冬の支援制度「燃料手当」「福祉灯油」って何?

冬は経済的に苦しい家庭が多いのが雪国です。灯油代、オール電化の家ならば電気代がかさむ12月~3月です。さらに車の燃費も夏に比べて悪くなります。そんな状況に嬉しい支援制度が「福祉灯油」や「燃料手当」です。前者は行政の支援制度、後者は勤め先の企業などが給与に上乗せして支給してくれる制度です。

燃料手当とは?

「燃料手当」とは、北海道で見られる独特で特殊な支給制度です。ご年配の方々には「暖房手当」「石炭手当」と呼ぶ人もいます。その名のとおり、勤め先で正社員に対して(が多い)、冬季つまり10月~3月の約6ヶ月間の暖房燃料費を支給してくれます。

これは自治体が公務員に対し、または企業が正社員の従業員に対し、給料のときに渡してくれます。一方同じような手当ての一つに「寒冷地手当」もあります。これは、灯油に限らず冬季にかかるであろう生活費の一部に当ててね、という手当てで、道職員など公務員向けとして、一応は区別されているようです。

燃料手当の支給方法は?

支給の方法はこれまた企業によってさまざまで、一年に1回一括支給されたり(これが最も多く、ほとんどが10月や11月に支給される)、毎月の給与に上乗せしてくれたり、はたまた現物支給だったり。

といっても、北海道の会社全てにこの制度があるわけでもなく、もともとないところや、廃止されたところもあるし、道外の企業(つまり北海道に支社・支店がある場合)に至ってはそんな配慮はほとんどないのが普通です。

燃料手当の支給相場と支給企業割合

支給している会社の割合はどれくらいなの?という疑問がありますが、燃料現物支給の会社は1割程度。支給しないところも2割ほどあります。その他は、つまり全体の7割程度の企業では、現金による支給がなされているとの事です。

さらに、支給される相場はどれくらいなの?という疑問ですが、世帯主を雇用している場合と独身世帯、世帯主ではない場合でこれまた違いが生じます。

以下は、北海道経営者協会の調査や商工会議所の調査やさまざまな人の声などを参考にした一般的な傾向(平均値)ですが、世帯主に支給する燃料手当は約8~12万円ほど、独身者には約5~7万円、世帯主ではない場合は約3~5万円です。何年も固定でやってきたところもあれば、毎年変動することもしばしばです。

上記の相場や支給会社の割合は、道内でも地域により差があるようですし、原油価格高騰があれば高くなったり、業種によっても変わってくるとの事です(特に卸売業、鉄鋼業などでは支給額が多く、小売業は少ない傾向にある)。また、会社によっては、世帯主にのみ支給される場合もあり、一概には言えないのが現状です。まぁ、燃料手当が支給されない企業もあるわけですから、支給されるだけうれしいと思いましょう。

福祉灯油制度とは?

一方、行政の制度として福祉灯油制度があります。市町村によっては名称が異なり、「福祉灯油制度」のほか「福祉灯油購入費助成(深川市)」「ぬくもり助成金(釧路市)」「老人家庭等福祉灯油代支給事業(幌加内町)」「福祉灯油見舞金」などがあります。灯油代というよりも冬季生活費支給に近いものがあります。

早い話が「灯油代支給制度」です。支給対象となるのは資金繰りが苦しい低所得世帯。心身障害者のいる世帯や高齢者の世帯、母子世帯も対象となる都市もあります。その他規準も幾つかあります。

心身障害者の世帯と高齢世帯は同じ量が支給され、母子家庭はそれよりも少ないこともありますし、同額の場合もあります。上限が一万円までとされていたり、交付世帯は全て3000円など、量は400リットルを、150リットルを、などさまざまです。

福祉灯油の歴史とは?

この制度は1974年に北海道が設置した制度。最初の頃は、「3千円助成券(500円灯油券6枚)」といったものを交付していました。1998年度から北海道としてはやらなくなり、市町村単位で制度を引き継いで行うようになっています(1998年からは71市町村が実施)。しかし北海道から、総支給百万円以上の市町村限定で、半分の補助金がしっかり出ています(灯油価格高騰の2007年には20万円以上に引き下げられました)。

最近では、この福祉灯油制度自体を廃止してしまうケースが目立ってきているとの事。存続させるか廃止するかはいまや各自治体が決めることができるため、財政難で困っている市町村では廃止の方向に進むことがほとんどです。2006年には50市町村ほどになりました。以下主な実施市町村(2005年末現在)。

釧路市 / 帯広市 / 稚内市 / 深川市 / 白糠町 / 幌加内町 / 寿都町 / 蘭越町 / 東神楽町 / ニセコ町 / 泊村 / 神恵内村
※また珍しいケースとして自治体以外で取り組みをしているところもあります。たとえば、留萌市では留萌市社会福祉協議会が福祉灯油券交付をしていますし、音更町JA木野では高齢者や障害者向けに灯油代をリッター5円引きしていました(2005年シーズン)。

2007・原油価格高騰の影響

2007年から2008年シーズンには、それ以前から続いてきた原油価格高騰のあおりを受け、上述の福祉灯油を復活させるところがでてきました。180市町村あった道内自治体のうち4市町(札幌市、後志管内積丹町、仁木町、留萌管内天塩町)を除く176市町村が、通常あるいは緊急実施しました。うち生活保護世帯にも支給するのは24市町村。

札幌市では福祉灯油制度導入は見送ったものの、非課税世帯では公衆浴場入浴の際に割り引く、省エネのペレットストーブ購入支援、応急援護資金条件緩和、中小企業には原油高騰緊急対策資金創設などを決定。

稚内市では福祉灯油制度をすでに実施しているものの、支給対象者に低所得高齢者にも助成を決定。稚内では約1000世帯対象に各100リットルの灯油券を支給することになります。雄武町でも灯油助成を開始。

釧路市ぬくもり助成はすでに毎年実施している福祉灯油制度。本年は4200世帯に1世帯あたり1000円プラスして3000円助成することになりました(阿寒・音別地区では5000円、翌年同額に)。

岩見沢市では、高齢者や母子家庭世帯に灯油購入券4000円、認可保育園や幼稚園に4~6万円を補助。雨竜町では初めて灯油購入券を導入し、高齢者世帯などに100リットルの灯油券を支給。

三笠市では8年ぶりに福祉灯油制度を復活。2008年2月に1224世帯を対象に各4000円を助成券発行。砂川市でも17年ぶりに福祉灯油制度を実施。2007年12月から1ヶ月間1600世帯に各5000円助成券を発行。

後志管内泊村では従来の福祉灯油対象外世帯にも1世帯あたり1万円の暖房助成券を配布。また2漁協にも漁船燃料費を助成する初めての試みを行う。十勝管内大樹町でも福祉灯油導入を決定したが、同町では香島水産社長が独自に福祉灯油を実施してきた。

鹿部町商工会では、期間限定プレミア商品券5000円を発行しガソリンや灯油購入を助成。また、灯油高騰を受けて、灯油窃盗事件多発しています。この事態になっても石油備蓄は温存中です。

以上、北海道の冬の支援制度をご紹介しました。「燃料手当」として給料に上乗せして支給される制度、行政が住民に対して支援する制度がありました。北国に住む際は参考になさってください。