日本の滝百選!島牧村「賀老の滝」と「ドラゴンウォーター」を求めて

少し前にマイナスイオンという言葉が知られるようになり、景観はもとより涼を求め、滝を見に行く人が全国的に増えたようです。
滝は水が落ちる迫力ある様子から、名前に「龍」という単語がついたり、形容されたりします。
古来、空や地上の水を司る神様を「龍神」と呼んでいる事も理由の一つでしょう。

北海道にも「龍」にまつわる伝説を持つ滝があります。
島牧村の「賀老の滝」。千走川(ちはせがわ)の上流にある滝で、別名「龍神の滝」、「飛龍の滝」とも呼ばれています。
1991年(平成3年)に、日本の滝百選に選定されておりますし、この一帯も1972年(昭和47年)に狩場茂津多道立自然公園に指定されている場所です。
調べてみると他にも面白そうな場所があるようなので、早速行ってみました。

龍神伝説

昔、小太郎という青年が龍神の住むという大きな滝のそばで怪我をした小鹿を助けた。
数年が経ち、小太郎は金山奉行所を預かるまでになるが、当時、幕府の税の取り立てが厳しく、
金を隠そうと考えた藩主の命で、隠し場所を探して滝の前へ行くと、以前助けた鹿が現れ滝壺を指し示す仕草をする。
すると龍神が現れ、小太郎の優しさに応える為、金を守ることを約束。小太郎は滝壺へ金を隠した。
しかし、幕府はそのことを知り探索に行くが、家臣が滝壺へ近づくと龍神が現れ、嵐を呼び大洪水が襲いかかる。
皆は一目散に退散し、その後も金を捕ろうとして滝壺に近づく者は、ことごとく龍神の怒りに触れ、
誰一人としてその埋蔵金を手にすることはなかった。
この滝には普通あるはずの滝壺が無い、それはまだ金が埋められているからだと言われている。

まずは賀老高原へ向かって

国道229号線(追分ソーランライン)から左手に見える看板を左に入り、林道を14km程行くと今回の目的地「賀老の滝」があります。
幅の狭い道ですが舗装されており、けっこう快適に進めますが、途中さらに狭くなり急カーブの連続する区間があるので、対向車等に十分注意しなければなりません。

現地は賀老高原駐車場となっていて、トイレ等の施設があり綺麗に整備されています。
道路を挟んで向かい側は、賀老高原キャンプ場です。
賀老の滝まではこの駐車場から20~30分ほど歩くことになるのですが、その前に寄りたいところがあります。

▼遊歩道等けっこう多いので案内図はよく確認しておきましょう

ドラゴンウォーターって何?

駐車場よりさらに車で500m程先へ行ったところに、ドラゴンウォーターが湧いている場所があるようです。
ドラゴンウォーターって何? 初めて聞くとそう思うことでしょう。
天然に湧き出ている炭酸水のことのようで、龍神様の御神水とされているようです。
道路脇にある駐車スペースから、「伝説の道」という名の森の中へ続く道を100m程行くと、
「ドラゴンテール広場」という開けた場所に出ます。
小屋と鳥居、さらには龍神石碑が建っており、先に述べた「龍神伝説」を伝えています。

▼伝説の道を行くとドラゴンテール広場。奥に龍神石碑が見えます

広場から50mほど進むと看板が立っており、その指示する通り行くと簡単にたどり着けました。
岩の間からポコポコと湧く炭酸水。
一見ただの綺麗な湧き水のように見えますが、口に含むと炭酸であることがわかります。
鉄分も多く含んでおり、慢性消化器病、便秘、貧血に効能があるようですが、
実際のところ、かなり鉄臭いのでゴクゴク飲むことはできませんでした。

▼川へ降りて上流を見ると看板があります

▼絶えずぽこぽこ湧いています。コップが設置してあり、飲んでみることができます

日本最大面積を誇るブナ原生林

賀老高原駐車場にあった案内図には、上流部にも駐車場があり、賀老の滝を上から見下ろせる場所、
「賀老の滝第二展望台」があるように書いてありましたので、そちらへ移動します。

駐車場から、「ブナ遺伝子保存林遊歩道」へ入り「昇龍の橋」を渡り先へ進むと、周りがブナの木で囲まれ薄暗く細い道となります。
ブナ原生林の面積日本一(10,700ha)なだけあり、道には苔がびっしりと生えていて、ブナの森の保水力を感じさせる瑞々しい原生林を堪能できます。
途中、真っ黒いカタツムリを発見。
ブドウマイマイという名前らしく、この辺りでは多く生息しているようです。

▼昇龍の橋

▼なかなか見ることのない真っ黒なカタツムリ、ブドウマイマイ

「賀老の滝第二展望台」に到着しましたが、ここは木々の葉が落ちる10月末頃に来るのが良さそうです。
しかし、この遊歩道は「太古の道」とも呼ばれているようで、静かでいて力強い生命力を感じることができ、
時間があるなら是非、散策してみることをお勧めします。

▼第二展望台より。上から覗き込む角度なので、木の葉がない時期は面白そうです

飛龍、賀老の滝

さあ色々と寄り道しましたが、今回一番のお目当て、賀老の滝へ向かいます。
「賀老高原駐車場」へ戻り、案内板にある通り、「ふるさと林道」を500m程進み、崖を下る「滝見遊歩道」へ入っていきます。

滝見遊歩道は綺麗に整備されていますので、非常に歩きやすいですが、
標高差約100mの崖に葛折り作られた道を降りていくので、距離は約700m、
行きは良いですが帰りの登りは、かなりの気合が必要になりますので覚悟しましょう(笑)。

約20分ほど下って行くと、「賀老の滝第一展望台」に到着。
滝からは少し離れていますが、賀老の滝全貌を見ることができます。
さすが高さ70m、幅35mの大瀑布、離れた場所からでも見応えがあります。
5月の雪解けの後に来ると、100m以上離れたこの展望台まで水飛沫が飛んでくるというのですから驚きです。

▼第一展望台より

▼川からの全景

▼左下の人で、滝の大きさがわかるでしょう

ここまで来るにも、登山靴のようなしっかりとした靴を履くことをお勧めします。
なんせ、帰りは登山のようなものですから(笑)。
さらに今回は滝のすぐ下まで行くつもりでしたので、靴は濡れた岩にも滑らないよう、底がフェルトでできた沢登り用の靴で行きました。

川に転がる大きな岩を越え、途中川を渡り、滝のすぐ下まで移動。
さすがに、滝の大きさ、迫力には圧倒されます。
「龍神伝説」にもあった通り、滝壺はありません。
そのため、落ちてきた大量の水が下に転がる岩にあたり、ものすごい水煙を上げています。
少し離れた場所でも身体の周りにつねに霧のように水飛沫が舞っているので、マイナスイオンどころではありません(笑)。

▼滝の直下へ……

▼滝壺がなく水飛沫がすごい

迫力ある原始の自然を体感できる場所ですので、ヒグマには注意しなければいけませんが、一度は見ておく価値がある場所です。