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市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

かつて小樽は港町として栄え、人やモノが集まる北海道経済の中心地でした。今もなお残る蔵や重厚な建物に、当時の面影を忍ばせています。小樽駅に近い小樽中央市場は、昭和の香りを放ちながら人々の生活を支えています。ぶらりと買い物に立ち寄ってみました。

戦後まもなく引揚者が市場を創設

▼古くから小樽を支えている市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

小樽は港湾都市として発展してきました。明治13(1880)年に北海道内初となる鉄道が小樽(手宮)~札幌に開業。開拓民の上陸や物資輸送などで賑わいました。経済の街として発展した小樽でしたが、終戦直後は混沌とした時代を迎えます。敗戦により日本の統治が解かれ、中国東北部から多くの人が小樽に引き揚げてきました。引揚者が空き地に二棟のバラック小屋を建て、「小樽中央マーケット」として商売を始めたのが、現在の小樽中央市場の始まりだと言われています。

▼今は飲食店やアパートとして使われている第1棟
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

▼昭和28年に落成した第2棟
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

▼現在、最も入店数が多い第3棟
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

終戦の混乱期を過ぎると、小樽中央マーケットは市街地整備のため、市から解体・移転を迫られます。創設の中心的存在だった秋田民武氏が何度も市役所を訪れ、「市場は引揚者が苦労して作りあげた場所」と訴えたことで存続が認められます。

バラック小屋から常設にすべく市場の組合を法人化。自ら理事長に就任して陣頭指揮にあたり、鉄筋コンクリートの近代的市場の建設に着手しました。

近代的な設備を誇る小樽中央市場が誕生

▼市民の買い物の場として愛されている
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

昭和28年5月に第1棟が落成。翌年には第2棟も完成しました。第3棟は少し遅れて昭和31年に完成しました。当時は近代的設備が話題を呼び、全道から反響があったといいます。

▼昭和の最盛期が再現されている
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

昭和40年代には最盛期を迎え、市場から全道各地に行商に向かう「ガンガン部隊」と呼ばれる女性が出入りするなど、大変賑わっていました。当時から営業を続けている鮮魚店は、「歩くのもままならないほど、人がひしめき合っていた」と言います。

時代の流れと変化

▼惣菜店「樽っ子」の店主でもある柴田敏行理事長
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

昭和40年代後半に入るとスーパーが普及し、市場に陰りが見え始めます。小樽市の人口減少や、後継者がいないことの廃業も拍車をかけました。

現在、第1棟に飲食店や理髪店などが7店、第2棟に精肉店や惣菜店などが7店、第3棟に鮮魚店や青果店など13店が営業しています。柴田敏行理事長は「昔のように活気が戻ることは2度とない。これまでのお客様を大切にしつつ、若い方にも足を運んでいただける市場を目指したい」と言います。

▼のびとびと買い物ができるメリットも!
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

小樽中央市場にも、新しい風が吹き始めました。小さなお子様を連れているファミリーでも買い物しやすいよう、空き店舗の跡地にキッズスペースが設けられています。

▼2年前に入店した「クチル花店」
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

▼2年前にオープンした「Tea Three」は、お客様のコミュニケーションスペース
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

「レトロな雰囲気が商品に合う」と、オシャレな花屋が入店したり、小さなカフェは高齢者同士の交流の場となるだけでなく、入船市場から移転した人気の惣菜店「さかた」のイカメンチが揚がるのを待つのに利用されているなど、相乗効果も生まれています。

▼「そうざいのさかた」のイカメンチは10個、20個のまとめ買いが多い
市民の生活を支え続けて66年―新旧の文化が融合する「小樽中央市場」

当時最新を誇った市場の建物は、70年近く経った今でも頑丈そのもの。建物が壊れる心配はありません。これまで培ってきた歴史を継承するとともに、新しい文化も花咲く。小樽中央市場は、そんな空間になっていってほしいものです。

小樽中央市場
所在地:小樽市稲穂3丁目11番2号
電話番号:0134-22-5384
営業時間:9:00〜18:00(お店によって営業時間が異なります)
定休日:日曜日・祝日

筆者について

吉田匡和

吉田匡和

札幌在住の文筆家・写真家。日本のすべての年金制度(厚生年金・国民年金・国家公務共済・地方公務員共済・私学共済)に加入したことがあるという、自慢にもならない経歴を持っています。苦労しなくて済む程度のアウトドアが趣味で、夕日を見ながらビールを飲むのが大好きです。【Sクラス認定ライター】