トピックス

ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

千葉美奈子
Written by 千葉美奈子

ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

【木古内町】極寒の津軽海峡にふんどし姿の4人の若者が入り、豊漁豊作を祈る木古内町の「寒中みそぎ祭り」。毎年1月13~15日にかけて行われます。1831(天保2)年から行われ、2015年で第185回を迎えた伝統神事の最終日の様子をお伝えします。

3日間にわたる昼夜ない鍛錬「水ごり」

祭りは13日夜の佐女川神社の社殿での参籠(さんろう)報告祭からスタート。行修者(ぎょうしゅうしゃ)と呼ばれる4人の男性たちが、「今年はこのメンバーで御神体を清めて町の繁栄や人々の健康を祈ります」ということを、佐女川神社の女の神様に報告する儀式です。

報告祭が終わると、その夜から昼夜問わず行われる「水ごり」。神に祈りを捧げる前に心身を清めると同時に、最終日の水中みそぎで極寒に耐える体を作る鍛錬です。行修者たちは、本殿の階段下の大きな升のある場所で、ふんどし姿で互いに水をかけ合います。厳しい寒さに肌はピーンと張りつめ、少し触れるだけでひどい痛みを感じるほどの刺激だそうです。水ごりは最終日の15日まで行われ、その後行修者たちは、津軽海峡での水中みそぎを迎えます。

4年間「けがれのない身体」を求められる行修者たち

2015年の行修者は、宮下知哉さん(23)、高橋駿さん(23)、目時基史さん(23)、新井田真一さん(16)。今年の新メンバー、最年少の新井田さんは知内高校の1年生です(写真下右端が最年少の新井田さん)。

ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

木古内町観光協会によると、4人の行修者は、4年間かけて「弁財天」「山の神」「稲荷」「別当」の順に4つの役目を経験し、卒業していきます。行修者には立候補によるなり手が一番だそうですが、出てこないときは、神社がふさわしいと思う人を選んで打診することも。それでも、スムーズに決まる年ばかりではないようです。

その理由の1つは、行修者に課せられる生活上の大きな制限。極寒に3日間にわたり肌をさらし、冷水を浴びる辛さだけでなく、けがれのない身体で4年間任務を全うすることが求められ、結婚もタブーとのこと。本人はもちろん、ご両親などの心配も小さくないそうです。

最終日の朝、水中みそぎを控えた行修者たち

今回は、水中みそぎが行われる最終日に現地に行きました。朝9時すぎに佐女川神社に行くと、本殿で出御祭を待つ行修者の方々の姿が。時折笑顔も覗く穏やかな空気が漂います。10時半ごろにみそぎウォーキングがスタート。佐女川神社からみそぎ浜近くの屋内施設まで、白装束姿で御神体を抱いた行修者と関係者の方々が約30分間練り歩きます。

▼出御祭の支度と、出御祭を待つ行修者たち
ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」 ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

▼佐女川神社からみそぎ浜までのみそぎウォーク
ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」
ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

屋内施設でいったん休憩した後、いよいよ水中みそぎ。多くの観客と海からも大漁旗を掲げた8隻の漁船が見守る中、11時50分ごろ、ふんどし姿になった4人が御神体を抱いて姿を現しました。

ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

いよいよ水中みそぎ

この時点の気温は4度、海水温は8度。この時期としては高い気温で陽射しもあるため、たくさん着込んでいる観客には暖かさを感じるほどですが、行修者の方々にとっては厳しい寒さであることには変わりありません。

4人で一斉に上げたかけ声とともに、勢いよく海へ泳ぐように進んでいきます。一度浜辺の方に戻り、御神体を水面に浮かべて、向かい合って激しく水をかけ合います。最後は、海に向かって手を合わせて祈りを捧げました。

ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」
ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

浜辺に上がってからの水ごりでは、冷水が肌に叩きつけられる様子を間近に見ました。打ちつけられた水をびくともせず跳ね返す体と動じない表情。最後には観客に向かっても水が投げかけられました。行修者のかける水を浴びると、家内安全、無病息災などにご利益があるといわれているそうです。

ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

16歳の新井田さんは、中学1年の我が家の長男と3歳しか違いません。想像していたよりも細身な身体で初めての水中みそぎに臨む姿、4人の青年たちが精神を集中して寒さや冷たさに表情も変えずに町の人々のために祈りを捧げる姿を見ていたら、思わず目の奥が熱くなってきてしまいました。きっと行修者を経験したということは、かけがえのない誇りとして皆さんの中に残り、受け継がれていくのでしょう。

▼映像で見る寒中みそぎ祭りのハイライト

グルメフェアも開催

みそぎ浜近くのみそぎ公園では、木古内の味覚「みそぎ鍋」や「こうこう汁」、「はこだて和牛カレー」を味わえるコーナーも。みそぎ浜の海水を使って作られた「みそぎの塩」(宿『きたかい』の開発)のサンプルも、水ごりの際に使われたわらとセットで無料で配られました。

▼みそぎ浜の海水で作った「みそぎの塩」とはこだて和牛カレー
ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」 ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

▼鮭、カニのすり身、鶏肉などが入った「みそぎ鍋」と、はこだて和牛、長芋などが入った「こうこう汁」
ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」 ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

2016年度末に北海道新幹線が開通すると、木古内駅が新幹線の北海道の玄関口になります。会場内には新幹線「はやぶさ」の先頭車両の前部の実物サイズ(幅と高さ4m、長さ16m)の雪像も展示。滑り台にもなっている雪像は、多くの子どもたちでにぎわっていました。

ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」 ふんどし姿で極寒の海へ!1831年から続く木古内伝統神事「寒中みそぎ」

木古内町の寒中みそぎ祭り、来年もぜひ来たいです。

AirBookmark

筆者について

千葉美奈子

千葉美奈子

東京都出身。2012年夏から函館市在住。乳幼児と保護者向けイベントの講師業のほか、総合情報サイト『All About』の乳児育児・絵本ガイド。自身も子育て現役中。初めての北海道生活、函館の空の表情の豊かさは、長年かかって築かれてきた価値観・人生観に大きな影響を与えたようです。道南地方の個性的な魅力に触れるたびに幸せな気持ちに。趣味は料理、パン作り、野球観戦。