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和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

地下鉄東西線バスセンター前駅より徒歩8分、サッポロファクトリーのアトリウム東側出口すぐの所に、ある歴史的建造物がひっそりと佇んでいることをご存じでしょうか。「札幌市旧永山武四郎邸及び札幌市旧三菱鉱業寮」です。

何やら長ったらしい名前だと思われるかもしれませんが、つまりは個人の私邸と三菱鉱業の寮がくっついているというもの。どういったいわれがあるのか、歴史を遡ってみましょう。

和洋入り乱れる明治建築の面白さがここに

▼札幌市旧永山武四郎邸(以下旧永山邸)
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

まずは永山武四郎という人物について、説明しておく必要があるでしょう。永山武四郎は、1837(天保8)年に薩摩藩士の四男として鹿児島で生まれました。1871(明治4)年には陸軍大尉となり、その翌年、北海道の開拓史出仕に転じました。北海道に渡った武四郎は、開拓次官黒田清隆に屯田兵設置の必要性を述べ、これにより屯田兵制度が定められたといいます。

▼廊下もなく和室と洋室が繋がった珍しい造り
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

そんな武四郎が札幌で暮らしていたのが、旧永山邸です。はっきりとした創建年を示す史料も設計図も残されていませんが、1880(明治13)年竣功の清華亭や豊平館と酷似した天井中心飾(メダリオン)が使われていることから、同じ頃の創建だと考えられています。

▼シャンデリアの元にある、紅葉を模したメダリオン
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

1887(明治20)年に出版された『札幌繁栄図録』という書籍の中にも旧永山邸が登場します。その絵図によれば、現存する建物からさらに大きな切妻平屋の棟が続き、広い敷地の中には馬小屋などもあったようです。

▼和室から洋室を見ると、扉の木枠デザインが反対側とは異なることが分かる
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

旧永山邸の特徴といえば、何と言っても和洋の文化がさまざまな形でぶつかり合っているところ。廊下もなく直接連結した和洋の接客室しかり、和室の出窓しかり。洋風の文化を導入する課程で、試行錯誤していた様がよく分かります。

▼和室なのに洋風の出窓が
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また、和室から見る庭も見事です。この場所から、春には桜、秋には紅葉、冬には雪景色を愛でていたであろう武四郎の視線に寄り添ってみるのも一興です。

▼和室から臨む庭の風景
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▼春には見事な満開の桜も(提供:札幌市旧永山武四郎邸及び札幌市旧三菱鉱業寮)
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その後、武四郎は男爵を授けられたり陸軍中将に任ぜられたり、東京と北海道を行き来する活躍を見せますが、1904(明治37)年に68歳の生涯を終えます。遺言通り、遺体は札幌の豊平墓地に葬られたそうです。(現在は里塚霊園に改葬)

寮として生まれ変わった旧永山邸

永山武四郎亡き後の1911(明治44)年、かの私邸は三菱合資会社が取得。三菱鉱業寮として使用されることになりました。

▼札幌市旧三菱鉱業寮
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

現存している新館は、1937(昭和12)年頃の建築と推定されています。モダンな建築スタイルで、旧永山邸とは約5メートルほどの廊下で連絡しています。

▼1階にある電話室が、いかにも寮らしい名残り
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

1階の展示室は「れきしの部屋」と名付けられ、三菱鉱業や炭鉱の歴史などを振り返ることができます。

▼1階の「れきしの部屋」
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

ちなみに当時は一流シェフが寮長を務めていたということで、特別な時にはミラノ風カツレツなども振る舞われたのだそう。

▼ボランティアの方々によるギャラリー
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2階に上がると、札幌軟石を使った建物の写真や、旧永山邸をスケッチしたものなど、ちょっとしたギャラリーがあります。

▼2階の「まちの図書室」
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

2階には他に、さっぽろ文庫などを揃えた「まちの図書室」と名付けられた部屋もあります。貸し出しは行っていませんが、自由に手に取って読めるとあって、ここで半日ほどを過ごす人もいるのだとか。また、和室の貸室も数部屋あり、外国語講座、お茶会、赤ちゃんの体操教室など、さまざまな用途で使われているようです。

▼不思議と落ち着く空間
和洋が入り乱れる!札幌の明治建築「旧永山武四郎邸・旧三菱鉱業寮」

旧永山邸も旧三菱鉱業寮も、入館は無料。誰でも気軽に訪れることができます。建築に興味がある人はもちろん、そうでない人も、その空間に身を置くだけで不思議と心が安らぐのを感じるはず。季節ごとに訪れて、建物の中から庭をのんびり眺めるだけでも、きっとリフレッシュできるはずですよ。

札幌市旧永山武四郎邸及び札幌市旧三菱鉱業寮
住所:北海道札幌市中央区北2条東6丁目
電話:011-232-0450
開館時間:9時~22時
休館日:毎月第2水曜日、年末年始
公式サイト

筆者について

石簾マサ

石簾マサ

すべてのしがらみを捨て札幌で永住するぞ……と移住してきた50代のおっさんライター。札幌楽し~い。移住者が見た札幌の楽しさ・良さを伝えていければ……と思っております。