地元に憩いの場を!有志で実現した栗沢万字の温泉スタンド「ポンネ湯」

北海道岩見沢市に、誰でも汲んで持ち帰ることのできる温泉スタンドがあります。「みんなが集まれる憩いの場を地元につくろう」という発想から、わずか数名の有志で実現したこの温泉。果たして、その成り立ちとは一体どういうものだったのか、そもそも温泉スタンドとは何なのか、そして温泉の効能は? 気になること諸々、取材してきました。

山中の泉源から住宅街まで温泉を届ける

▼岩見沢市観光協会の大川伸二さんと万字ポンネベツ冷泉利用組合組合長の早川健一さん

温泉は「ポンネ湯」と呼ばれ、岩見沢市栗沢町万字の道路(道道38号線)脇に、スタンドがぽつんと建っています。万字ポンネベツ冷泉利用組合によって維持管理され、今では市の観光協会からも支援されています。組合長の早川健一さんは、当時を振り返りこう話します。

「きっかけは約30年ほど前、地元の万字小学校の閉校が決まったことでした。小学校は地元の人が集まる憩いの場所でもあったので、それがなくなってしまうのは避けたい、と。そこで思いついたのが、温泉だったのです」

近辺では、岩の割れ目などから温泉が湧き出ているところが数ヵ所ありました。この温泉を利用した入浴場をつくれば、小学校に代わる憩いの場になると考えたのです。

さっそく、早川さんをはじめとするPTA役員6名が2万円ずつ出し合い、計画に乗り出します。1~2年後には山中の泉源から住宅街までパイプを敷設し、取水できるようにしました。その距離、実に4km。

▼山中にあるポンネ湯の泉源(写真提供:岩見沢市観光協会)

「春先の雪解け水でホースが抜けたり、熊にホースをかじられたり、いろいろ大変なこともありました」と、早川さんは苦笑します。

▼住宅街まで温泉を届けるホース(写真提供:岩見沢市観光協会)

▼ホースが川の上空を渡っている箇所も!(写真提供:岩見沢市観光協会)

まさに野を越え山を越え、温泉スタンドまで伸びているホース。

▼ゴールは道路脇の温泉スタンド

こうして温泉スタンドにまで届けられる温泉。スタンドに近づくだけで、硫黄のにおいが漂ってきます。

▼ホースを外すだけで、どんどん出てくる温泉

泉質は道内でも珍しい弱アルカリ性硫黄泉で、アトピー性皮膚炎や慢性湿疹、冷え性などにも効能があるとされています。誰でも自由に汲むことができ、評判を聞きつけて、札幌から訪れる方もいるのだそう。スタンドには寄付金を入れる箱が設置されていて、金額は利用者の判断に任されています。

▼利用方法や効能はスタンドの看板をチェック

ポンネ湯が再び憩いの場となる日まで

ところで、気になるのはポンネ湯ができるきっかけとなった、憩いの場をつくるという目的です。温泉スタンドの存在は確認できましたが、入浴場はどうなったのでしょう。

「ポンネ湯ができた当初、実は入浴場もあったのです」と教えてくれたのは、岩見沢市観光協会で常務理事を務める大川伸二さんです。「スタンドに隣接している部分に、無料で開放された入浴場の跡が今も残っています」。

▼スタンドの裏手に回ると、扉が!

大川さんの言葉通り、スタンドの裏手には小屋があります。扉を開けると、脱衣場、そして浴室が。

▼今はもう使われていない浴室

当初は時間帯によって女湯と男湯を区切り、まさに早川さんたちの目指した「憩いの場」として、その役割を立派に果たしていたのです。

ただ、時代と共に求められるようになった入浴場としての基準を満たしていなかったため、やむなく閉鎖。改築にはお金がかかり、現在の寄付金ではホースなどの修繕費だけで精一杯ということもあり、再開には至っていません。

「とはいえ、少しずつですが、ポンネ湯もみなさんに知られるようになってきました。できれば、将来的には再びここで入浴できるような施設ができたらなぁと考えています」(大川さん)

もし実現すれば、貴重な泉質を誇るポンネ湯だけに、利用したいと思う方はきっとたくさんいるはず。わずか6名の有志でスタートしたポンネ湯が、いつしか地元の方のみならず、遠方からも訪れるような温泉施設になったら、とても素晴らしい夢のある話です。そしてそれは、あまり遠くない将来の話であるのかもしれません。

問い合わせ
一般社団法人 岩見沢市観光協会
所在地:北海道岩見沢市有明町南1番地1 岩見沢複合駅舎1階
電話:0126-22-3470
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