室蘭の海水浴場は音が鳴る?! イタンキ浜で鳴り砂を鳴らせてみよう!

【室蘭市】室蘭には、アイヌ語で「椀」を意味する「イタンキ浜」という海水浴場がある。また、サーフィンのメッカであり、パラグライダーもできる場所としても知られる。

しかし、イタンキ浜の楽しみ方はそれだけではない。砂浜が「キュッキュッ」と鳴く「鳴り砂(鳴き砂)」の名所でもあるのだ。きれいであることが必須条件の鳴り砂。すぐそばには室蘭市街地が広がるが、これだけ市街地が近くにありながら、鳴り砂が維持されているのは極めて珍しいという。ところで、イタンキ浜ではなぜ音が鳴るのだろうか。どうすれば鳴るのだろうか。

イタンキ浜の砂が鳴るのはなぜ?

アイヌは昔からこの砂浜を「ハワノタ(声のする砂浜)」「フムシオタ(音のする砂浜)」などと呼んできた。そこで、1986年9月に、浜一帯を調査したところ、道内屈指、日本でも有数の鳴り砂であることが確認された。

全国各地に鳴り砂と呼ばれる海岸はあるが、砂が鳴くには、(1)汚染されていないきれいな海であること、(2)石英砂であること、(3)砂が丸みを帯びており、粒のサイズが0.5㎜くらいまででそろっていること、が条件とされている。

イタンキ浜はこれらの条件を満たしている。近隣の火山で誕生した石英が川を下って太平洋に流れ込み、それがイタンキ浜にやってきたもの。条件がそろえば砂同士の摩擦音で「キュッキュッ」と音が鳴る。まさに、自然が作り出した天然のスポットといえるだろう。

イタンキ浜の鳴り砂を鳴かせるには?

イタンキ浜の鳴り砂で実際に音を鳴らせてみよう。まずは場所。イタンキ浜全体が鳴り砂ではあるが、イタンキ浜に詳しい人によれば、くじら半島のある海水浴場側よりは、トッカリショ・地球岬側の海岸のほうが鳴りやすいという。

▼トッカリショから見るイタンキ浜。手前側に来れば鳴る確率が高いかも?

また、気象条件も関係する。雨の日は難しいし、砂浜が汚れてしまっている場合は鳴ることが少ない。砂浜の色合いが白っぽい乾いた砂浜になっている部分で、潮が引いた後であるとより好都合。つまり、波打ち際から続く黒っぽい砂浜が白っぽく変わるあたりが狙い目だそうだ。それよりも陸地側だと汚れも蓄積されてしまっているので鳴りにくい。

▼映像:実際にイタンキ浜で鳴り砂を鳴らせてみた。海水浴場側のため無理矢理鳴らせています

イタンキ浜が鳴り砂であり続けるためには、打ち上げられるゴミの除去をはじめ、汚れをなくす努力をしなければならない。そこで、鳴り砂確認から10年たった1997年3月には「室蘭イタンキ浜鳴り砂を守る会」が発足、イタンキ浜の鳴り砂を守るための活動を開始した。浜の清掃活動は夏季に毎月会員が行うほか、一般市民らが参加しての清掃も行われる。

このような地道な努力で今でもイタンキ浜は鳴くのである。そのことに感謝しつつ、是非イタンキ浜で、良く鳴る鳴り砂ベストポジションを見つけに行ってもらいたい。

イタンキ浜の「イタンキ」はアイヌ語の椀からきている。日高地方の人々が飢饉の際に食物を求めてここ室蘭までたどり着いたが、沖合に見えた鯨(実際には岩盤だった)が打ち上げられるのを待っている間、焚火の流木が底をつき、ついにはお椀まで燃やしてしまったことで、餓死してしまったという悲しい伝説が残っている。さらに、室蘭に連行されてきた中国人強制労働者1800人のうち一部の人たち125人の遺骨が戦後になってこの浜で発掘されたという(1954年10月9日)。これをイタンキ浜事件と呼ぶ。なお、2006年にはJR東室蘭駅からの駅前通に「鳴り砂通り」が誕生した。