羊蹄山山麓には「半月湖」という美しい湖がある? 20分かけて行ってみた


【倶知安町】 え、羊蹄山の麓に湖が?と驚かれた方もいるかもしれない。羊蹄山の山麓、倶知安町側に、小さいながらも美しい「半月湖」という湖があるのである。湖畔に辿り着くまでは大変苦労するが、静寂に包まれた異空間に迷い込んだかのようにも感じられる癒されスポットだったので、ご紹介したい。

そもそも半月湖ってどんな湖?

半月湖は、その名の通り、上空から見ると半月のように見えることから命名された。ニセコプロモーションボードの「半月湖ガイドマップ」によれば、蝦夷富士登山会会長河合篤叙氏が命名、1907年頃から定着していったという。


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海抜は約270m。サイズは小さいながら最も深いところで18.2m、平均水深4m。水位は夏に低く5月に高くなる。もとは羊蹄山の側火山活動で誕生した火口湖なのだが、できた当初はほぼ円形だった。しかしその中に熔岩円頂丘が噴出し、円形だった湖を二分した。これによって、大きい方は半月型の半月湖、そして北側に分断された小さいほうの湖は新月湖となった。

現在は、新月湖だった場所に水はなく、跡地扱いとなっている。相方を失った半月湖だが、火口を取り囲むように一周できる散策路が整備されており、その形はほぼ円形。その形だけが、当初の火口湖の姿を今に伝えている。

半月湖畔に行くには?

半月湖畔自然公園入口には十分な数の駐車場が整備されている。そこから周遊散策路を歩いて湖畔に行くのだが、駐車場からは周遊路を左手に進もう(右手に進むと遠回りになる)。

▼最初はポーズをとるほど余裕の三村遙佳ちゃんも……



最初の10分程度は広くなだらかな道で歩きやすいのだが、途中の分岐点で湖畔へ下りると途端に道幅も狭くなり、下り坂がひたすら続く。まだ下るの?というほどひたすら下る。湖面がずーっとずーっと下のほうにあるのが不思議である。これぞまさに火口湖!大きな水たまりのある穴に下りていく感覚だ。ぬかるみや滑りやすい斜面もあるので注意しながら下ろう。

▼下っていくだけなのになぜか疲れてきた……




湖畔の急斜面に沿うように下っていくこと約10分、駐車場から約20分、ようやく湖畔到着。湖畔に広場があるわけではなく、階段状になっているだけという狭い空間だったが、周囲を火口の斜面に囲まれたひっそりとした空間だ。晴れていれば右手に羊蹄山の山頂ものぞく。

この静かな湖畔がかつては観光客でにぎわっていた?

今でこそ訪れる人も少なく静かな環境だが、「戦前には鯉の養殖が行われたり、貸しボートもあって観光客でにぎわっていた」との説明もある。この静かな湖にボートが浮かぶ姿はあまりイメージできないが、かつては多くの人が急な坂を下って湖畔に降り立ったのだろう。恐らくそんな活気のあった時期だろうか、作家・林芙美子氏も1934年に訪れ、その美しい風景を「七つの燈」「田園日記」の中で描いているということなので、気になった方は是非ご覧いただきたい。

なお、湖畔へ続く散策路はここで行き止まりで、湖畔に降り立つことができるのはこのルートだけだ。湖畔周遊路のほうは一周すると約45分かかる。春には新緑を、秋には紅葉を楽しみながらゆっくりと自然を散策するのもよいし、ゆっくりと半月湖野営場キャンプ場で一泊してじっくり楽しむのもよいだろう。