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7万羽のマガンが一斉に飛び立つ感動の夜明け―美唄「宮島沼」

編集部
Written by 編集部

7万羽のマガンが一斉に飛び立つ感動の夜明け―美唄「宮島沼」

【美唄市】 早朝4:30頃。空が少しだけ明るくなってきた時間帯。そんな時間に何か楽しいことでもあるのかと思うかもしれない。しかし、頑張って朝早く起きた人にしかその『感動』を味わうことはできない。それが春の宮島沼(みやじまぬま)の魅力なのだ。

宮島沼は、マガンやハクチョウなどの渡り鳥が飛来する地として有名だ。特にマガンは国内最北かつ国内最大の寄留地として知られ、春のピーク時には約6万羽がここで羽を休める。これだけの規模は世界的に見てここだけではないかと言う人もいる。では、その感動の「世界一のマガンの飛び立ち」をご紹介しよう。

宮島沼ってどんなところ?

7万羽のマガンが一斉に飛び立つ感動の夜明け―美唄「宮島沼」

宮島沼は美唄市西端にある淡水湖である。そのすぐ西側500mには南北に石狩川が通っており、その石狩川の氾濫による洪水、雨水などの原因によって形成されたと考えられている、石狩泥炭地帯にある湖沼である。

面積は約30ヘクタール、周囲2.7km、水深は最大2.4m、平均で86cmと比較的浅い。沼の水は雨と雪、石狩川から人工的に引き込まれた水によって維持されており、周辺水稲農家の灌漑用水としての活用もある。沼の名前は、明治時代の開墾者、宮島佐次郎氏の名前に由来する。

マガンの国内最大・最北の中継地!その数6~7万羽

7万羽のマガンが一斉に飛び立つ感動の夜明け―美唄「宮島沼」

この宮島沼は全国的に有名な渡り鳥の中継地として知られる。やってくるのは、多い順から、マガン、コハクチョウ、オナガガモ、オオハクチョウなどである。

宮島沼といえばマガンである。国内最大の中継地でありながら、国内最北の中継地でもある。東アジア生息個体の約半数の6万羽が飛来(2015年4月21日に新記録の79,980羽)するほどで、ほとんどのマガンが宮島沼を経由する。マガンはロシア極東のアナドゥイリ低地以南をふるさとにしており、秋には越冬のためにカムチャッカ半島を経由して約4,000kmの長旅をして日本に渡りをしてくる。

主なマガンにとって最終的な越冬地は東北の伊豆沼だが、秋(9月下旬~10月中旬)になると中継地として宮島沼に大量に押し寄せる。春の雪が解ける頃(4月下旬~5月上旬)になると今度は故郷に戻って北上していくが、宮島沼を出発すると一気にオホーツク海を越えてカムチャッカに向うので、宮島沼周辺でたくさん食べてエネルギーを蓄える。これを毎年繰り返している。

宮島沼に行くなら4月下旬の4:00現地着!

マガンたちは滞在する約3週間の間、朝早く(マガンは日の出前)に宿泊地である宮島沼から飛び立って周辺の田んぼへえさをとりに出かける。日没頃になるとねぐらである宮島沼に帰ってくる。したがって、渡り鳥が中継地としてやってくる時期でも、昼間ではなく日の出前や日没後をねらって行くと、渡り鳥たちがひしめくすごい光景を見られる。

特に日の出前は絶対に一度は見ておくべきと強くオススメする。何がすごいのかというと、沼で目を覚ましたマガンが一斉に飛び立つ、いわゆる「ねぐら立ち」を観察できるからだ。飛び立つ時間は誰にも分からないが、概ね4:30前後となっている(早いときで4時過ぎ頃)ので、4時には着いておきたい。すでにマガンは起きていて水面で鳴いている。まだ薄暗いが、ピーク時には沼一面真黒になっているのが分かるはずだ。

▼宮島沼のほとりには観察小屋も完備。目隠しの木造柵も設置された
7万羽のマガンが一斉に飛び立つ感動の夜明け―美唄「宮島沼」
7万羽のマガンが一斉に飛び立つ感動の夜明け―美唄「宮島沼」

沼のほとりに到着したら、沼から目を離してはいけない。数羽が飛び立つと、それが合図となり、連鎖的に他のマガンが群れをなして沼を飛び立つからだ。たいてい第1グループ、数分後に第2グループ、さらに数分後に第3グループというように順番に飛び立っていくが、ときには一瞬にして沼の数万羽すべてが飛び立ってしまうことすらあるのだ。

沼の全てのマガンが一気に飛び立つ光景は、とにかく言葉で説明するのは難しい。とにかく体感するしかない。飛び立つとき数万の羽の音が「ゴォー」という轟音となり、無数のマガンが旋回しながら空を黒く埋め尽くす様子は圧巻である。そして、直後に訪れる静寂。誰もいなくなった宮島沼(となることも)。頑張って朝早く起きて、マガンの「ねぐら立ち」を観察してほしい。

▼ねぐら立ちの様子(79,980羽)


朝が難しければ夕方18:00頃の「ねぐら入り」もオススメ。早朝とは異なって少数グループになるが、V字編隊を組んだマガンの群れが四方からやってきて、次から次へと沼に着水していき、最終的に数万のマガンが集結するのである。夕陽とのコラボレーションも楽しめるのが魅力で、真っ暗になるまでにほとんどすべてのマガンがねぐら入りを完了する。

▼ねぐら入りの様子


いずれもピークは4月下旬、遅くても5月初めまでである。早朝と夕方の両方を見たい場合、日中は周辺の田園地帯で草をはむマガンやハクチョウを見ておくのもよし。なお、宮島沼は舗装されていないので泥がついても大丈夫な靴、意外とじっとしているのは寒いので防寒着を忘れずに。宮島沼のシーズン時のねぐら入り・ねぐら立ちの時刻と羽数の記録は公式ブログを参照

▼宮島沼周辺でえさをついばむハクチョウとマガン

ラムサール条約登録湿地、水鳥・湿地センター

水鳥たちにとって非常に重要な宮島沼は、2002年11月18日、国内13番目のラムサール条約(正式名称:特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)登録地となった。沼は自然の状態が保たれている。北側は雑木林になっていて、南側が主な観察場所となる。

7万羽のマガンが一斉に飛び立つ感動の夜明け―美唄「宮島沼」

駐車場は沼の南東に無舗装で無料完備。2007年3月29日には環境学習施設「宮島沼水鳥・湿地センター」が環境省により開設された(美唄市が運営)。道産カラマツ材などを利用して2億円で建設された木造平屋建て328.5m2の同館は、野鳥観察や研究の拠点として活用されている。

寒いときでも定点カメラを備えた館内から宮島沼を見ることができる。向って右手には宮島沼の動物や植物を紹介するパネル展示・紹介ビデオ・図書コーナー・手作り展示コーナーもある。宮島沼自然観察ニュースで最新情報を知ることも可能だ。入館は無料。2010年5月3日に通算10万人目を達成した。

宮島沼はラムサール条約登録湿地で野鳥が訪れることもあり、マナーを守るべき。犬などのペットを連れて行くことは禁止されている。禁煙、大声や大きな音を出さない、ゴミを捨てない、えさをあげないなどの最低限のルールは守って観察しよう。

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