総工費35億?! 大正ロマン感じる豪邸「小樽貴賓館」が豪華絢爛すぎた

その昔、小樽は祝津に、にしん漁で巨万の富を築き上げた人がいました。網元の青山家です。青山家は1917(大正6)年から6年半あまりの歳月をかけて、贅を尽くした別荘を建築しました。現在、その豪邸は旧青山別邸と呼ばれ、国の登録有形文化財として誰もが有料で入館できるようになっています。豪華絢爛な小樽を代表する歴史的建造物、ちょっと覗いてみましょう。

総工費35億円とも言われる豪邸

▼旧青山別邸のある小樽貴賓館

資料によれば、大正時代、にしんの大豊漁に祝津の港は湧きかえっていたといいます。中でも三大親方のひとり、青山家の漁場の水揚げは、たとえば1914(大正3)年には現在の価格に換算して25億円。さらに1918(大正8)年の漁獲高は最高水準に達しました。そんな青山家最盛期の1917(大正6)年、二代目政吉は別荘の建築に取り掛かります。

▼季節ごとに表情を変える庭

美意識の高い政吉は一流のものを好み、この別荘を芸術的な建築にしようと、実に6年半以上もの歳月を要して完成させました。政吉のこだわりは、屋敷の中のそこここに見ることができます。廊下を歩けば、ひのき一本物の長押し(なげし)が奥までずっと伸びていて、その向かいには杉一本物の長押しが同じように奥まで伸びている、といった具合です。

▼巨木を使用し継ぎ目のない長押し

1階にはそれぞれに趣向を凝らした和室が10部屋ほどあって、すべてのふすまを開け放つと、約100畳の大広間になります。きっちりと敷き詰められた畳がぐんぐん遠くまで伸びていくようで、その眺めは壮観のひと言に尽きます。

▼ふすまを開け放つと大座敷に

また、この旧青山別邸が美術豪邸とも呼ばれる所以は、絵師たちが競って描いたというふすま絵、一流の書家たちによる書の数々にあります。たとえば中村不折の間では、中国の詩聖、杜甫作の「飲中八仙歌」が、中村不折による力強い筆致で書かれています。

▼中村不折の間

部屋には洋間もあり、そのモダンで上品な空間はいかにも大正ロマンを感じさせます。

▼窓枠や板硝子など細部にまでこだわりが

5月ともなると、庭には牡丹、芍薬が咲き誇ります。当時は、青山家の栄華を花々が祝福するような光景にも映ったかもしれません。

▼牡丹・芍薬庭園(写真提供:小樽貴賓館)

歴史を感じた後はにしん料理を堪能

▼奥の高い建物にレストランが入る

豪奢な旧青山別邸をたっぷり堪能した後は、にしん料理を堪能しましょう。上の写真の、右手前に建つのが旧青山別邸、奥の少し高い建物は新築されたもので、そこにおみやげコーナーやレストランが入っています。

▼1階の和食レストラン「花かずら」

1階のレストランは壁一面の広い窓が特徴的で、美しく整えられた日本庭園を見渡すことができます。まるで絵画のような庭園は、時の流れが止まったかのようにも見えます。

▼にしんお重(税込1,990円)

やはりここで食べたいのはにしんを使った料理でしょう。たとえば「にしんお重」に使われる一夜干身欠きにしんは、脂がしっかり乗ったにしん本来の旨みを味わえる一品。汁物や香の物、サラダ、茶碗蒸しまで付いて、バランスの良さも女性に人気です。

▼にしんそば(税込1,300円)

こちらも人気メニューの「にしんそば」です。大釜でじっくり炊き上げた一夜干身欠きにしんを温かいそばの上に贅沢に乗せています。さっぱりとしたそばと脂の乗ったにしんの相性は抜群で、つゆまですべて飲み干したくなるおいしさです。

▼JR小樽駅より車で約10分の距離

金に糸目をつけることなく、贅を尽くした旧青山別邸。その絢爛豪華ぶりは想像以上で、しかし美意識の高かった当主故に、品の良さと繊細さが細部にまで感じられる空間です。それは一流の絵師や書家、建築士たちがこの屋敷のために技を競ったからなのかもしれません。いずれにせよ一見の価値あり、ぜひ訪れることをおすすめします。

小樽貴賓館
所在地:北海道小樽市祝津3丁目63
電話:0134-24-0024
入館料:大人(中学生以上)1,080円、子ども(小学生)540円
営業時間
・旧青山別邸入館:9時~17時(4月~10月)、9時から16時(11月~3月)
・レストラン:10時~17時(4月~10月)、10時~16時(11月~3月)
公式サイト
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2023年6月7日:料金、営業時間を更新しました。