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今年で開湯100年のぬかびら源泉郷!その開祖の宿「湯元館」の魅力とは

北海道内には100年以上の歴史がある温泉地が複数ありますが、2019年4月にちょうど開湯から100年の区切りを迎えたのが、ひがし大雪エリアの上士幌町「ぬかびら源泉郷」です。温泉街の中で最も長い歴史を持つ湯元館にお邪魔して、副社長の青名畑さんにお話を伺いました。

島隆美と湯元館

ぬかびら源泉郷の成り立ちは過去の記事の中で紹介しています。温泉開発に強い熱意を持っていた島隆美が1919年3月に糠平(ぬかびら)で高温の温泉が湧く場所に辿り着き、その翌月に営業許可を取得して、この温泉地の歴史が始まりました。それを記念してぬかびら源泉郷では毎年4月10日に開湯祭を行い、変わらず湧き続けている温泉への感謝と温泉地の繁栄を願っています。今年は100周年ということで盛大に記念式典が行われました。

▼開湯祭の様子(写真提供:ぬかびら源泉郷100周年記念事業実行委員会)
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その島隆美がこの地で始めた旅館が現在の湯元館です。糠平を含めた地域が大雪山国立公園に指定され、ダム建設やスキー場の再開発で賑わい、良質の温泉があることをアピールするため住所を「糠平」から「ぬかびら源泉郷」に変えるなど温泉街はさまざまな変化の時期を経験しましたが、湯元館はその間も変わらず営業を続け、歴史を見つめてきました。

▼昭和時代の湯元館(写真提供:ぬかびら源泉郷100周年記念事業実行委員会)
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しかし湯元館にも変化の時期が訪れ、2017年秋からは札幌市に本拠を構える企業グループが経営を引き継いでいます。オーナーが長距離移動の途中でたまたま湯元館に立ち寄った際、前経営者から売却の打診を受けたのがそのきっかけでした。

初めて立ち寄った旅館で突然そのような申し出を受ければきっと誰でも驚くと思いますが、温泉の良さと湯元館の魅力が伝わって経営を引き継ぐことが決まり、約3ヵ月間の改装を経て2018年2月から現在の形で営業しています。さらに湯元館のファンだったご夫婦が管理人として名乗りを上げ、運営体制も強化されました。

リニューアルされた本館大浴場

▼湯元館
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▼リニューアル後の館内
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本館での宿泊は休止中ですが、大浴場はそれまでの面影を残しつつも綺麗になり、日帰り入浴での利用が可能です。

「ぬかびら源泉郷といえばこの湯船」というイメージすらある旧混浴露天風呂は、現在は混浴ではありません。その露天風呂がある側は「神韻の湯」と呼ばれています。以前は男湯で固定されていた側で、楕円形の大きな内風呂の湯船もまた温泉街のシンボル的な存在となっています。

▼開放感たっぷりの「神韻の湯」露天風呂
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▼大きな楕円形でおなじみの「神韻の湯」内湯
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そして旧女湯側は「空翠の湯」と名付けられました。こちらは露天に檜風呂が新設され、もともとあった露天風呂と合わせて湯船が2つに。全体的に神韻の湯よりもこぢんまりとしていますが、落ち着いた雰囲気は変わりません。

▼2つの露天風呂がある「空翠の湯」
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▼「空翠の湯」内湯
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大浴場は偶数日・奇数日で男女を入れ替えています。特に「神韻の湯」に入りたかった女性の温泉ファンにとって、男女入れ替えと混浴のハードルがなくなったことは嬉しい変化に違いありません。

入浴時間は13:00から20:00まで、入浴料は800円。毎週火曜日と水曜日が定休日です。

宿泊は専用の温泉もある一棟貸しのコテージで

▼コテージやすら樹荘の館内(写真提供:湯元館)
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離れのコテージ「やすら樹荘」は引き続き宿泊客を受け入れています。

宿側での用意がないため食事は外食するか食材を持ち込んでコテージで食べるかのどちらかになりますが、コテージ内の調理器具は一新されて利用しやすくなりました。さらに館内にはエアコンが設置され、より快適に過ごせるようになっています。

▼調理家電が揃っているやすら樹荘の台所(写真提供:湯元館)
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そして、このコテージにも専用の温泉があるのが嬉しいポイント。こぢんまりとした内風呂に加え開放感のある露天風呂もあり、常に貸切で温泉を楽しめます。コテージ宿泊者は本館の大浴場にも入れますので、どのお風呂に入るかを選ぶ楽しみもあります。

▼やすら樹荘の内湯(写真提供:湯元館)
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▼やすら樹荘の露天風呂(写真提供:湯元館)
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温泉の泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。ぬかびら源泉郷内の温泉はいずれもほぼ同じ泉質で無色透明のさらりとしたお湯が特徴ですが、その中でも湯元館が使う100年源泉はゆで卵のような香りが個性となっています。露天風呂では特に、その香りが温泉気分を引き立ててくれるでしょう。

100年の歴史を肌で感じてみませんか?

どんどん緑が濃くなってゆく短い春と夏・道内でも早くから始まる紅葉の秋・時にマイナス30度近くまで気温が下がる厳しい冬。自然豊かで四季折々の風景とともに楽しめる温泉は、これまでたくさんの湯客を癒してきました。その景色と合わせ、この100年の間にどんな人が湯元館に訪れて同じ温泉を楽しんだのか、歴史に想いを馳せながら温泉に入ってみるのはいかがでしょうか。きっと味わい深い湯浴みの時間になることでしょう。

▼自然と調和した美しい風景も魅力のひとつ
今年で開湯100年のぬかびら源泉郷!その開祖の宿「湯元館」の魅力とは

良い温泉を持ち、宿としての評判も良く、長い歴史があるとしても、営業を続けていくことは簡単ではありません。そのような中で施設の運営を引き継ぎ、姿を変えながらでも歴史を繋いでゆく法人や個人がいることは喜ばしいことです。今の湯元館が、引き継いだ100年温泉を大切に守りつつ、次の100年に向けて月日を重ねる事を期待したいと思います。

ぬかびら源泉郷 湯元館
所在地:北海道河東郡上士幌町字ぬかびら源泉郷北区52-1
電話:01564-4-2121
公式サイト
取材協力
ぬかびら源泉郷100周年記念事業実行委員会
所在地:北海道河東郡上士幌町字ぬかびら源泉郷南区 中村屋内
電話:01564-4-2311(中村屋)
公式サイト

筆者について

髙野紀康

髙野紀康

1974年生まれ、江差町出身。日帰り温泉の湯守をしながら、年間100軒以上の温泉を巡る。温泉ソムリエマスター・温泉入浴指導員ほか6つの温泉資格を持つ。「北海道は1つの大きな温泉郷」をモットーに、全道を走り回っている。