引き込まれる空間

レトロな物が特別好きというわけではない私にも、チロップ館に置かれているたくさんのレトロな物は、単なるガラクタには見えませんでした。それはどうしてなのでしょうか?

壁に張られたたくさんのメンコに興味を示した小学生に、説明をする熊谷さんの表情は、かつてメンコでよく遊んだ少年のような表情。「真空管のオーディオを集めるところから、古物の収集が始まってね」と話すときは、収集マニアの表情がチラリ。「これはちょっと面白い時計なんだ」と見せてくれたのは、熊谷さんの現在40代後半の2人目の娘さんに、1歳のお誕生日の時に買ったという、人形のついた時計。

▼壁に展示されたメンコ
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

▼熊谷さんの子育て時代の思い出の品
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

人形を揺らす表情は、お父さんの顔です。古銭の変遷を見せながら、子どもに「戦争が始まると硬貨の質も落ちていったんだよ」と説明したり、戦地にいる家族に当てた手紙などについて「つらいこともつらいと書けない時代だったんだよ」と話すときは、社会の先生のよう。「けがにさえ気を付ければ、子どもたちにはチロップ館でいくらでも元気に走り回ってほしい」と話す様子は、地域の子どもたちを見守るおじさんの眼差しです。

▼古銭の変遷を説明する熊谷さん
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

▼戦時中の手紙
廃校校舎にレトロなにぎわい!福島町の不思議な館「チロップ館」

熊谷さんの、古いものへの愛着と、展示環境にかける1つ1つの丁寧な手作業が、展示物に生き生きとした表情を与えているのかもしれません。

体育館は、地域の子どもたちの遊び場としても開放されています。遊びに来ていたグループの1人、福島小学校6年生の男の子は「福島小と吉岡小の子どもが一緒に遊べる場所なんです」と話してくれました。私たちの帰り際には、子どもの手に「痛くない注射だよ」と、注射をかたどった手作りハンコをポンと押してくれた熊谷さん。あふれる遊び心に、また訪れたくなりました。

チロップ館の今後の進展に期待

現在、福島町で集めた古民具もチロップ館に保管されており、熊谷さんは、それらを展示していくために、空き部屋のレイアウトなどを準備中です。「好きなことに取り組むスペースを貸してもらっているので、町の人たちや旅行で訪れた人たちが楽しめる空間にしていきたい」と熊谷さん。また、福島町では、同町で発掘された埋蔵文化財などについても、将来的にチロップ館に管理の委託をしていくことも視野に入れているそうです。正に、チロップ館の今後の発展に注目したいと思います!

チロップ館
住所:北海道松前郡福島町字白符442 [地図]
電話:0139-47-4343
入館料:無料
開館時間:10:00~16:00ごろ
定休日:火曜、金曜
公式ウェブサイト

筆者について

千葉美奈子

千葉美奈子

東京都出身。2012年夏から函館市在住。乳幼児と保護者向けイベントの講師業のほか、総合情報サイト『All About』の乳児育児・絵本ガイド。自身も子育て現役中。初めての北海道生活、函館の空の表情の豊かさは、長年かかって築かれてきた価値観・人生観に大きな影響を与えたようです。道南地方の個性的な魅力に触れるたびに幸せな気持ちに。趣味は料理、パン作り、野球観戦。