出雲大社を越える巨大注連縄が北海道に?!「みついし蓬莱山まつり」

▼出雲大社・神楽殿の注連縄

「大きな注連縄(しめなわ)」と言えば、皆さんの脳裏に浮かぶのは出雲大社の注連縄でしょう。大社の神楽殿に祀られている注連縄はその長さ13.3m、重量4.4トン。福岡県福津市にある宮地嶽(みやじだけ)神社の注連縄と並んで「日本一」と言われていますが、実は北海道にも「ある時期」だけこれを越える巨大注連縄が出現するというのをご存じでしょうか?

まずはこちらの写真をご覧ください。

大きな川を横切るように張り渡されたこの注連縄の長さは130mで、何と出雲大社の10倍!この「ギネスもの」とも言えるジャンボな注連縄が新ひだか町で開催される「みついし蓬莱山まつり」で見ることができるとの話を聞き、さっそく期待に胸を膨らませながら現地に向かいました。

お祭りの会場には巨大注連縄が

札幌から車で走ることおよそ180キロ。日高山脈から太平洋に流れる三石川河川敷に設置された蓬莱山まつりの会場には、お祭りが始まる前からたくさんの人が詰めかけています。駐車場から会場に向かうと、イベントステージやたくさんの屋台が並ぶその先の小高い山に張り渡された注連縄が目に飛び込んできました。これが噂の「日本一の注連縄」?!

▼会場の先には巨大な注連縄が……

注連縄の全長はおよそ130mで重量は2.8トン。内部に発泡スチロールが詰められているというその中心の最大直径は3.4mで、下から見上げると凄い迫力……というより神々しい雰囲気さえ漂っています。

▼見上げると神々しい雰囲気が漂う

蓬莱山にまつわるアイヌ伝説

この注連縄が蓬莱山と三石川対岸の雌蓬莱山に架け渡されるのは、例年お祭りが開催される7月の第一日曜日(今年は7月3日)を挟む前後のおよそ2週間のみ。「今、この時、この場所」でしか見ることができない光景です。

全道景勝100選にも選ばれ、かつてより「アイヌの聖地」とされてきた蓬莱山。地元では次のような伝説が伝わっています。

「そのむかし川を挟んで上流に住んでいたアイヌのオッカイボ(青年)とメノコ(娘)。深く愛し合いながらも親に結婚を反対された二人は、一緒になろうと家を出て川を下るが、行けども行けども川幅は広くなるばかり。望みを絶たれた恋人たちは川を挟んでお互いをずっと見つめ合い、そのまま二つの山に化身してしまった。それが現在の蓬莱山と雌蓬莱山となった。」 

▼山に化身した恋人たちをつなぐ注連縄(イラスト(C) Shuichi Otani)

愛し合いながらも一緒になれず、山に化身した恋人たち。そして、そんな二人を年に一度結びつける巨大な注連縄……
まさに「北海道版の織姫と彦星」とも言えるロマンに満ちた伝説でありお祭りではありませんか。

蓬莱山まつりでグルメ三昧

巨大な注連縄に驚嘆するのも良し、またその裏に秘められた愛の伝説に酔うのも良し。でも、会場の屋台で飲んだり食べたりというのはお祭り最大の楽しみと言えます。

蓬莱山の麓に設置されたステージ前にはたくさんの屋台が並んでいます。タコヤキ、お好み焼き、焼き鳥などのお祭り定番のメニューが並ぶその中で光を放っているのが、いかにも「海の町・三石」らしいシーフードの炭火焼き。香ばしく炙られたカキにエビ、そしてあの海の女王・バフンウニが道行く人を誘惑してきます。

▼シーフードの炭火焼き

女王様の誘惑に負けた筆者は味見でウニを一つ。二つに割ると、その中にはほどよく火が入ったジューシーな赤身が。レアーで焼いたウニは、生で食べるよりいっそう甘みが増していました。これがなんと1個が250円というからビックリですよね。

▼焼いたウニは、いっそうの甘みが……

近隣のホテルで作った生地を会場の炭火焼窯でクリスピーに焼き上げる本格ピッツァも人気メニュー。

▼窯で焼いた本格ピッツアも

あれもこれもと目移りしてしまいそうですが、こちら新ひだか町は海産物のメッカであるとともにブランド黒毛和牛の生産地。グルメ垂涎のみついし牛を食せずして帰ることはできません。

会場の一角に設営された「みついし和牛コーナー」では、見事にサシの入った焼き肉用カットやパックされたサーロインステーキ用の肉が格安で販売されています。もちろん筆者も、迷わず地元の方々の長い行列に加わり、普段手に入らないような極上ビーフをゲットしました。

▼高級みついし牛が格安で販売

ここで買い求めた肉は持ち帰りでもOK。また会場にはバーベキューコーナーもあり、こちらで食べることもできます。

▼家族で極上みついし牛のバーベキューを楽しむ

10時からの各種イベントプログラムが始まるとともに、お昼を待たず早くもバーベキューがスタート。仲間同士や家族、親子で和気あいあい。町の住民だけでなく、近隣町村や遠くは札幌、帯広方面からの訪れた客も交えて、同じ焼き台でご当地ビーフの焼き肉に舌鼓をうつ光景があちこちで見られました。

美味しいものを食べれば、自然と笑顔になる。美味しいもので会話が弾む。そして美味しいもので人と人が出会い、新しいつながりが生まれる。そう、そんな美味しいもの=地元グルメこそが最高の「きずな」を生みだすツールであり「シメ縄」であるという事ができます。

アイヌ伝説の織姫と彦星を年に一度つなぐ巨大な注連縄の下で、地方と都会を、そして人と人をつなぐ「きずな」が生まれる……これこそが聖地・蓬莱山に鎮座する古代の神々の想いだったのではないでしょうか。

▼地方と都会を、人と人をつなぐ「きずな」

みついし蓬莱山まつり
開催時期:例年7月の第一日曜日。2016年は7月3日(日)で終了しました
場所:北海道日高郡新ひだか町三石東蓬莱128
問合せ先:みついし蓬莱山まつり事務局 0146-43-2111