今日も自家製酵母パンとスープが待っている。士別市のカフェ「cotori」

北海道士別市、市街地からは少し離れた東側の丘の中腹に、「bakery&cafe cotori」はあります。国道に面するわけでもなければ、遠くから建物が目立つとも言えない。だけどcotoriさんは、その味を、その空間を目指してやってくるお客さんでいつも賑やかです。

まるで小鳥のように、と言えば失礼かもしれませんが、cotoriさんにやってくるお客さんは木々に立ち寄るように憩い、木の実をついばむように時間をかけて食事を楽しみます。この空間の愛らしさ、憩いの場としての雰囲気は、どのように作られているのでしょうか。

板張りの赤が可愛いお店

お店は赤い板張りの壁が特徴的。お店に続くドアへと進むと、薪にまぎれて置いてある可愛い無垢木の表札が。

扉を開けるとすぐにパンの陳列ケースがあります。並んでいるのは、一週間かけて作った、自家製酵母を使用したパン。

どっしりと重みのあるパンは密度が高く、どれも噛めば噛むほど素材の味が口に広がります。噛み応えのある自家製酵母パンは、ナチュラルな道産小麦の風味を引き出すあら塩とてんさい糖が基本の味。強い甘みも塩気もありません。

そこへ、種類ごとにフルーツやナッツのほのかな甘味、ピリッとしたペッパーの香りや、チーズの塩気が乗せられて、小麦の味はさらに引き立ちます。

このパンを目当てに来店し持ち帰る方もいれば、奥のカフェスペースでゆっくり寛ぐ方も。

シンプルなメニューだけど飽きない味

少し、店内でいただけるメニューのご紹介をさせてください。

こちらはスープとパンのセット(パンプキンスープにフルーツパンの組み合わせ)。400円のスープにプラス100円でお好みのパンが食べられる、お得なメニューです。

スープは日替わりで、内容はそのときどきの野菜の様子などを見て前日に決めるそうです。「数えたことないけど、シンプルにその素材で作るので……」と指折り数える様子を見るに、今まで作ったもので10種類程度は優にありそうです。毎回違うスープということもあるのはもちろんですが、なぜか3回連続同じスープというお客さんもいらっしゃったそう。

ほろりと口でとけるチーズケーキと特製ブレンドコーヒーの相性は抜群。

火曜日と土曜日は特製カレーもいただけます。トマトの酸味が美味しいチキンカレーです。

 立ち寄りたくなるお店の雰囲気はどこから

お店屋さんを持つのは、オーナーである堂高充子さんの長年の夢だったそうです。時間をかけて形作られたこのお店は、オーナーが作るパンのように一つひとつの素材が丁寧に選ばれ、全体が調和しています。

外側の赤い板張りと相まって、お店全体に暖かい印象を与えるのはこの薪ストーブ。この日、ストーブの上では小豆が煮炊きされていました。

横長に切り取られた窓がある奥の椅子に座れば、木々に戯れる小鳥が見えます。

お知り合いの雑貨屋さんにレイアウトを手伝ってもらったという雑貨の数々はオーナーのコレクション。壁の珪藻土はご自分で塗られたと言います。どこを切り取っても可愛らしい店内にはよそよそしさがなく、愛情にあふれ、手がかかっています。

パンも、スープも、お店の中も、オーナーの丁寧な気持ちが表れていて、ついつい長居してしまう。一人でゆったり食事を楽しむもよし、お仲間と話に花を咲かせるもよし。贅沢な時間と味にひたれば、一日が整う感覚が味わえます。

会話も魅力のカフェことり

味を求める人、場所を求める人が立ち寄って、たいてい皆さん、少しお話して帰っていきます。

オーナーとの会話も、cotoriさんに行きたくなる理由の一つ。会計のとき、店の仕事に少し余裕があるとき、オーナーはよくお客さんに話しかけていらっしゃいます。つい長話になったり、ひょんな繋がりから他のお客さんと話がはずんだりする機会もしばしば。

パンを買うついでに近況を話す方、中にはお土産を持ってくる方も。食材はパンに使ってくれたり、スープにしてくれたりすることもあるから嬉しい。

ご自分で手をかけられるほか、人の手も受け取ってくれるcotoriさんは、小柄な樹木のようにそこで待っていて、お客さんたちの居場所をつくっているようです。

「誰かのとなりにコトリと寄り添えるように」という思いを込めてつけられたというお店の名前はみごとに実現し、多くの人に憩いの場を提供しています。お近くにいらっしゃった方はぜひ、一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

bakery&cafe cotori
所在地:北海道士別市東11条2丁目3208-63
TEL:0165-29-2058
営業時間:10時~17時(月・火曜日定休)
公式サイト
Facebookページ

(2023年3月29日:店舗情報を更新しました。)