札幌白石の銭湯「美春湯」に入ってみた!貴重な家族風呂も体験

札幌市営地下鉄東西線 南郷7丁目駅から徒歩約2分。水源池通沿いの一角に、公衆浴場「美春湯(みはるゆ)」があります。番台や壁面にでかでかと描かれる雄大な富士山のタイル絵、今となっては珍しくなった家族風呂も健在の美春湯。そんな美春湯の楽しみ方をご紹介します。

ルーツは上富良野町にあり

▼白石区南郷通に近い場所にある美春湯

札幌にある美春湯ですが、経営者のルーツは上川管内上富良野町にあるといいます。農家だった故・中澤秀雄さんが、1961年に町内で日の出湯を創業したのがはじまりです。その後、転居先の旭川市と美瑛町で2軒の銭湯を経営しました。

札幌に転居するのは1969年7月。故・相馬重雄さんが1960年に開業した木造一部2階建ての美春湯を譲り受け、4軒目となる銭湯経営を行うことにしたのです。3年後に木造2階建ての家族風呂を開業。1976年以降、2つの建物を鉄筋コンクリート造3階建てに改築し、公衆浴場近代化の先駆けとなりました。

2000年以降、秀雄さんの長男である利夫さんが、経営を行っています。

3種類の浴槽を楽しめる美春湯

美春湯入口の のれんをくぐると、番台が目に入ります。スペースの都合でロビー・フロントにできないのもありますが、お客さんの顔を見て声をかける営業を大切にしているため、番台方式を継続しているのだそう。

建物入口と浴室入口は、なんと自動ドア。センサーは水回りには不向きとされるのに、わざわざお金をかけて防水タッチ式にしたそうです。その理由は、当時子どもが多く、お母さんが風呂道具を持ち小さな子を抱えて手がふさがってもそのまま入れるようにしたかったため。改築当時は近代的だと珍しがられ、全国から同業者の見学が相次ぎました。

▼男湯の富士山のタイル絵

▼女湯のタイル絵はアルプス

目に入ってくるのは大きく描かれたタイル絵。一般的にはペンキで描くものを一度タイルに焼き付けているので、1976年の建て替え時以来40年近く経っても、驚くことに色落ちしていません。美しい富士山の絵は札幌でも珍しく、映画のロケ地となったこともあるほど。

▼3種類の浴槽

浴槽は3種類。主浴槽はジェットバス(ハイドロマッサー)でラドン鉱石投沈浴を装備。薬風呂は日替わりで、ラベンダー、よもぎ、ゆず、しょうが、ヒノキ、緑茶など10種類の入浴剤を用意しています。そして最後に水風呂があります。

▼この日はラベンダーだった

使用する水は地下水。札幌市の災害救急用飲料水に指定されたほどミネラルを含んだ良質の水を使っているので、水を持って変える人もいるのだとか。

▼無料のサウナ

無料サウナも完備。ブラックシリカの原石を設置しており、男湯はドライサウナ、女湯は肌や髪に優しいスチームサウナにしています。

希少価値の高い家族風呂も

入口は違いますが、隣接するのが家族風呂。

▼家族風呂の入口

階段を上がっていくと、全9室の貸切家族風呂があります。かつて市内に60軒ほどあった家族風呂は、今や美春湯を含め4軒(手稲区あけぼの湯、白石区北郷大豊湯、厚別区森林公園きよら)になってしまいました。

しかし、燃料代・水道代・入浴時間・清掃時間の観点から、家のお風呂より経済的。手術痕を見られたくない、年取った親御さんをお風呂に入れてあげたいなどの理由から家族風呂のニーズも少なからずあります。今では、絶対数が減った家族風呂を求めて、市内各所からお客さんがやってきます。

美春湯の家族風呂では、各室に十勝岳連峰や美瑛などの風景の写真パネルが掲げられています。バイブラバス(気泡湯)やラドン鉱石投沈浴を装備し、1人でも、夫婦でも、家族でも楽しめるようになっています。

▼各室に写真パネルが

▼風景パネルを見ながら家族でも一人でも

競業となる大型浴場の出現や燃料の高騰により経営は厳しく、札幌市内でも毎年廃業する店舗が出てきているという銭湯業界。その中でも、不動産事業などを展開しながら経営を継続し、銭湯ならではのお客さんとのコミュニケーションを大切にしていきたいと、中澤さんは語ります。

美春湯では、男サウナの常連客が春美会という自主的なグループを作り、経営者と年に数回集まっては交流を深めています。美春湯を愛する地域の人たちとのつながりが、銭湯経営をがんばり続ける力になっているようです。

大きな入浴施設もいいけど、たまには地元にある昔ながらの銭湯に入って、地域の皆さんとコミュニケーションを楽しんでみるのはいかがでしょうか。

▼家族風呂の休憩スペース

【動画】脇田唯が美春湯をリポート!

美春湯
所在地:札幌市白石区南郷通7丁目北5-16
営業時間:14時45分~22時。家族風呂は16時~23時。いずれも毎週水曜定休(コインランドリーは9時~23時、年中無休)
料金:中学生以上440円、小学生140円、幼児70円。家族風呂は一人貸切1000円、2人以上の場合、中学生以上900円、小学生300円、幼児無料、1時間を超えるごとに1人10分150円加算

出演:脇田唯