街路樹は ナント柿の木?! 全国的にも珍しい柿並木が伊達市にあった

街路樹といえば、どんな樹木を思い浮かべますか? イチョウ、サクラ、ケヤキ、マツと答える人が多いかもしれません。道民なら、ナナカマドやシラカバも北海道らしい街路樹として挙げる人が多いでしょうか。

そんな中、全国的にも珍しい柿の木の街路樹が道内にあります。それは伊達市。10月下旬になると、オレンジ色の実をつけて市民の目を楽しませています。なぜ、北海道という寒い地方で柿の木なのでしょうか。その謎に迫ります。

再現された歴史的なストリートにマッチした柿の木

柿の木の街路樹があるのは、伊達市の中心部、その市役所通り(歴史街道)。国道37号線と南大通間の約500メートル区間の両側に、大小さまざまな柿の木がずらりと並んでいます(ただし南大通以南の通りの街路樹はナナカマド)。

▼こちらが市役所通り

この区間は電線の地中化がすすめられ、通り沿いの建物は白壁と瓦屋根で統一。銀行や信用金庫の建物、バス停までもが瓦屋根を採用しています。通りを歩くと、ここは北海道?と思わずにはいられません。そんな歴史的な景観が楽しめる通りに、柿の木が街路樹として植えられているのです。

柿の木が植栽されたのは1994年(平成6年)のこと。旧市立西胆振農業センターで試験栽培した富有柿を中心に60本もの柿の木を道路脇に植樹しました(片側30本ほど)。現在は3~6メートルほどの高さに成長しました。

▼たわわに実る街路樹の柿の木

市役所通り以外にも伊達市観光物産館(道の駅だて歴史の杜)、長和小学校、また自宅の庭に柿の木が植えられていることも。伊達市のカントリーサインには、柿の木が描かれています。それほど伊達市にとって柿の木はシンボル的な存在であり、柿の木の実がなるのは秋の風物詩なのです。ではなぜ伊達市に柿の木の街路樹が誕生したのでしょうか。

「北の湘南」だから育った柿の木

そもそも柿の木は本州などを原産地とする落葉広葉樹で、亜熱帯性の植物であるため寒さに弱い種です。そのため北海道内では自生していません。

そんな柿の木が育つ北限の地とされてきたのが、伊達市です(現在、実際には札幌圏でも育つことが確認されています)。噴火湾に面する伊達市は「北の湘南」と呼ばれるほど、道内では比較的温暖な気候で知られます。青森県が北限とされてきた柿の木が育つ気候だったわけです。

伊達市に柿の木が持ち込まれた最も古い記録は1948年(昭和23年)。伊達町(当時)の町史には「柿34本、貫高(収穫高)68貫、価格13,600円」との記録があり、この年にすでに、柿の木が伊達市内で育っていたことが記録されています(博物館学資料『渋柿づくりによる地域資源の再発見と活用―渋柿プロジェクト―』より)。しかし「柿」と明示されてはいませんが、明治時代初期に仙台藩一門亘理伊達家が移住・開拓した際、伊達邦成公が本州の植物を屋敷内に持ち込んで栽培していたとの記録はあり、この頃から柿も栽培されていたと考えられます。

先述した通り、柿の木の街路樹ができたのは1994年。伊達市と柿の深い結びつきを生かすべく、全国的にも珍しい柿並木をつくろうということになりました。また同時期、その移植元であった旧西胆振農業センターでは柿の木の苗木を一般市民にも配布し、自宅の庭に広く植えられるきっかけとなりました。このように、伊達市では現代に至るまで柿の木が身近に存在したのです。

そして現代、渋柿づくりや渋柿を使ったものづくりを行う渋柿プロジェクトが始動しているほか、実がたわわに実る11月中旬には地元の小学生が街路樹の柿の木から実を収穫体験する「あいあい柿まつり」が、市役所通り商店街振興組合主催のもと開催されています。

色づいた柿の木の実が見られるのは、毎年10月下旬~収穫が行われる11月中旬までです。道内唯一の柿並木は北限の柿並木。珍しい柿の木の街路樹を観に出かけてみませんか?